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読む・楽しむ もっと制作者フォーラム
各地で行われた制作者フォーラムの模様を、参加者の声を交えて伝えます。

2023年1月6日

もっと  制作者フォーラム in なごや

レポート+寄稿

 2022年11月16日(水)、東別院ホール(名古屋市)にて、愛知・岐阜・三重制作者フォーラムが開催されました。コロナ感染予防のため参加人数を制限しての開催となり、95名が集まりました。
 ミニ番組コンテストでは10作品の力作の中から優秀賞3作品が選ばれました。その中から『チャント! 悪魔の病と闘うウーバー配達員』を制作した柳瀬晴貴さんから番組についての思いを寄せていただきました。

ミニ番組受賞者
ウーバーイーツを頼んで知った『トゥレット症 』
柳瀬 晴貴(CBCテレビ)

 勝手に声や体の動きが出てしまう“チック”の症状が重いトゥレット症と闘う名古屋のウーバーイーツ配達員、棈松怜音(あべまつれおん)さんを追いました。
 取材のきっかけは、仕事終わりに夜中に頼んだ出前です。棈松さんから「私はチックという病気があり、声が出てしまう事があるが許して欲しい」とメッセージが届きました。その日まで私はこの病気を知らず、街で突然大きな声を出す人を見かけると(変な人かも。近づかないでおこう)とやり過ごしていました。
 トゥレット症には勝手に手足が動いて自分の体を叩いてしまうなど、人により様々な症状があり、自分でも制御が難しく『悪魔の病』とも言われていました。
 公共交通機関での移動は周りの反応も冷たく、とても過酷な環境だと言います。恐ろしい病だと思いました。
 今回の審査で様々アドバイスを頂きました。心から感謝申し上げます。1人でも多くの方に知って頂くため取材を続けます。

 ミニ番組コンテストの後、審査員の明松功さん(クリエイティブカンパニーKAZA2NA CEO)、齊藤潤一さん(関西大学教授)、高橋弘樹さん(You Tuber・テレビ東京ディレクター)の3名による熱いトークセッションが行われました。若手制作者からの質問にも熱心に応えていただきました。
 そんな3人の方々から、フォーラムの感想、若手制作者のみなさんへのエールをいただきました。

審査員
皆さんは、どんな番組が好きですか?
明松 功(KAZA2NA CEO)

 今回のフォーラムでご一緒させていただいた各局社員の皆さんは、フジテレビ入社4年半でようやくディレクターになれた私の目から見て、とても頼もしく、かつ、羨ましく感じました。私より遥かに若い時期から、番組演出を経験されています。だからこそ、『演出とはなんぞや?』をとことん突き詰めてもらいたいです。打席に立てるアドバンテージをフル活用して。失敗を恐れずに。
 私は、愛のある番組が好きで、視聴者・出演者・スタッフに愛のある番組作りを目指してきました。お笑い番組らしく痛快に笑ってもらえているのか?出てくれている芸人さんは面白くなっているのか?このチームでいることに誇りを持ってもらえているのか?
 皆さんは、どんな番組が好きですか?
 皆さんが、好きな番組を目一杯演出できている未来を願っています。

審査員
ひとを描く
齊藤 潤一(関西大学社会学部教授)

 左手の指がない野球少年(東海テレビ)。悪魔の病と呼ばれるトゥレット症と闘うウーバー配達員(CBCテレビ)。プロ野球のドラフトに臨む大学生とシングルマザー(中京テレビ)。優秀賞に選ばれた3作品に共通するのはしっかり「ひと」を描けていることだ。
 番組作りで一番大切なのは人間関係の構築だと思う。取材対象者の懐に深く入り、本音を聞き出す力。その一方で、一歩離れて冷静に取材対象者を見る目。3作品には絶妙な距離感があった。
 この他にも、ロックなお坊さん(三重テレビ)や顧客の心を掴む百貨店外商員(テレビ愛知)など「ひと」を描いた見応えある作品がそろっていた。
 全国の制作者から東海地区はレベルが高いと良く言われる。切磋琢磨しながら、モノづくりを大切にしている土地柄だと思う。この伝統を大切に、良作を出し続けて欲しい。

審査員
思い出した「スベる勇気」
高橋 弘樹(テレビ東京ディレクター)

 愛知・岐阜・三重の制作者フォーラムで多くのことを学ばせてもらいました。
 まず、V T Rのレベルが非常に高かったです。賞レースはともすると作品性やメッセージ性の強いものが多くなりがちですが、それらのベースもありつつ、しっかりと「見てもらおう」という気概と演出の工夫を感じさせるVTRが多かったです!
 また、「新時代のテレビ」への挑戦とヒントもありました。CBCさんのドキュメンタリーシリーズ。地上波だけでなく、YouTubeでずっと1人の被写体を追いかけ、爆発的な再生回数を稼いでいるのにも驚きましたし、テレビ制作者の底力を感じました。
 そして何より初心を思い出させていただきました。満ブリで笑いを取りに来て、滑ったV がありましたが、それが一番自分がいま出来ないことであり、羨ましく思いました。自分が面白いと思うものを、とにかく全力でぶつけにきたVTRが、とてもフレッシュで印象に残り、見習おうと思いました!