HBF 公益財団法人 放送文化基金

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各地で行われた制作者フォーラムの模様を、参加者の声を交えて伝えます。

2019年11月22日

もっと  制作者フォーラム in せんだい

レポート+寄稿

 2019年10月25日(金)、せんだいメディアテークにて、北日本制作者フォーラム実行委員会と放送文化基金が主催する「北日本制作者フォーラム in せんだい」が開催されました。 フォーラムには、東北6県と北海道にある全民放テレビ局とNHK、計40の放送局が協力し、制作者を中心に約50名が参加しました。
 初めに行われたミニ番組コンテストでは、エントリーされた76作品の中から各地区の予選を通過した19作品が上映されました。
 審査員の鈴木嘉一さん(放送評論家・ジャーナリスト)、雪竹弘一さん(テレビ朝日プロデューサー)、各地区代表幹事7名、そして会場の参加者と上映された作品についてそれぞれ質疑応答が行われました。
 引き続き、トークイベントが行われ、放送評論家・ジャーナリストの鈴木嘉一さんは<活発化する地方局発ドキュメンタリー映画>をテーマに講演を行いました。そのモデルとして東海テレビが制作した『人生フルーツ』などを挙げ、「やりくりが大変な地方局でも、戦略次第では上映につなげられる。そこから収益をあげることで制作費に充てることができる」と語りました。さらに、ドキュメンタリーを一度放送して終わらせず、映画からもう一度放送につなげた話をしました。
 テレビ朝日プロデューサーの雪竹弘一さんは<ドキュメンタリー制作のリアルな現状>をテーマに、制作現場で起こりがちなミスやテロップ、BGMなどで過剰に編集してしまう現状に危機感を示しました。これから番組を作る若手制作者に向けて、「いいドキュメンタリーを見てみることを勧める。とてもシンプルに制作されていて、ナレーションで説明しすぎていない。思い切って引き算する勇気、作品の持つ映像や生の音に自信を持ってほしい」と伝えました。
 この日の仙台市では、台風21号が東北太平洋側を通過した影響で夕方から雨脚が強くなりました。トークイベント中に大雨警報に係る避難準備警報が発令されたため、18時半から予定されていた懇親会は中止となりました。懇親会場で行う予定だった表彰式は審査会場でそのまま行われました。最優秀賞、優秀賞を受賞した制作者たちは来年2月22日の「全国制作者フォーラム2020」に招待されます。

 ミニ番組コンテストで最優秀賞を受賞した古内まり子さん(テレビユー福島)、審査員の雪竹弘一さん(テレビ朝日プロデューサー)、宮城世話人会幹事社の川村和弘さん(東北放送)に、フォーラムの感想をお寄せいただきました。

最優秀賞受賞者
入り口のハードルが高いほど面白い!?
テレビユー福島 古内まり子さん

 私が女性刑務所の高齢化問題を取材しようと思ったきっかけは、デイリーニュース取材時に見た高齢受刑者の姿でした。先方に取材を申し込むも「興味本位ならお断り!」というやりとりがあってから企画書を出し直すこと5回。セミが鳴くころに取材しようと思っていたのに季節は冬へ、半年経っていました。当時ENGカメラマンだった私の取材当日の相方は、当時1年生だった女性記者。慣れない三脚持ちやガンマイク振りを手伝ってもらいながらの取材でした。

 「次回は、社会復帰を目指している若い受刑者に焦点当ててよ。」
 放送後に先方からお話を頂き、現在進行中です。

ミニ番組コンテスト審査員
若手制作者の想いが滲み出る、稀有な時間のラビリンス
テレビ朝日プロデューサー 雪竹弘一さん

 10分前後とはいえ、19作品を一気に拝見するのは初めて。局の垣根をこえたコンテスト、とても楽しみにしていました。報道色が濃いものから、抒情詩のような作品、人情味あふれる物語までテーマも様々、隠されていた事実もたくさん知ることができました。若手制作者の熱意も直に感じられ、実に頼もしかったです。一方、ちょっとした工夫さえすればもっとクオリティーが上がるのに・・・と感じる作品もありました。過剰なテロップ、連続するBGM、ナレーション過多・・・不安かもしれませんが、思いきって削る勇気を持って頂ければと思います。ドキュメンタリーは作るのも見るのも楽しい、魔性のラビリンス・・・若手制作者の熱き想いに心から期待しています。運営に携わったスタッフ、審査員、司会の皆様、素敵な時間をありがとうございました。あらためて感謝申し上げます。

宮城世話人会幹事社
『2019北日本制作者フォーラムinせいだい』を終えて
東北放送 報道制作局テレビ制作部 川村和弘さん

幹事社代表の石森さん(左)、
川村さん(右)

 今回、北日本制作者フォーラムにはじめて幹事社という立場で携わらせていただき、あらためて、若い作り手が自ら制作した作品をきちんと評価してもらえる機会は貴重で、何よりの励みだろうと感じました。
 上映された19本のミニ番組の中には今後、継続取材し、長尺のドキュメンタリーになりうる「原石」ともいうべき優れた作品がいくつも存在しました。
 ローカル局のドキュメンタリーの多くは、予算的にも最初から長尺の番組として企画されたものではなく、こうした普段のニュース企画やレギュラー番組の特集コーナーなどで放送を重ね、実績を積み、コツコツ撮り溜めて制作されたものがほとんどです。ゲストの鈴木嘉一さんが講演で仰っていたように「同じ題材や人物を長期間追い続ける取材は、地域に密着したローカル局にしかできないことだ」という言葉をしっかりと受け止め、私自身はもう若手ではありませんが、「まだまだ現場に出たい!」と言い続けようと思います(苦笑)。
 今回、台風被害が続く中での開催となり、当日も生憎の天気で懇親会は中止せざるを得ませんでしたが、なんとか無事終えることができました。
 開催にあたりご尽力をいただきました、ゲストの鈴木嘉一樣、雪竹弘一様、そして放送文化基金の皆様へ感謝申し上げます。