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アフガニスタン国営放送局(RTA)支援を終えて
第5回研修 2005年4月13日〜5月4日
「『おかあさんといっしょ』に質問殺到」

 4月10日に成田を発ち、デリーで2泊、アフガニスタン・カブール空港に無事到着――と書けば、何事もなかったかのようだが、そこはトラブルに富んだアリアナ航空。いざアフガンへ向かうべくデリー空港に着くと、乗るべき便は消滅しており、一便遅れの便に、航空機二便の乗客が乗るようになっていた。空港で6時間待ち、時間が来て搭乗ゲートで待つと、なにやら怪しい気配。航空機整備員が大勢アリアナ機に出入りしている。故障なのかと不安が募る。30分ぐらいして搭乗のアナウンスがあり、1時間ほど遅れて搭乗、デリーのホテルを出てから16時間掛かってカブールに到着。
 今回は、Rahman総局長から、番組研修をOJT(オンザジョブ・トレイニング、実地訓練)で行って欲しいとの要請があった。スタジオ収録に立ち会い、指導して欲しいとのこと。私としては今まで研修に参加してきた人たちを無視できないし、OJTはJICAが専門家を派遣して行うような長期の指導を要するためお断りしたが、再三再四の懇願を受け、今までの人の研修も行うという条件で引き受けることになった。結果、週3日はスタジオ、2日は講義という形に落ち着いた。
 ところが、マネージメントを預かる人物がOJTと講義の違いを理解できず、スタジオに講座の生徒を連れてきて座らせ、私に講義をせよという珍現象が起こってしまった。彼に何回説明しても理解してくれず、研修生自身も分からないまま、スタジオに集まってくる。まさに収拾のつかない状況であった。Rahman総局長と話し合い、次回はルールをはっきり決めることにした。技術移転をする際には、相手方を決めて行わないと成果は上がらない。
 さて、いざスタジオでの収録に立ち会ってみると、正直言って番組とは言えない。RTAのベテランディレクターだったが、番組のセオリー、即ちIntroduction (Head,) Contents (Body,) Conclusion (Ending) の三要素を理解していないようで、これでは初心者と変わらない。録画が終るとPDが来て自分の番組はどうかと尋ねてきたので、評価は私ではなく、番組を見る子どもが決めるのだと答えた。
 また、スタジオ作業に参加したことで、色々なことが分かった。スタジオでは、1時間で20分の番組を制作している。セットの仕込み、照明、カメラ調整、リハーサル、全てを含んで1時間である。時間が来ると、収録の途中でも中止し、スタジオを次の番組収録に渡す。この結果、最もシンプルな演出形式と収録技術を選択せざるを得ない。セットは簡単なもので、ライトは大きく変えず、カメラは動かさず、マイクは少なくし、映像はクロマキーを多用する。驚いたことに、スタジオにFDがいない。PD一人がスタジオのセッティング、技術打ち合わせ、出演者の対応等全てをこなしている。カメラマンがキューを出している。逆に言えば、1人で出来ることしかやっていないのである。
 この時点で、ベテランも含め全員に基本的な研修をする必要があると判断した。現役のPDが9人集まり、NHKの子ども番組、松岡修造さんの3分テニス教室のビデオを使い、ここまでが導入、ここが主要なBody,これからがendingと何度も繰り返し見せて説明した。彼らは、やっと番組とはこのようなシステムでつくられているのだと悟ったようだった。
 彼らの素晴らしいところは、三要素を入れた手法で番組を作ってみたいと言い出したことで、即座にOKし、NHKエデュケーショナル提供のカメラ4台を使って5分番組を制作することになった。何とか本当の番組作りが出来そうな体制になりつつあった。先は長いが、道筋は見え始めた。
 最後の講座研修で、NHKの「おかあさんといっしょ」の番組を見せた。16人が出席し、そのうち半数は女性ディレクターであった。番組を見る表情は皆、驚きにあふれていた。華麗なる画作り、大勢の出演者、歌、子どもの遊戯、お兄さん、お姉さんの活躍。番組が終って、女性ディレクターからの質問が殺到した。誰が番組を作るのか、歌は、遊戯は、アニメは、等々・・・・彼女たちには理解しがたいことなのである。私はNHKの番組制作のシステムについて話した。番組委員会、放送文化研究所、幼稚園ほか協力団体、制作者側の自己研鑽、長い放送制作業務の積み重ね。彼女たちには夢の国の話に聞こえたかも知れないが、強烈な印象を与えたことは確かで、これからの一つの目標になったことと思う。
 5月に入って木々の緑も一層鮮やかになり、雨も3日に1回ぐらい降って丁度良いお湿りとなった。カブール市内の状況は今のところ静けさを保っているが、その半面、警備は厳しくなり、各国の重装備車両が街中を走り、ホテルの周辺にはドイツの装甲車が頻繁に見回りに来ている。ホテルの裏山にある城塁のそばに装甲車がたむろしているのを目撃したときには、さすがにドキッとした。

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