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各地で行われた制作者フォーラムの模様を、参加者の声を交えて伝えます。

2019年3月14日

全国制作者フォーラム2019~参加者の声~

寄稿

 2019年2月16日(土)、東京で「全国制作者フォーラム2019」を開催しました。
 開催内容はこちら

 フォーラムで司会をしていただいた山﨑 香奈さん(TVQ九州放送)、ミニ番組でゲスト賞を受賞したお2人や参加者の方に感想をいただきました。

フォーラム司会
「悩める作り手、伝え手を目指して」
TVQ九州放送 山﨑 香奈

 「あの…全国制作者フォーラムの司会のお話を頂いたのですが…」「え…なんでうちに?!」TVQ九州放送の報道フロアでのリアルな会話です。九州放送映像祭で審査員特別賞を頂いただけで報道フロアはお祝いムード。来年こそは東京だー!と意気込んでいたところに司会という役で訪れたこのチャンス。幸せの連続に驚くと同時に、素直にうれしかったです。
 司会席から会場を見渡していました。作品を鑑賞するみなさんの熱い視線、ゲストの話にペンを走らせ、時に深くうなずく姿に、私はなんだか気持ちが高まりました。作品を見て、引っ掛かりを解く。とてもシンプルなことなのに、「日々の業務に追われて」という言い訳をしながら、「放送しっぱなし」だった自分を恥ずかしく思いました。制作者としての自分を省みる時間を作り、周りと議論して、いま何を伝えるべきなのか、何が面白いのか、悩み続ける制作者でいたいと思います。

参加者
★ミニ番組・丹羽賞受賞
「取材者の熱が伝わるミニ番組」
西日本放送 中川 理恵

写真左側(丹羽 美之さんと)

 私が取材したのは、幼いころ実父から性虐待を受けていた40代の女性です。幼いころに受けた性被害の記憶は大人になった被害者を苦しめ続けることを女性のインタビューを交えて紹介しました。取材を進めるうちに、私がこれまで抱いていた性被害のイメージとは全く違った実態がわかってきて、それがミニ番組化の動機になりました。私の驚きや“みんなに知ってもらいたい”という熱量がミニ番組で伝わったとしたら、うれしいです。

 フォーラムでは、系列を超えて記者やカメラマン、ディレクターといった参加者みなさんの熱がこもったリポートが次々と上映。ナレーションを入れずその場の音を生かす手法や、取材時のハプニングを引き立てた作品など、今後お手本にしたいミニ番組がいっぱい!ゲストの方々のトークセッションでも話題になりましたが、もっともっと取材者の“おもしろい”や“驚き”を大切にしていいのだと再認識しました。

参加者
★ミニ番組・土屋賞受賞
「“全体重”をのっけて作ってるか?」
沖縄テレビ放送 祝 三志郎

写真左側(土屋 敏男さんと)

 地元で放送し終わったリポート、それを憧れのテレビマン達に観て頂ける。私にとって夢のようなフォーラムでした。
 入社して9年、報道カメラマンになって4年。最初は人手が少ないという状況から始めたカメラマンリポート。今では一人でも面白いモノを作る!と意気込んで日々、リポートを作り続けていました。
 フォーラムで『ハッと』思わされた一言があります。『放送される事に全体重をかける』憧れのテレビマン土屋氏の言葉でした。
私は『取材の仕方、構成、テロップやBGMなど全てに、放送の直前までこだわり抜いているのか?』自問自答しました。
ライバルでもある各局の作品は、“面白いモノ”を届けたいという、こだわりで溢れていました。そして、どの様に工夫して作っているかを話し合えた中で、テレビマンの貴重な仲間ができました。
 これからもテレビ作りのスキルである『体重を重く』して、こだわり抜くという姿勢を忘れずに精進していきます。

参加者
「これからのモチベーションに繋がった」
コスモ・スペース 加藤 百夏

 勉強の為にいってらっしゃいと上司から紹介され、なにもわからずして全国制作者フォーラムに参加させて頂きました。
会場に入るとテレビ業界で実績があろうと思われる貫禄ある方、そして受賞者方の堂々とした姿が目に入り、同じ場に居ることが恐れ多いと感じたと共に、胸が高鳴ったことを覚えています。
制作者の想いや反省、企画の動機等をドキュメンタリーを観た後に直接聞くことは普段得難いことなので、とても有意義な1日でした。
局や地域を超えた方々から学んだ作品制作における構成演出や心掛けを、この先、制作する身として心にとどめ、糧として精進していきたいです。
 社会人1年目で、参加することが出来て良かったと思いました。これからの志がより持てましたし、業界についても少し考え方が変わりました。いつか私も今回みた映像のように人々の心動かす映像を創りたいと強く思いました。
 そして、次回は私が1年目の後輩にフォーラムの参加を勧めたいと思います。

参加者
「思い切って挑戦する勇気!」
北海道文化放送 中川 尚

 制作者フォーラム参加は今年で三回目です。
 毎年楽しみにしている理由が2つあります。TV界の第一人者が、ローカル各局のミニ企画を自由に批評するので、取材・制作の視点と姿勢の勉強になる点。もう1点が、系列や地域を越えて知見を共有できる事です。今年は若手のチャレンジ番組枠を深夜に用意している例や、年間1テーマでカメラマンがリポートを競作し表現力を高める等、クリエーターの熱量を上げる工夫に刺激を受けました。
 もう一つ楽しみなのがトークセッションです。昨年は「脱・予定調和」今年が「テレビはもうすべてをやり尽くしたのか?」。タイムリーなテーマの軸は共通で、今のテレビに必要なチャレンジスピリットとは何かを考えるきっかけになりました。
 個人的には日テレ土屋さんの「全体重をかけて制作する」という言葉が、制作者の矜持として強烈に心に響きました。安全な橋を渡りがちな日常の中で、熱量が高く挑戦を続ける方々と、直接交流が出来る制作者フォーラムはとても貴重な機会です。是非参加されることをお勧めします!

参加者
「素っ裸になって、みんなでもっと語り合おう!」
法政大学 丸山 友美

 全国から集まった15の力作を視聴した全国制作者フォーラムの会場は、日本のどこよりもテレビ熱が高かったはずだ。いま日本には、よい番組を作るために、制作者を丸裸にするまで語らう場所はほとんどない。どうすれば評価されるのかではなく、目の前の番組にどんなポテンシャルがあるのか話し合う。そんな贅沢な場所が、全国制作者フォーラムだ。
 規定の5分から15分で制作された番組が映せるのは、社会のほんの入り口だ。だから、長尺に成長した参加番組が、その先にある日本の問題や暗黙のルールの暴力性を掘り起こしていくのが楽しみだ。ちなみに、私が一番惹かれたのは、長野朝日放送『それぞれの温もり求め-長野市最古の公衆浴場』だ。裸になるから語れることもあるのだろう。そうだからこそ、仕事という装備を解き、裸になった取材者が次はどんな言葉を引き出し番組にするのか楽しみだ。みんなが素っ裸になって語らえば、テレビはもっと面白くなる。
 こうした成果発表の場に研究者として参加してみると、制作者のみなさんが日々どのように番組づくりに取り組まれ、どんなことに頭を悩ませているのかがクリアに見える。今度はどんな番組に出会えるだろう。次回の開催をいまから心待ちにしている。