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ドラクエの音楽が呼び起こす、勇者タマミンの冒険|『題名のない音楽会』
桧山珠美 ▶▶▶『日日是てれび日和』 気になる番組を読み解く週一コラム
【第59回】 『題名のない音楽会』(テレビ朝日 2026年9月26日10時00分~)

『ドラゴンクエスト』の音楽を聴くと、どうしてこんなにもワクワクするのだろう。
9月26日放送の『題名のない音楽会』は、誕生から40周年を迎えた『ドラゴンクエスト』の音楽を特集。世代を超えて愛され続けてきた名曲を、楽曲の生みの親で、2021年に亡くなった作曲家・すぎやまこういち自身が指揮をする貴重な映像を鑑賞するものだった。
題して、「すぎやまこういちが指揮をするドラゴンクエストの音楽会」。
思い起こせば、幼少期。近所のデパートの屋上で、ピンポンやブロック崩しなどのアーケードゲームに興じたものだ。お気に入りは、シーソーに乗ったピエロが風船を割るゲームだった。
クリスマスには、国産第1号家庭用テレビゲーム機、エポック社の「テレビテニス」をサンタさんから貰い、以来、任天堂「ゲーム&ウォッチ」「ファミリーコンピュータ」「ゲームボーイ」「スーパーファミコン」……「Nintendo Switch」に至るまで、NECやセガのものも含めて、歴代のゲーム機をすべて所有しているのはちょっとした自慢だ。
が、ある時、気づいた。ゲームをやり出すとテレビを見る時間がなくなるということに。で、これはいかん、と、封印したのだった。
そんな数々のゲームをこなしてきた私だが、初めて『ドラゴンクエスト』のカセットを本体に差し込んだ時の衝撃は今も忘れられない。これまでのゲームとは明らかに違う、壮大な音楽が流れてきたのだから。最初にプレイヤーの名前を入れるのだが、私の場合は「タマミン」で、そこから、この音楽とともに、勇者「タマミン」の冒険が始まった。
『ファイナルファンタジー』の楽曲も、『マリオ』も『マッピー』も『リブルラブル』も好きだが、やっぱり『ドラクエ』は別格なのだ。
今回、放送されたのは4曲。
- 『ドラゴンクエストⅠ』より「序曲」
- 『ドラゴンクエストⅡ』より「この道わが旅」
- 『ドラゴンクエストⅥ』より「魔王との対決」
- 『ドラゴンクエストⅢ』より「そして伝説へ」
名曲揃い。どの曲にも物語が感じられ、ゲームに夢中だったあの頃の自分がふと蘇る。
これは「ドラクエあるある」だが、初期の頃はバッテリーバックアップの機能が無く「ふっかつのじゅもん」を入れなくてはいけなかった。これが長い長い呪文で書き写すのを間違うと復活できず、ひとつ前からやり直さなくてはいけない。おっちょこちょいの私は毎回、同じ失敗を繰り返す。慌てて書くと「ぬ」と「め」や「わ」と「れ」がわからなくなったり、チラシの裏に書いた「ふっかつのじゅもん」をどこかに失くしたりともう散々。思えば、『ドラクエ』でいろんなことを学んだような気がする。
もっとも、『題名のない音楽会』の視聴者の中には、「『ドラクエ』など知らん」という人もいるかもしれない。そんな視聴者とゲーム好きの間を橋渡しする役目を務めたのがゲストの伊集院光だ。
「当時、『3音』しか使えない(同時に鳴らせる音が3つ)という制限のなかでよくぞあんなに素晴らしい曲を」と、なぜ『ドラクエ』の音楽が素晴らしいのかを語る。ゲーム好きの熱い想いを代弁しながら、かといってマニアの内輪話にはならない。その塩梅が実に絶妙だった。
たとえば、最初の「序曲」について。
「当時の画面見ればわかりますけど、今みたいなCGも凄くて映画を超えてくる画面じゃない時代。ドット絵のなかで、表情の表れていないキャラクターに、表情をつけるのは、BGMって今以上に大切だった」という伊集院の解説がとてもわかりやすく、「その通り!」とテレビのこちらでいちいち頷いたほど。
また、音楽の合間には、すぎやまこういちのインタビュー映像も登場する。これがまた、ひとつひとつ響く。
「序曲」が「5分でできた」というのは有名な話だ。作曲当時の年齢から「5分+54年」と語っていたこともあるが、後年、出演した回で、「理屈でこね回したメロディは良くないんですね。やっぱりこう、すらっと思いついたメロディのほうが自然なんですね。『ドラゴンクエスト』の最初の“序曲”は5分で。鳴くまで待とうホトトギスの心境で待っているわけです。人に言うときは“5分+80年”。80年の人生があったから、この5分ができた」と。
たった5分で生まれたメロディの背後に、80年の人生がある。とても深い言葉だ。
そして、もうひとつ心に残ったのは「ゲーム音楽は聴き減りのしない音楽でなければならない」という言葉だ。
ゲームをしていれば、クリアするまで何度も何度も同じ曲を聴く。だからこそ、何度聴いても飽きない音楽でなければならない。そんな音楽として真っ先に思い浮かんだのが、何百年ものあいだ全人類が聴いても決して飽きることのないクラシック音楽だ、と。
たしかに『ドラクエ』の音楽は40年経っても、まったく古びない。それどころか、聴くたびにあの頃の自分まで蘇ってくるのだ。音楽そのものだけでなく、そこに流れていた時間まで一緒に保存されているのだ。
今回の企画はぶっちゃければ、過去のアーカイブ映像を使った再放送のようなものだ。
が、昔の映像をただ流すだけでなく、「ドラクエ40周年」を機に、編集し直して、再び放送に乗せたのは意義があることだ。長く続く『題名のない音楽会』であればこそできる番組だと思う。いいものは何度見てもいい。
放送では触れなかったが、奇しくも、9月30日はすぎやまこういちの命日でもある。その時期にすぎやま自身が指揮する映像と、その言葉を改めて届けてくれたのも、番組の粋な計らいではないだろうか。
番組の終わり、恒例の「偉人たちが残した言葉」で紹介されたのも、あの「聴き減り」の言葉だった。聴き減りするどころか、40年経った今も聴く人の心を掴み、その音楽は永遠に生き続けていくことだろう。
今回も、音楽の力を強く感じる、まぎれもない神回だった。
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プロフィール

桧山珠美(ひやまたまみ)
HBF MAGAZINEでは、気になるテレビ番組を独自の視点で読み解く連載『日日是てれび日和』を執筆中。
編集プロダクション、出版社勤務を経て、フリーライターに。
新聞、週刊誌、WEBなどにテレビコラムを執筆。
日刊ゲンダイ「桧山珠美 あれもこれも言わせて」、読売新聞夕刊「エンタ月評」など。
“HBF CROSS”は、メディアに関わる人も、支える人も、楽しむ人も訪れる場所。放送や配信の現場、制作者のまなざし、未来のメディア文化へのヒントまで──コラム、インタビュー、レポートを通じて、さまざまな視点からメディアの「今」と「これから」に向き合います。
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