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読む・楽しむ もっと制作者フォーラム
各地で行われた制作者フォーラムの模様を、参加者の声を交えて伝えます。

2022年12月27日

もっと  制作者フォーラム in おかやま

レポート+寄稿

 2022年12月2日(金)、岡山市にあるRSK山陽放送・能楽堂ホールtenjin9にて、「中四国制作者フォーラムinおかやま」が4年ぶりに開催されました。
 このフォーラムには、中国・四国にある全民放とNHK、計32局が協力、制作者を中心に約50名が参加しました。
 会場となったtenjin9は本格的な能舞台を備えた全天候型の多目的能楽堂ホール。初めてこのホールを訪れた若手制作者の皆さんは、入場するなり驚いた様子で写真に納めていました。また、制作者フォーラムが始まる前から、制作者の皆さんが名刺交換、意見交換を活発にされていたのがとても印象的でした。この会場のもつ自由な雰囲気がそうさせたのではないかと思いました。

 第1部のミニ番組コンテストには、様々なテーマで29局が参加。午前中に11作品、お昼を挟んで18作品を全員で視聴しました。お昼は、皆で同じお弁当を山陽放送さんの食堂や岡山城が見える眺めの良いテラスなどに分かれていただきました。ここでも中身の濃い交流ができたとの感想を聞きました。

 第2部は、「Withコロナ ローカルメディアの未来を 熱く語ろう」と題して、ミニ番組コンテストの審査員でもある3人、大島新さん(ドキュメンタリー監督)、堀之内礼二郎さん(NHK大阪放送局)、津田環さん (テレビマンユニオン プロデューサー)のトークセッションが行われました。
 出品されたミニ番組について、審査員と会場にいる制作者がやり取りをしながらトークセッションが進められました。審査員からは、「番組作りのセオリーに左右されていない様々な演出方法で作った勢いのある作品が多かった。続きが見たい、この番組の長尺がみたいと思わせてくれる作品もあった。」とのミニ番組の講評がありました。また、「若い制作者の感覚で地方ローカルに縛られずにもっと自由に作ってほしい。東京の放送局では、通らない企画が多くみられて楽しかった。ローカルの方がずっと作りたいものを自由に作っている印象を受けた。皆さんは、制作者としての時間だけでなく、その地域に暮らす生活者としての時間、日々の人との関係性を大切にして、自身の経験を積み重ねてほしい」と集まった制作者たちにエールが送られました。
 さらに質疑応答では、トークセッションの中で自身のミニ番組が話題に挙がらなかった制作者から「自分の作品について、厳しい講評をお聞きしたい。どうでしたでしょうか?」といった積極的な質問も飛び出し若手制作者の熱を感じることができたフォーラムとなりました。

 ミニ番組コンテストで最優秀賞を受賞した『瀬戸内の秋の音「秋マトペ」文化の秋(紙すき+万年筆)』を共同制作した中村奈桜子さん(NHK松山放送局)・別所寅之助さん(NHK高松放送局)、ゲストの津田環さん(テレビマンユニオン プロデューサー)、堀之内礼二郎さん(NHK大阪放送局)、実行委員の山下晴海さん(RSK山陽放送)に、フォーラムの感想をお寄せいただきました。

最優秀賞受賞者
中村奈桜子(NHK松山放送局)

 これまでにないミニ番組を創りたいと考え、オノマトペを使用した新しい表現を目指しました。フォーラムでは柔軟に受け入れてくださったうえ建築的な助言をいただくことができ、とても有意義な1日となりました。
 さらに数々の作品を見て多くの刺激を受けました。取材力をはじめ、撮影や編集へのこだわり、的確な構成など、自らに足りないものを吸収することができました。

最優秀賞受賞者
別所寅之助(NHK高松放送局)

 賞を頂けて、とても光栄です。今回の作品は、既存の枠組みとしてあった「音の映像シリーズ」をデジタル発信も念頭に置いて新しい演出で!と企画しました。「動きのあるテロップは余計だ」という声もある中、企画のフォーマット自体を評価して頂けて、本当に嬉しいです。これからもニュース番組の枠にとらわれず、どんどん新しい表現に挑戦していきたいと思いを改めて持つことができました。

ゲスト
津田 環(テレビマンユニオン プロデューサー)

テレビマンの中には、私の経験上、人のつくった映像は見ない!と豪語するタイプと、「あれ見ましたけど、良かったっすー!」と、視聴しまくるタイプがいます。制作者フォーラムとは、その両者が入り乱れ、参加した制作者すべてのテレビ観が破壊され、再構築される、ダイナミックなイベントです。今回、放送局や制作会社の立ち位置、それぞれの職種や役職、フリーか組織か、ジェンダーや世代も越えて、「見るひと」に何を伝えたいか、という純粋な制作の動機を思い出させてくれる珠玉の作品ばかり。最も印象的だったのは、続編を撮りたい、追加取材をしたい、という声が多かったこと。星の王子様のバラがかけがえのないものになったのは、彼がバラのために費やした時間があったから。今日もまた膨大な時間をかけ、たゆまぬ取材と編集を紡いで、小さな番組をコツコツ世に送り出すテレビマン。一緒に頑張りましょう!

ゲスト
願いの力を信じて
堀之内礼二郎(NHK大阪放送局)

私たちテレビマンが番組を作る際にまず考えるのは「ねらい」です。ただ、私が個人的に一番大事にしているのが、「ねがい」です。視聴者に何を感じてほしいのか。世の中がどうなってほしいのか。納得できる「ねがい」を描けたら、あとはそれを心の中で願い、まわりの仲間に口に出して伝えていく。「ねがい」を育てていく。そういう風にして作品ができた時、その願いはきっと叶う、と信じています。

中四国制作者フォーラムに参加させて頂き、多くの素晴らしい作品に触れさせて頂きました。どの番組も制作者のみなさまの素敵な「ねがい」にあふれていたように感じました。

激動の世の中です。戦争、コロナ禍、メディアの多様化…問題は尽きず、無力感に押しつぶされそうな気持ちになる時もあります。でも、大丈夫。きっと、作り手が純粋な気持ちで紡いだ「ねがい」はきっと叶う、きっともっといい世の中になっていく。素敵な願いの花束は、私に大きな勇気を与えてくれました。


実行委員会
若手制作者の「眼差しと発想」は、宝の山!
山下 晴海(RSK山陽放送)

 4年ぶりの開催となった中四国制作者フォーラム。若手制作者によるミニ番組コンテストには、中四国エリアのNHKと民放の各局から29作品がエントリーされた。作り手の思いが素直に表現された作品が多く、「伝える」力を感じた。
 映像や音の編集が上手いとか、構成がよくできているとか、そんなことよりも作り手の伝えたいという気持ちが一番大切なんだということをあらためて実感させられた。最優秀賞に選ばれた作品は、紙漉きと万年筆作りの工程をナレーションなしで伝えた。現場音(擬音語や擬態語)を、字幕を使って視覚化するという新たな手法で表現されたものだった。字幕を入れるリズム感も小気味よく見ている人の気持ちをワクワクさせた。
 若手制作者の眼差しと発想が輝いて見えたこの度の制作者フォーラムを通してテレビはまだまだ発展途上、これから成熟するメディアだという思いを強くした。