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漫才のネタを、ドラマで丸ごと堪能する贅沢|『ネタジョ』

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【第42回】『ネタジョ』(MBSほか・2026年4月30日~ 毎週木曜深夜1時29分)


今回、取り上げる『ネタジョ』は、MBS「ドラマフィル」枠で放送中の連続ドラマだ。4月30日にスタートし、この原稿を書いている時点では第4話までを放送。なぜかTBSではネットされていないが、TVerやNetflixで視聴できる。

まず、タイトルの『ネタジョ』だが、これは「漫才の構造や手法まで踏み込んで分析する熱狂的な女性ファン」を指す造語。歴史好き女子を「レキジョ」、相撲好き女子を「スージョ」と呼ぶように、“ネタ好き女子”だから『ネタジョ』というわけだ。

主人公・影山幸子は、劇場でメモ帳片手に漫才を鑑賞し、そのネタを脳内でロジカルに解剖。ときにはその生き方に影響を与えてしまう。そんな構造がこのドラマの面白さになっている。

幼い頃から「オール阪神・巨人」の漫才テープを聴いて育った、自他共に認める“ネタジョ”の幸子を演じるのは辻凪子。意外にもこれがドラマ初主演だ。大阪出身、BK朝ドラではおなじみの存在。最近では、橋本環奈主演の『おむすび』で、彼女と同じ病院で働く「NST」(栄養サポートチーム)のメンバー、協調性ゼロの薬剤師・篠宮朱里を好演していた。

ともすればただの変わり者になりかねない役柄を、辻は声のトーンや発声、特にアニメ『ちびまる子ちゃん』の野口さんのような「くっくっくっ」という特徴ある笑い方で、印象づけ、愛すべきキャラクターに作り上げ、Xで「篠宮さん」がトレンド入りしたほど。

今回の幸子も『おむすび』の篠宮さんに負けないくらいの変わり者。まさに辻の真骨頂だ。漫才漬けの生活がしたい、と正社員の仕事を辞め、行きつけの喫茶店「フラ」でアルバイトしながら、お笑いに人生を捧げる。推し活ばやりの昨今、そんな彼女に共感する人も多いだろう。

東京に住みながら、見たい漫才があればバイトを早引きし、新幹線で大阪の「なんばグランド花月」にまで駆けつける。残念なのは、漫才のシーンと客席にいる幸子のシーンが明らかに別撮りなこと。ここはなんとかして欲しかった。目の前で行われている漫才を見たリアルな幸子の反応を見てみたかった。

行きつけの喫茶店での漫才通のマスターとのやりとりも楽しい。幸子の分析に補足したり、漫才の歴史、昔の芸人のエピソードを話すマスター。最後に、「ま、諸説あるけどな」というのがお約束だ。

演じるのは板尾創路。すっかり俳優業としての印象が強いが、「130R」というお笑いコンビのボケ担当。漫才通で、関西なまりだが、なぜか東京で喫茶店のマスターをしているという謎が多いマスター。久しぶりに、相方・ほんこんと漫才をやるなどというサプライズがあるかも、と密かに期待している。

幸子と父のぎくしゃくとした関係が修復することはあるのか、や、幼い頃に幸子を置いて家を出た母とは再会できるのか、などストーリーも気になるが、なんといっても、このドラマの最大の特徴は、実在の漫才コンビが本人役として登場し、劇場でネタを披露するところにある。しかも、かなりの長尺で。ドラマの中で、漫才を丸ごと堪能できるのは、なかなか贅沢だ。

1話に1組ずつ登場。これまでに、NONSTYLE、ミルクボーイ、バッテリィズ、ザ・ぼんちが登場した。今後、エバース、金属バット、チュートリアル、オール阪神・巨人が出てくるというから、楽しみはつきない。

漫才のネタを分析するなど野暮だと思っていたが、たとえば、ミルクボーイのネタを「ボレロ」に例えたり、バッテリィズのネタに「アホは最速で真理に近づける」という幸子の視点が面白い。さらに、マスターの「昔、上岡龍太郎さんが言うてはった。アホで漫才はでけへん」という言葉にもいちいち唸らされる。“アホ”といえば坂田利夫。幸子が「アホの坂田」の歩き方で去っていく場面にも思わずクスッとした。こういう小ネタのちりばめ方に、作り手の“お笑い愛”が滲む。

毎回、冒頭で「世は空前の漫才ブーム」というナレーションが入る。空前のブームかどうかはさておき、こんな企画がきちんとドラマとして成立したこと自体、なんとも喜ばしい。テレビには芸人が溢れているのに、肝心の“ネタ”を見る機会は、賞レース以外では驚くほど少ない。特にベテランになればなるほどその傾向は強い。

サンドウィッチマンや博多華丸・大吉や千鳥の漫才をもっとみたい。『ネタジョ』が呼び水となって、ネタ番組が再び増えていく。そんな未来を少し期待している。

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プロフィール

桧山珠美

桧山珠美(ひやま たまみ)
HBF MAGAZINEでは、気になるテレビ番組を独自の視点で読み解く連載『日日是てれび日和』を執筆中。
編集プロダクション、出版社勤務を経て、フリーライターに。
新聞、週刊誌、WEBなどにテレビコラムを執筆。
日刊ゲンダイ「桧山珠美 あれもこれも言わせて」、読売新聞夕刊「エンタ月評」など。


“HBF CROSS”は、メディアに関わる人も、支える人も、楽しむ人も訪れる場所。放送や配信の現場、制作者のまなざし、未来のメディア文化へのヒントまで──コラム、インタビュー、レポートを通じて、さまざまな視点からメディアの「今」と「これから」に向き合います。

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