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各地で行われた制作者フォーラムの模様を、参加者の声を交えて伝えます。

2022年12月14日

もっと  制作者フォーラム in ふくおか

レポート+寄稿

 2022年11月26日(土)、NHK福岡放送局よかビジョンホールにて、九州放送映像祭実行委員会と放送文化基金が主催する「九州放送映像祭&制作者フォーラム」が3年ぶりに開催されました。
 このフォーラムには、九州・沖縄の全民放テレビ局とNHKが協力、制作者を中心に、約60名が参加しました。
 初めに行われたミニ番組コンテストには、多様なテーマで32作品が参加。ミニ番組を順に視聴し、審査員の阿武野勝彦さん(東海テレビゼネラルプロデューサー)、渡辺考さん(NHK沖縄放送局コンテンツセンターエクスパート)、古川恵子さん(長崎放送報道メディア局報道制作部記者)がそれぞれの番組について講評を述べました。
 32作品の評価を終え、審査員の3名とコーディネーター役に大村由紀子さん(RKB毎日放送テレビ制作部シニアエキスパート)を迎え、「逆境を味方につける」をテーマにトークセッションが行われました。
 冒頭、大村さんから「制作者として日々現場に足を運ぶ中で、どのような逆境があり、それをどう乗り越えてきましたか」と質問があり、長崎で被爆者の取材を続ける古川さんは「コロナ禍になって取材を拒否されることも増えました。それは逆境かもしれないが、いい断られ方をしておくと10年後、20年後の取材につながることもある」と語りました。
 続いて、3名の審査員がこれまで制作してきた番組のテーマに共通して「戦争」があることから、ミニ番組コンテストで栗山さん(NHK佐賀放送局)が制作した『佐賀 戦争の絵』に話題が及びました。彼女は制作した動機について「生きづらい社会に関心があり、それが最も顕著になるのが戦争だと思います」と明かすと、過去に『村と戦争』(1995年、東海テレビ放送)で数々の賞を受けた阿武野さんは「戦争を通して時代を見ることは意義のあること。何かテーマを見つけたら取材を継続していくことが大切だ」と自身のこれまでの経験を交えて語りました。
 質疑応答では、「若い制作者の教育について心掛けていることはありますか」との質問に対し、渡辺さんは「制作者は普段から仕事を抱えていて忙しいが、なるべく一緒に取材に行くようにしている」と語り、当時NHK長崎放送局で一緒だった栗山さんとロケに行った話やミニ番組コンテストに参加していた河田さん(NHK沖縄放送局)と勉強会を企画した話まで飛び出しました。
 トークセッション終了後には名刺交換会が行われ、審査員と制作者が和やかに交流する場面が見られました。
 コロナ禍の苦境を乗り越えようとする思いから「いちにのさん!」と銘打たれた「九州放送映像祭&制作者フォーラム」は盛況のうちに幕を閉じました。

 ミニ番組コンテストでグランプリを受賞した両角竜太郎さん、審査員の古川恵子さん、実行委員の石川恵子さんに、フォーラムの感想をお寄せいただきました。

グランプリ受賞者
「音たちが紡ぐ景色」
両角竜太郎(RKB毎日放送 報道局映像部 カメラマン)

 3年ぶりの開催となった映像祭。取材もいまだ我慢の日々ですが、集まった作品はそれに挫けず、新しい工夫と発想で乗り越えたであろうものばかりで刺激的でした。そんな中でこのような賞をいただけたことは大変励みになりました。ありがとうございます。
 連日耳にする “コロナ”というワード。この「音風景」では、世相に向き合いつつもこの“うんざりワード”を極力封印することで、この5分間だけでも少し肩の力を抜き、前向きに明るく過ごしましょう!という願いを込めて構成しました。
 作中に登場してくれた子どもたちが勇気を与えてくれた大好きな作品です。師走の街に響く何気ない音たちに耳を澄ましながら一年を振り返り、強く生きる人々の姿や、子ども達の無邪気な様子に微笑んでもらえていれば幸いです。
 今作を支える「第九・第四楽章」の歌詞が語るように、今はまさに「時流が過酷な時」なのでしょう。しかし、今回の開催が実現したように「引き裂いていたものを再び結び合わせる」瞬間があります。200年前から届くメッセージです。今こそ私たち制作者は下を向かず、持ち前の発想力で粘り強く、新しい景色を描き伝えていきましょう!

ミニ番組コンテスト審査員
「孤独だけど孤独じゃない」
古川 恵子(長崎放送 報道メディア局報道制作部 記者)

 日本のテレビ界を代表するお二人に並んで、なぜか私が審査員をつとめるという謎といたたまれない思い。憂鬱だったが、終わってみればフルパワー充電させて頂けた有難すぎる時間だった。木村栄文さんが残してくれた研鑽と出逢いの場。力作揃いの作品を拝見し、さらには感想まで述べていいという夢の様な体験。一年目に言われた事を思い出した。「今のお前では先輩にはかなわない。でも必死にやったらどこかがキラリと光るんだよ」。以来、どんな状況でも必死でやることだけは守ろうとしてきた気がする。拝見した作品には随所にきらめきが宿り、まぶしく、嬉しく、心躍った。様々な感情に出会える現場とそれを伝える過程には、思いがけない感動や自分に出会う瞬間がある。制作者は孤独だけど孤独じゃない。励ましを頂いた映像祭&フォーラムに心からの感謝を伝えたい。

実行委員
放送界の「逆境」をチャンスに変える
石川 恵子(RKB毎日放送 制作・スポーツ局テレビ制作部 部長)

 3年ぶりの「九州放送映像祭&制作者フォーラム」。
 審査員の阿武野勝彦さん、渡辺考さん、古川恵子さんには、一作ずつ丁寧に、厳しくも温かい講評を頂きました。若い制作者にとってレジェンドたちの言葉は胸に響いたことでしょう。トークセッションではRKB大村由紀子も加わり「逆境を味方につける」をテーマに展開。「放送界は経営に関しては逆境なのかもしれないが、私たちのモノづくりにとっては逆境ではないのではないか」などの話を聞き「ピンチこそチャンス」という不屈の精神を思い起こした方も多かったのではないでしょうか?
 3年ぶりの開催で、運営も引継ぎもままならず至らぬ点もございましたが、放送文化基金の皆様のお力添えもあり、何とか無事に終了したことを御礼申し上げます。