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日曜朝の“かかりつけ医”|『健康カプセル!ゲンキの時間』

▶▶▶ 『日日是てれび日和』──気になる番組を読み解く週一コラム 桧山珠美 

【第52回】『健康カプセル!ゲンキの時間』(CBCテレビ 2026年8月2日7時00分~)

日曜の朝、長年にわたり日本人の健康を支え続けてきた番組がある。それが『健康カプセル!ゲンキの時間』だ。

いまや健康情報は世の中に溢れている。体に不調を感じれば、AIに尋ねたり、スマートフォンで検索したりすれば、たちまち答えらしき情報に辿り着く。確かに便利な時代になった。だが、それが正しいとも限らない。そんな時代だからこそ、専門家の知見に基づき、病気のメカニズムや予防法を視聴者にわかりやすく伝え、食事や運動、睡眠など、日々の暮らしのなかで実践できる知恵を届けてくれる番組は貴重だ。

今回は、2週連続特別企画として、「夏の脳梗塞 心筋梗塞から生き延びる!!」というテーマ。“生き延びる!!”というのがなんとも切実というか、猛暑、酷暑続きの今年にぴったりの話題で、前編のこの日は「夏に起こる脳梗塞」だった。

脳梗塞というと冬場に多い印象を抱きがちだが、実は夏も油断はできない。発汗による脱水で血液が濃くなり、発症リスクが高まるという。とくに夏の脳梗塞は熱中症と症状が似ており、発症に気づきにくい場合があるそうだ。

番組では、体験談を入り口に、専門医が発症のメカニズムを解説。証言に基づく再現ドラマを交え、熱中症と脳梗塞を見分けるポイントや対処法などをわかりやすく伝えていた。

詳細は番組を見てもらうとして、なかでも覚えておきたいのが、症状を見分けるチェック法「BEFAST」。バランス・目・顔・腕・言葉・時間、それぞれの頭文字をとったものだ。とくに夏に効くのがE(Eyes)の目。片目だけが見えなくなる、二重に見える。熱中症では出ない症状だから、見分ける決め手になるという。スタジオでは、メインMCの石丸幹二とサブMCの坂下千里子、ゲストの勝村政信が、口を横に広げて「いきじびき、いきじびき」と繰り返していた。S(Speech)、言葉のチェックである。

もうひとつ。番組が伝えていたのは、「症状が消えたから安心」という思い込みの危うさだ。脳梗塞と同じ症状が数分から24時間ほどで消えてしまう「一過性脳虚血発作(TIA)」について。番組に登場した男性は、突然、左目に映る空が紫色に変わり、やがて何も見えなくなった。が、その異変はわずか5分で消えた。安心したのもつかの間、それから24時間後に脳梗塞を発症。TIAを経験した人の約5%が90日以内に脳梗塞に至るという。症状が治まったことは、危険が去った合図ではない。むしろ体が発した最後の警告であり、命を守るための貴重な猶予なのである。

患者の体験談で関心を引き、専門医が医学的な根拠を示し、家庭で実践できる予防策へとつなげる。知識を一方的に羅列するのではなく、「きょうから何をすればいいのか」がわかる構成は、この番組ならではの強みだ。

次週、後編は「心筋梗塞」。同じく経験談から生死を分けたポイントを学ぶ。

とびきり豪華なゲストが登場するわけでも、とりわけ派手な演出で目を引くわけでもない。むしろ、いつ見ても変わらぬ調子で淡々と、健康と向き合う。その変わらなさこそが、この番組の価値であり、長年にわたって視聴者との信頼を育んできた理由なのだろう。

言うなれば、視聴者の健康に寄り添うテレビの中の“かかりつけ医”のような存在だ。毎週30分、いたずらに病気を恐れさせるのではなく、正しい知識を伝え、食事や睡眠、運動など、日々の暮らしを少しだけ見直すきっかけをつくる。その積み重ねは、誰かの健康を守り、ときには命を救うことにもつながる。

思えば、私も半年ほど前、突然右の顔面が麻痺し、歯磨きもままならなかった。なんだかんだと3週間程で治ったが、以来、毎朝、鏡の前で「あいうえお」とやるのが日課だ。番組を見て、これにさっそく「いきじびき」も加えることにした。「健康のためなら死んでもいい」などという笑えない冗談をどこかで聞いたような気がするが、まさにそんな心境だ。

情報があふれる時代だからこそ、本当に価値を持つのは、情報の量ではなく、その確かさだ。『ゲンキの時間』は、専門家の知見をわかりやすく、誠実に、そして継続して届けてきた。その積み重ねこそが視聴者に長く支持されてきた理由であり、テレビというメディアの原点ではないかと思う。

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プロフィール

桧山珠美

桧山珠美(ひやま たまみ)
HBF MAGAZINEでは、気になるテレビ番組を独自の視点で読み解く連載『日日是てれび日和』を執筆中。
編集プロダクション、出版社勤務を経て、フリーライターに。
新聞、週刊誌、WEBなどにテレビコラムを執筆。
日刊ゲンダイ「桧山珠美 あれもこれも言わせて」、読売新聞夕刊「エンタ月評」など。


“HBF CROSS”は、メディアに関わる人も、支える人も、楽しむ人も訪れる場所。放送や配信の現場、制作者のまなざし、未来のメディア文化へのヒントまで──コラム、インタビュー、レポートを通じて、さまざまな視点からメディアの「今」と「これから」に向き合います。

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