HBF 公益財団法人 放送文化基金

文字サイズ:

HOME読む・楽しむもっと 制作者フォーラムinあおもり

読む・楽しむ もっと制作者フォーラム
各地で行われた制作者フォーラムの模様を、参加者の声を交えて伝えます。

2016年12月22日

もっと  制作者フォーラムinあおもり

レポート+寄稿

 2016年11月18日(金)、青森市のねぶたの家 ワ・ラッセにて「北日本制作者フォーラムinあおもり」が開催されました。
 このフォーラムには、北海道と東北6県にある全民放とNHK、計40の放送局が協力し、制作者を中心に約80名が参加しました。
 午前中に、番組部門で大賞を受賞した『あざと生きる~雅治君と「血管」難病の12年~』を会場で上映し、そのあと制作者の渡辺寛さん(山形放送)から制作した思い、制作秘話をうかがいました。午後からは、パネルディスカッション。パネリストに隈元信一さん(朝日新聞むつ支局長)、藤村忠寿さん(北海道テレビ放送コンテンツ事業室エグゼクティブディレクター)、小山田文泰さん(青森放送テレビ制作部長)、コーディネーターに音好宏さん(上智大学教授)を迎え、「いま考える ローカル局のチカラ」をテーマに討論して頂きました。「地域に密着ではなく、人に密着することを心掛ける」「地域局だからこそ見つけることのできる小さいことを大事にする。」など、会場の若い制作者たちにエールを送りました。
 続けてのミニ番組コンテストには23作品が参加し、パネルディスカッションのパネリスト4名が審査にあたり、制作者たちにアドバイスを送りました。
 懇親会では、ミニ番組部門の表彰式、そして制作者同士の交流が行われました。

 ミニ番組コンテストで大賞を受賞した三浦裕紀さん(テレビ岩手)、審査員の隈元信一さん(朝日新聞むつ支局長)、実行委員の成田克彦さん(青森テレビ)にフォーラムの感想をお寄せいただきました。

大賞受賞
「ここは被災地か?」
三浦 裕紀(テレビ岩手 報道制作部宮古駐在)

 重そう、暗そう、つらそう…多くの人たちが思う被災地のイメージ。
 しかし、このVTRにそんな人たちは出てきません。
 下らない事を言って、馬鹿笑い。熱くなりすぎて、号泣。
 「ここは被災地か?」そんな空間に惹かれ、おととしから通うようになりました。
 主人公は、食料品店を営む65歳の女性。自らも被災し、1000万以上の借金を背負う中、「自分にできることは、これくらい」と無料でボランティアを泊めています。
 これまで宿泊したボランティアは約2500人。女性とボランティアたちが狭い台所で繰り広げる、ほっこりしたコミュニケーションを“そっと”編集し、伝えました。
 もちろん取材はこれからも続きます。この賞を励みに、次はもっと良いモノができる様、努力します。今回は本当にありがとうございました。

ミニ番組コンテスト審査員
ネット時代こそ地域の力を
隈元 信一 (朝日新聞むつ支局長)

 番組の審査はずいぶん長くやってきたが、「ミニ番組」は初めてだった。
 やらせてもらって良かったとつくづく思う。審査しながら、映画監督の山田洋次さんから聞いた黒澤明監督との交友話を思い出した。映画会社が違う2人は黒澤さんの晩年まで親交がなかったが、あるパーティーで黒澤さんが声をかけた。「監督はもっと仲良くすべきだ。映画全盛時代は、互いに撮影現場を慰問したりしていたぞ」。その後、山田さんは黒澤さんの撮影現場を訪れ、どう撮るかを見学し、時には相談にも乗った。
 放送界を取材していると、自分の番組作りに懸命で、ほかの番組をあまり見ていないという人によく出会う。NHK・民放各局の人間が互いに相手の仕事に目を向け、大いに批判しあうネットワークを築いてこそ、技術偏重・採算偏重ではない「ネットワーク時代」ならではの番組が生まれるのではないか。そしてそれは、作り手が地域に根ざし、住民の一人として身のまわりにジャーナリスティックな目を向けるところから始まるだろう。
 そんなことを改めて考えたのも、今回審査した番組の質が高かったからだ。東日本大震災の被災地らしい地道な取材の成果や、人の思いを映像で表現しようとする意欲に触れると、つい涙が出そうになってしまう。こういう切磋琢磨の場はもっともっと大事にされていい。
 ネット時代は、地域から地球へ直接発信できる時代でもある。ユーチューブなどを見ていると、本格的な長時間番組よりむしろ「ミニ番組」の方に可能性がある気もする。今回見た番組の一つ一つに、私は未来への明るい輝きを感じ、心が温かくなった。

実行委員
「ローカル局のチカラ」
成田 克彦(青森テレビ 報道制作局 兼 放送制作部長)

 「北日本制作者フォーラムinあおもり」も、関係者の皆様のご協力のもと無事終了することができました。
 さて今回のテーマであるローカル局のチカラについて、熱い議論が繰り広げられました。『当たり前といえば当たり前ではあるが、ローカル局には人も金もない。そうした中で、キー局がやっている手法を用いても、太刀打ちできる訳がない。では、どうしたらよいか?我々にしかないもので戦う。それは「地域に住んでいる人」、「地域にしかないもの」をじっくりと見据え、伝えなければならないものを、自分の視点でしっかりと伝える。それを素直なボールではなく、ある意味「暴投」を投げ、視聴者に受け止めてもらうことなのだ。』と結んでフォーラムを終了いたしました。
 最後に、開催にあたりご尽力をいただきました、上智大学音先生をはじめゲストの皆様、そして放送文化基金の皆様へ感謝申し上げます。