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早乙女兄弟の無駄遣いではないか|『ぽかぽか』
桧山珠美 ▶▶▶『日日是てれび日和』 気になる番組を読み解く週一コラム
【第60回】『ぽかぽか』(フジテレビ 2026年10月5日11時47分~)

2023年1月にスタートしたフジテレビお昼の番組『ぽかぽか』。なんだかんだと3年を経過し、まもなく放送1000回を迎えるらしい。
始まった当初はわりと熱心に見ていたが、すぐに熱心に見るような番組でもないな、と気がつき、ゲストによって見たり見なかったり。そんなスタンスでつきあってきた。
この間、さまざまな企画が生まれては消え、消えては生まれてきたが、そんななか今も残っているのが、約2kgの牛肉の塊から300gを切り分ける「牛肉ぴったんこチャレンジ」だ。
番組最大の見どころが肉を切ること! というのもどうかと思うが、これを楽しみにしている視聴者がいることも事実。なかには、ほかの番組を見ていても、「牛肉ぴったんこチャレンジ」が成功するかしないかが気になるので、そこだけ見るというツワモノもいる。
ゲストたちにもすっかり浸透していて、「やってみたかった」「300gのペットボトルを持って重さを覚えてきた」などとこのコーナーへの意気込みを語る姿をたびたび目にする。
一流芸能人なら、高級牛肉くらいいつでも買えそうなものだが、自分の手で300gぴったりに切り分けられるかどうか。持ってる芸能人というのは、こういうとき往々にして成功させるというから、自分が持ってる芸能人なのかどうかを試したいというのもあるのかもしれない。
そんなわけで、『ぽかぽか』といえば牛肉切り、というイメージがすっかり定着している。毒にも薬にもならない番組だが、かつて同じ枠で坂上忍がやたらイキってMCを務めていた『バイキングMORE』よりはずっと気楽に見られるところは評価できる。昼のひととき、この『ぽかぽか』のゆるさを支持する人に支えられ、ここまで続いてきたのだろう。
さて。10月5日のことだ。この日のゲストは早乙女太一と早乙女友貴の大衆演劇をルーツにもつ兄弟だ。
ここでカミングアウトしておくが、私は早乙女兄弟のかなりのファンである。「劇団☆新感線」の舞台で2人の殺陣を見て、その凄さにすっかり魅了されてしまった。その疾走感、間の取り方、相手との呼吸。これまでにも多くの舞台を観てきたが、彼らほど素晴らしい殺陣を見せてくれる人はそうはいない。
以来、2人の舞台を追いかけ、この春も太一が二代目座長をつとめる劇団「朱雀」の公演を何度も観に行ったほどだ。
だから、先週金曜日の予告で、早乙女兄弟が出演すると知ったときは狂喜乱舞、これは見なくては、と楽しみにしていたのだ。
ところが、だ。
オープニングで彼らの舞台の映像がチラッと出てきたものの、あとは、「カーリングゲーム」「ハライチ岩井によるクッキング」「秋が旬の食材を当てるゲーム」と余計なコーナーばかり。いざ、トークが始まっても、「大衆演劇あるある」や「兄弟仲の話」など、前にも聞いたような話ばかり。彼らの魅力の核心に迫るものではなかった。
「ベストバイ」というオススメを紹介するコーナーで、太一が紹介した「なつめくるみサンド」は、さっそくネットでポチりましたが(笑)
大衆演劇といえば、かつて市川森一脚本の『淋しいのはお前だけじゃない』というドラマがあった。1982年に放送された作品で、サラ金の取り立てで旅役者のところに行った主人公が、大衆演劇の世界に魅了され、やがて自身もその舞台に立つというもので、西田敏行が主人公を演じていた。このドラマで旅役者を演じていたのが梅沢富美男だった。これは梅沢のテレビ初登場で、とても面白い作品だったと記憶する。私が大衆演劇の世界を知ったのもこのドラマだった。歌舞伎より敷居が低く、庶民の娯楽として親しまれてきた大衆演劇。その世界をテレビドラマの中に丸ごと持ち込んだような作品だった。
知らない世界を見せてくれる。そんなドラマをいまのテレビでもやってほしい。
昨今、過去の名作ドラマを復活させることも珍しくない。かりに、令和版『淋しいのはお前だけじゃない』を作るとすれば、ぜひ、早乙女兄弟で見てみたいものだ。
あるいは、つかこうへいの『寝取られ宗介』でもいい。
それほど、2人を買っているのだ。
だからこそ、今回、『ぽかぽか』は絶好のチャンスかと思っていた。なのに、ゲームに料理にクイズって。早乙女兄弟の無駄遣いではないか。
ちなみに、この日は20年続いた『情報ライブ ミヤネ屋』が終了したあと、読売テレビで新番組『ニュースto』がスタートする日でもあった。
その出鼻をくじこうということか、『ぽかぽか』のあと、スペシャルコラボと称して、『旬感LIVE とれたてっ!』がそのまま続き、何をするかと思ったら、MCの青木源太が「牛肉ぴったんこチャレンジ」に挑戦するものだった。
新番組の対抗策が、肉切りって……。
よくよく考えれば、『ぽかぽか』に何を期待していたのか、という話。
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プロフィール

桧山珠美(ひやまたまみ)
HBF MAGAZINEでは、気になるテレビ番組を独自の視点で読み解く連載『日日是てれび日和』を執筆中。
編集プロダクション、出版社勤務を経て、フリーライターに。
新聞、週刊誌、WEBなどにテレビコラムを執筆。
日刊ゲンダイ「桧山珠美 あれもこれも言わせて」、読売新聞夕刊「エンタ月評」など。
“HBF CROSS”は、メディアに関わる人も、支える人も、楽しむ人も訪れる場所。放送や配信の現場、制作者のまなざし、未来のメディア文化へのヒントまで──コラム、インタビュー、レポートを通じて、さまざまな視点からメディアの「今」と「これから」に向き合います。
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