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東宝“ヒットの五角形”と謎のゴジラ部|『光一&シゲのSHOWマン!!』

桧山珠美 ▶▶▶『日日是てれび日和』 気になる番組を読み解く週一コラム 

【第54回】 『光一&シゲのSHOWマン!!』(テレビ朝日 2026年8月17日・24日23時15分~)

「東宝」にはゴジラ部がある。そのことを知っている人はどれだけいるだろう。少なくとも私は知らなかった。

昨年10月にスタートした『光一&シゲのSHOWマン!!』は、堂本光一と加藤シゲアキがMCを務め、エンターテイメントの魅力を掘り下げる番組だ。

その『SHOWマン!!』が、8月17日、24日の二週にわたって、日本のエンタメ業界を牽引する超ヒット企業として「東宝」を特集。これが実に興味深かった。

東宝といえば、日本アカデミー賞10冠に輝き、国内興行収入200億円超えの映画『国宝』や、アカデミー賞でアジア映画初の視覚効果賞を受賞した『ゴジラ-1.0』など、大ヒット作を次々と世に送り出している。昨年の映画興行収入ランキングでは、トップ10のうち、なんと東宝配給作品が9本もランクインするという快挙を成し遂げた。

演劇においても、堂本光一主演の『SHOCK』シリーズは25年間全日程即日完売。ロンドン公演では約30万人を動員した舞台『千と千尋の神隠し』も東宝の手によるものだ。

さらに、埼玉・西武園ゆうえんちでは、映画の世界をリアルに体験できるゴジラのアトラクションを展開している。

2026年2月期の連結決算では、営業収入3,606億円、営業利益678億円と、いずれも過去最高を記録した。

まずは前半。

17日に放送されたなかで興味深かったのは、『世界の中心で、愛をさけぶ』『永遠の0』『シン・ゴジラ』など、数々の東宝作品に携わってきた取締役専務執行役員・市川南氏の話。

「ヒット作は誰にも読めないんです」と市川氏。

「たとえば『国宝』という作品も、再現するにはお金がかかる。だからうちで作るのはやめようという判断でやめました」と語った。

東宝には、ヒット作を見極める独自の判断基準がある。それが、①(面白くて売れている)原作 ②(腕のある)監督 ③(人気、実力ともにある)キャスト ④(的確な)脚本 ⑤(ビッグなアーティストによる)音楽、という5つの要素だ。

この5項目を五角形のグラフにし、どれだけバランスよく、大きく広がっているか。グラフが大きければ大きいほどヒットしやすいという。

その結果、「ヒットしなさそうな作品はわかるようになったんです」と市川氏。しかし、「大ヒットする作品はいまだにわからない」と続ける。

『国宝』の場合、歌舞伎という古典芸能が題材なのでターゲットが狭いんじゃないか、ということ、歌舞伎を再現できるのか? 俳優が歌舞伎役者を演じられるのか? などという懸念から、製作は断わったものの、『国宝』くらい五角形が整っていればまずはずすことはないだろうと、配給は引き受けたという。

映画には、実際に企画などを行う<製作>と、完成した映画の宣伝などを請け負う仕事<配給>があり、『国宝』の場合、東宝は製作の一部と配給を請け負ったことになる。

「10億で大ヒットといわれるなか、20億くらいはいくんじゃないかなという十分の一の見立てしかできなかったんです。ところが200億円の大ヒット。ここが映画ビジネスの面白さ不思議さだと思います」と市川氏。

てっきり、『国宝』は東宝の製作・配給かと思っていたが、そんな事情があったとは知らなかった。

そして、24日の後半。

今回は、演劇部の制作秘話と、謎に包まれたゴジラ部の秘密について明かされた。

まずは東宝演劇部の強さについて。

そもそも東宝は、宝塚歌劇団の創設者・小林一三が、関東で宝塚の公演を行うために作られたもので、株式会社東京宝塚劇場がその名の由来になる。つまりは、演劇から始まった企業だという成り立ちに始まり、1960年以降は演出家・菊田一夫を中心に東宝ミュージカルの黄金期を迎え、『レ・ミゼラブル』や『エリザベート』など、ブロードウエイやウェストエンドの作品をいち早く上演してきた、などという東宝演劇の歴史の概要に触れた。

東宝演劇部の強みは「劇団がないこと」。専属の劇団を持たないからこそ、作品に合わせた自由なキャスティング、製作陣も外部から広く募ることができるという。作品を中心に、その都度、新しい「座組」を作る。この自由さ、柔軟さが東宝演劇の独自性なのだろう。その強みが発揮された例として紹介されたのが、舞台『千と千尋の神隠し』だった。

面白かったのは、9月に上演されるミュージカル『民王』について。池井戸潤作品初のミュージカルということで、なぜ、『民王』をミュージカルに? と思ったが、演劇部の尾木さんいわく「池井戸先生がミュージカルをお好きだから」とのこと。池井戸潤がミュージカル好きだというのは初めて知った。こういうプチ情報が出てくるのも面白い。

ところで、冒頭の「ゴジラ部」について、だ。

ゴジラの著作権は100%東宝が持っており、ゴジラは東宝の宝。だからこそ、大きく育てなければいけないとそのミッションを背負っているのが「ゴジラ部」で、2025年設立、22人が所属しているという。

これもプチ情報だが、東宝社内の会議室の名前はすべてゴジラに由来しているそうで、ちらっと出た図面には「ラドン応接室」「キングギドラ応接室」「メカゴジラ会議室」「アンギラス会議室」と書かれているのはツボだった。一度でいいから「モスラ応接室」に入ってみたいものだ。

そんなこんなで、30分、2週に渡り、東宝の魅力をたっぷり伝えた特集に大満足。

この『SHOWマン!!』が始まった当初は、同じ事務所の2人がMCで、どうせ事務所の後輩をゲストに、ステージの宣伝をする番組なのだろうと高を括っていたが、そんなことはなかった。

テレビ朝日には『EIGHT-JAM』(旧『関ジャム 完全燃SHOW』)という音楽を徹底的に掘り下げる番組がある。アーティストだけでなく、作曲家、編曲家、演奏家などから話を聞き、音楽の世界を多面的に見せてくれる。

『光一&シゲのSHOWマン!!』は、まさにそのエンタメ版といった趣だ。

音楽に限らず、舞台、映画、映像……。ジャンルの垣根を超え、その世界を作り出す人に話を聞く。そこには発見があり、知らなかったことを知る喜びや感動がある。表舞台の華やかさだけではなく、エンターテインメントを生み出す人たちの情熱に触れる面白さがある。

エンタメを「見る」だけではなく、その向こう側にいる「人」までみせてくれる。こういう番組があることは、テレビにとっても心強い。これからも、知られざるエンタメの世界をどんどん覗かせて欲しい。

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プロフィール

桧山珠美

桧山珠美(ひやま たまみ)
HBF MAGAZINEでは、気になるテレビ番組を独自の視点で読み解く連載『日日是てれび日和』を執筆中。
編集プロダクション、出版社勤務を経て、フリーライターに。
新聞、週刊誌、WEBなどにテレビコラムを執筆。
日刊ゲンダイ「桧山珠美 あれもこれも言わせて」、読売新聞夕刊「エンタ月評」など。


“HBF CROSS”は、メディアに関わる人も、支える人も、楽しむ人も訪れる場所。放送や配信の現場、制作者のまなざし、未来のメディア文化へのヒントまで──コラム、インタビュー、レポートを通じて、さまざまな視点からメディアの「今」と「これから」に向き合います。

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