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声に表情を宿して――毎田暖乃さんが演じた、理沙の心の揺れ

第52回放送文化基金賞ラジオ部門 優秀賞&演技賞

聞き手  小島ゆかり ラジオ部門審査委員長

第52回放送文化基金賞で、『FMシアター 大きな湖の小さな島で』(NHK大津放送局)がラジオ部門の優秀賞を受賞し、主演を務めた14歳(取材当時)の俳優・毎田暖乃さんには演技賞が贈られました。
すでに子役として高い評価を受けてきた毎田さんですが、今回の作品では、琵琶湖の離島を舞台に、友達とのコミュニケーションに悩みながら成長していく少女・理沙を熱演。ラジオドラマという声だけの表現の中で、豊かな感情を届ける「あざやかな声の表情」が、審査員から高く評価されました。
7月8日、ホテルオークラ東京で行われた贈呈式を前に、ラジオ部門の小島ゆかり委員長が毎田さんにお話を伺いました。

※『FMシアター 大きな湖の小さな島で』(NHK大津放送局)は、下記日程で再放送を予定しています。
■2026年8月29日(土)22:00~22:50(NHK FM)

左:小島ゆかり委員長 右:毎田暖乃さん

小島 まずは、ご受賞おめでとうございます。早速ですが、受賞のお知らせは、どこでどんなふうに受けたんですか?

毎田 家で普通にご飯食べてたか、何かしてた時に、事務所の方から連絡が来て。最初は信じられなかったんです。「えっ、本当に?」「私が?」みたいな感じで。

小島 「え、私が?」という気持ちだったんですね。

毎田 はい。しばらく信じられなかったです。

小島 毎田さんは子役時代から注目され、これまでも賞を受賞されています。ただ今回は、映像ではなくラジオドラマでの演技賞です。また違った喜びがあったのではないでしょうか。

毎田 私もびっくりしました。ラジオ部門からの演技賞は、7年ぶりと聞きました。

小島 そうですね。演技賞が設けられたのが第15回放送文化基金賞からで、そのときから今回まで、ラジオドラマ部門から演技賞を受賞したのは、毎田さんを含めてわずか3人しかいません。そのうちのお一人が毎田さんなんです。

毎田 本当にありがとうございます。

小島 私たち審査員にとっても、本当に誇らしく、うれしく思っています。本当に素晴らしい演技でした。

毎田 ありがとうございます。

7月8日贈呈式にて

声に表情を宿す

小島 今回の作品は、琵琶湖の離島・沖島の小学校を舞台にした物語です。毎田さんが演じられた小学5年生の理沙は、お母さんや先生とは話せても、友達とはうまく話せない女の子。離島通学を通して少しずつ成長していく役でしたが、台本を読んだ時はどう感じましたか?

毎田 まず一番印象に残ったのは、本当に素敵な作品だなと思いました。でも理沙は吃音障害みたいな感じで、私自身経験したことがなかったので、私にとってはチャレンジというか、難しいだろうけど、いい作品を私の声で作れたらいいなと思いました。

小島 ラジオドラマは映像がありません。俳優の大きな力となる動きや表情、たたずまいもなく、頼れるのは声だけです。ラジオドラマから演技賞の受賞者が出にくいのは、そこにも理由があると思います。でも今回、私たち審査員が最も感動したのは、毎田さんの「声に表情がある」ということでした。間の取り方や、感情をこらえながら少しずつ声ににじませていく表現、そのすべてが本当に素晴らしかった。審査員全員が、演技賞にふさわしいという評価で一致しました。

毎田 ありがとうございます。

小島 普段は、台本を読んで、細かく人物像を作るタイプなんですか?

毎田 台本に書かれていない、その子の私生活だったりとか、そういうところは想像したりしています。

小島 今回は例えばどんなことを?

毎田 理沙のことを考えるのはもちろんなんですけど、舞台になる場所のイメージも大事にしたいなと思っていました。実は、収録の1年くらい前に、偶然、家族で竹生島に旅行に行っていたんです。沖島ではないんですけど、琵琶湖に浮かぶ島だったので、琵琶湖の雰囲気といいますか、船に乗ってる感じとかは、そのおかげで想像しやすかったです。

琵琶湖に浮かぶ沖島

小島 学校の仲間たちと警察チームと泥棒チームに分かれて鬼ごっこをするケイドロのシーンは、本当に一緒に走っているように聞こえました。実際に走りながら収録したんですか?

毎田 いえ(笑)。マイクの前で、特に動きもなく収録しました。

小島 えっ、走っていない?

毎田 走ってないです。

小島 追いかけたり逃げたりする場面や、息遣い、近づいたり遠ざかったりする距離感まで、本当に走っているようでした。

毎田 その場で動かずにやっていたので、難しかったです。

小島 私は絶対にピンマイクを付けて走っていると思っていました。

毎田 全然そんなことなかったです(笑)。

収録時の毎田暖乃さん

小島 理沙は、離島通学を通して少しずつ成長していきます。怖れや戸惑い、ひとときの喜びや不安、そして回復への兆し――。変われそうで変われない自分を受け入れていく、その揺れ動く心理の変化が、声だけなのにはっきりと伝わってきました。ああした間合いや感情の動きは、ご自身で考えながら演じられたのですか。

毎田 あんまり考えるというより、その時の感覚で演じていました。

小島 滋賀県の小学5年生が一泊二日で船に乗り、琵琶湖を周遊しながら交流する学習船「うみのこ」の場面も印象的でした。離島通学で一度は自信を取り戻しかけた理沙が、他校の子どもたちとうまく交われず、再び落ち込んでしまいますよね。その後、学習船が沖島に近づき、仲間たちの「りっちゃん、頑張れ!」という声を聞いた瞬間の毎田さんの演技は、本当に胸を打たれました。

毎田 有紀子役の竹澤咲子ちゃんが、実際はすぐ前にいたんですけど、必死で手を振りながら「りっちゃん!」って叫んでくれていたんです。

小島 審査員の中にも「あの場面で泣いた」という人が何人かいました。私もあまりにも感動して、後からYouTubeで学習船「うみのこ」の映像を見たんです。 実際に甲板から沖島が見えてくる景色を見たとき、「ああ、この場面なんだ」と思いました。その映像を見ながら、仲間たちの存在に支えられて理沙が「ああ、私は一人じゃない」と気持ちが高まっていく様子が、毎田さんの演技とともにありありとよみがえってきて、改めて本当にすごい演技だったと思いました。

「楽しそう」「やりたい!」の一歩から

小島 今回、理沙が話していた言葉は、近江弁のような柔らかい関西弁でしたが、アクセントなど工夫はされたんですか?

毎田 あんまり普段と変わらなかったかもしれないです。

小島 以前、連続テレビ小説『おちょやん』(NHK)では河内弁が話題になりました。

毎田 あれは結構苦労しました。言ったことも使ったこともなかったので、口が回らなくて。

小島 でも本当に自然でした。訓練されたの?

毎田 はい。練習はいっぱいしました。

小島 あの頃は小学3年生でしたよね。

毎田 そうです。今は会う人みんなに「おおきなったね」って毎回言われます(笑)。

小島 一番最初に俳優になりたいと思ったのは、いつ頃だったんですか?

毎田 小学2年生です。「楽しそう」「やりたい!」って思って。

小島 「やりたい」と言ったとき、ご両親は反対されなかったんですか?

毎田 突発的に「やりたい!」って言って、お母さんは「えー」とは言いながらも、結局応援してくれて、事務所を探してもらいました。ありがたいことに、その後すぐに『おちょやん』にも出演させていただきました。

映画にも挑戦したい

小島 着々と大きな花が開いていますよね。これまでテレビやラジオ、舞台といろいろ経験されていますが、それぞれ違いはありますか?

毎田 あります。普段は映像がメインなので、ラジオドラマや舞台は難しいです。息遣いだったり、舞台は発声も全然違います。

小島 今は中学生ですよね。ボイストレーニングや演技の練習は、いつされているんですか?

毎田 事務所のマネージャーさんが時間を作ってくださって、一緒に役の想像を深めたり、声の出し方などを教えてくださっています。

小島 まだまだ無限大の可能性がある毎田さんですが、これから挑戦してみたいことはありますか?

毎田 映像のお仕事が好きなので、映画にも出てみたいです。目標の一つです。

等身大の毎田暖乃さん

小島 中学校に通いながら俳優のお仕事をされるのは大変ですよね。普段はどんな毎日なんですか?

毎田 でも、普段は普通の中学生です。

小島 クラスメートの反応は?

毎田 応援してくれています。

小島 俳優以外で、なりたいと思ったものはありますか?

毎田 前はドレスデザイナーになりたいと思っていました。絵を描くのが好きだったので。でも最近はあんまり描いてないです。

小島 お休みの日はなにをされているの?

毎田 アニメを見たり、友達とゲームをしたりします。

小島 ちゃんと遊ぶ時間もあるんですね。

毎田 あります(笑)。

小島 最後に、ご自分の好きなところと嫌いなところを教えてください。

毎田 難しい(笑)。好きなところ……。そんなになんか、ぱっと出てこないです。一番嫌だなと思うのは、ギリギリにならないと努力しないところです。でも、本番になると本領を発揮するタイプってよく言われます。

小島 本番に強いタイプなんですね。割と度胸があるというか。

毎田 根性はあるって言われます。

小島 それは長所ですよ(笑)。じゃあ、理沙とは全然違うタイプなんですね。

毎田 多分、全然違います。

小島 でも、ドラマではいろいろな役を演じるでしょう。それはご自分にとってどんなことですか?

毎田 面白いです。自分とは別の人を演じているので、自分じゃない人生をその間は生きられる。いろんな人を生きられて、うれしいし、楽しいです。

小島 俳優として最高の言葉ですね。これからも応援しています。改めまして、ご受賞おめでとうございます。

毎田 ありがとうございます。


【あらすじ】FMシアター 大きな湖の小さな島で

舞台は、琵琶湖に浮かぶ沖島。日本で唯一の、人が暮らす湖上の島である。湖と山に囲まれた狭い場所に200人ほどが暮らしている。
小学5年生の理沙は、親や先生とは話すことができるのに、クラスの子と話すことができない。「あの、えと・・・」言いたいことはあるのに、どうしても言葉が出てこない。学校を休むことが増えた理沙は、母の勧めで島の学校に転校することになった。児童数8人の小さな小学校。そこで理沙は、担任のごっちゃん先生、妹や弟のように慕ってくれる仲間と出会い、自分を変えようと小さな一歩を踏み出していく。

プロフィール

毎田暖乃さん(まいだのの)
2020年放送、NHK連続テレビ小説「おちょやん」が本格的デビュー。千代役、春子役を演じた事で注目を浴びる。TBSドラマ「妻、小学生になる。」の出演により、2022年、第111回ザテレビジョンドラマアカデミー賞、助演女優賞を受賞。その後も、NHK連続テレビ小説「虎に翼」、WOWOW連続ドラマW「ゴールドサンセット」に出演。常に、実年齢を上回る役に挑戦。NHK FMシアター「大きな湖の小さな島で」にて、この度の放送文化基金賞、演技賞受賞。

小島ゆかり(こじまゆかり)
ラジオ部門審査委員長
1956年愛知県生まれ。東京都在住。早大文学部卒。コスモス短歌会代表。NHK全国短歌大会選者、産経歌壇選者、短歌甲子園特別審査員など。2005年より放送文化基金ラジオ部門審査委員(現在・委員長)。迢空賞(歌集『憂春』)、芸術選奨文部科学大臣賞(歌集『馬上』)、大岡信賞(歌集(『雪麻呂』)、毎日芸術賞(歌集『はるかなる虹』)など。2017年紫綬褒章。歌書『和歌で楽しむ源氏物語』、歌エッセイ集『サイレントニャー』ほか。

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