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『VIVANT』の周を待ちながら|『ラヴィット!』
桧山珠美 ▶▶▶『日日是てれび日和』 気になる番組を読み解く週一コラム
【第62回】『ラヴィット!』(TBS 2026年10月19日8時00分~)

ほんとうに生放送は何が起こるかわからない。だから面白いのだけども。そんなことを久々に実感させてくれたのが、19日放送の『ラヴィット!』(TBS)だった。
この日のゲストは、日曜劇場『VIVANT』でシンシーの工作員、周浩然を演じるリンリンと、李茗沢役の木幡竜。ところが、オープニングの時点で、リンリンの席だけがぽっかり空いている。なんと、寝坊による遅刻だった。
田村真子アナウンサーがその事実を伝えると、画面には『VIVANT』のタイトルロゴを思わせる黒と赤の色合いで、「リンリン寝坊で遅刻」というテロップが映し出された。
「うちの周がすみません」と平謝りする木幡。MCの川島明も、初めてのバラエティー出演を楽しみにするあまり、寝つきが悪くなって寝坊してしまったのだろうと、さりげなくフォローする。リンリンは午前8時30分ごろに到着する予定だという。カメラの向こうの本人に向かって「安全に、安全に」と呼びかけながらも、「ただ、これまで遅刻した人はおりません」と、番組6年目にして初めての事態であることを強調。心なしか、川島の表情がウキウキしているように見えた。
ところで、この日はもうひと組、スペシャルなゲストが登場していた。土曜日に開催された『キングオブコント2026』で王者に輝いたジェラードンだ。優勝コントを生放送で披露するという目玉企画だったが、リンリンの遅刻騒動でひとしきり盛り上がったあとでは、少々影が薄くなってしまった印象。なんともお気の毒である。
ただ、そんなジェラードンに「時間どおり来てくれてありがとう」と声をかけ、ちゃんと笑いにつなげる川島。
そうこうしているうちに、到着予定の午前8時30分を過ぎても、リンリンは現れない。途中、渋滞に巻き込まれ、到着は午前9時になるという情報が入る。川島は「もしかしたら来られないかも?」「検問に引っかかったかも?」と、ちょいちょい『VIVANT』ネタを挟んでくる。
そのまま時間は過ぎ、ロケVTRのコーナーも終わり、番組はいよいよ終盤に。「このあと『VIVANT』シンシー周は番組終了までに間に合うのか?」というテロップが出て、CMへ。ニュースが終わっても、リンリンはまだ現れない。
ここでジェラードンが視聴者プレゼントのキーワードを発表。それが「リンリン眠眠」だった。冴えたキーワードで笑いを生むとは、やはり『キングオブコント』王者である。
そして午前9時48分ごろ、ついにリンリンが登場。「この方が駆けつけてくれました」という声に続いて、舞台裏から走る足音が聞こえてくる。姿を現すなり「すみません、すみません」と謝り、仰々しく土下座。何度も頭を下げ、ひたすら謝罪する。
そこへ川島が近づき、肩に手を置いて「よう、リンリン」とひと言。さらに「どんな気持ちだ? 今」と問いかける。堺雅人演じる乃木憂助を思わせる口調で迎え撃つ川島に、リンリンもニヤリ。その場にしゃがみ込み、手を差し出して「指、何本いきます?」と返した。
『VIVANT』には、別班員の指を切り落とす拷問の場面がある。川島のアドリブを受け、リンリンも役柄にちなんだひと言で応じたのだ。ドラマを見ている人なら思わず膝を打つ、絶妙な掛け合いだった。
「怖いこと言わないでください。リンリンが来てくれました~」
川島はそう言って拍手でリンリンを迎えた。
撮影はとっくに終了しているが、リンリンはドラマの周を彷彿とさせる丸刈り姿。本人いわく、「俺、遅刻したんですけど、ほんと、この番組に懸けてたんで。また剃ったんです」と、出演に向けて気合いを入れていたという。
さらに、「いろいろやる(コーナーの)練習をしていて。ジェラードンさんも来るから、同じ地元(宮崎県)なんですよ。なんか絡めたらなあと、いろいろイメージしていたら、目がパキパキになって……。あと、ブルーウォーカーにスマホ乗っ取られたんですよ! ブルーウォーカー!」と苦しい言い訳。もちろん、スタジオからはツッコミが飛ぶ。初出演を楽しみにしすぎた結果が寝坊とは、なんとも皮肉な話だ。
最後は川島が「6年やって初めてなんです。『ラヴィット!』なりの制裁を受けてもらいます」と告げ、番組名物のビリビリ椅子の洗礼を受けることに。しかも、遅刻していない木幡まで巻き添えにするあたりも、『ラヴィット!』らしい。
というわけで、この日の『ラヴィット!』は、ゴドーならぬ「リンリンを待ちながら」で幕を閉じた。わずか10分ほどの出演ながら、すべてを持っていった感のあるリンリン。ドラマでの極悪ぶりとは違う素顔も垣間見え、思わぬ収穫となった。
『VIVANT』を見ていない人には、何のことやらわからなかったかもしれない。だが、久々に生放送の醍醐味を堪能した。
とっさのひと言で笑いを生み、相手の返しを引き出す川島のMC力はさすがだ。さらに、『VIVANT』を思わせるテロップを用意し、予想外の展開にも臨機応変に対応するスタッフ。出演者とスタッフが一丸となって、ハプニングを番組の見せ場に変えていく。そこに『ラヴィット!』の強さを見た。
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プロフィール

桧山珠美(ひやまたまみ)
HBF MAGAZINEでは、気になるテレビ番組を独自の視点で読み解く連載『日日是てれび日和』を執筆中。
編集プロダクション、出版社勤務を経て、フリーライターに。
新聞、週刊誌、WEBなどにテレビコラムを執筆。
日刊ゲンダイ「桧山珠美 あれもこれも言わせて」、読売新聞夕刊「エンタ月評」など。
“HBF CROSS”は、メディアに関わる人も、支える人も、楽しむ人も訪れる場所。放送や配信の現場、制作者のまなざし、未来のメディア文化へのヒントまで──コラム、インタビュー、レポートを通じて、さまざまな視点からメディアの「今」と「これから」に向き合います。
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