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「テレビ屋、本気出せ」太田光とクドカンのテレビ愛|『太田光のテレビの向こうで』

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【第39回】『太田光のテレビの向こうで』(BSフジ・2026年5月3日放送)

不定期放送ながら、毎回、楽しみにしている番組がある。BSフジ『太田光のテレビの向こうで』だ。通販番組や再放送ドラマが多くを占める印象のBSだが、ときおり、地上波ではなかなかお目にかかれないような珠玉の番組がひっそりと紛れ込んでいて、油断しているととんでもなく面白い1本を見逃してしまう。この番組もまさにそんな“掘り出し物”のひとつだ。

爆笑問題・太田光がゲストとじっくり語り合う番組で、第8回のゲストは脚本家・宮藤官九郎。2人とも日本大学芸術学部出身。同時代を過ごし、社会の空気や違和感を、エンターテイメントへと昇華してきた2人だけに、その対話は実に刺激的で、言葉の応酬に引き込まれていた。

たとえば、クドカンが脚本を手掛け、社会現象にもなった『不適切にもほどがある!』(TBSテレビ)の話。もともとは別の話を考えていたものの、打ち合わせをするなかで、世代間の感覚の違いやずれ、時代に漂う息苦しさについて話しているうちに、そっちのほうが面白い、となり、あのような作品になったという。最初から明確に狙っていたわけではなかったというのが意外でもあり、その柔軟さこそがいかにもクドカンらしい。

また、ミュージカル仕立てになった理由についても、「正論を声高に主張するのが苦手だから、歌と踊りにした」と言い、そこから昔のクレイジーキャッツの映画で、植木等が突然歌い出しても違和感がなかったという話題に。話が次々と転がっていきながら、本質に辿り着く感じが実に心地いい。

最近のドラマは、なかなか時事ネタを入れにくいという話題では、時事ネタを扱う爆笑問題の漫才について、「昔なら1か月は同じネタでいけたけど、今は2週間でもう古いと言われる」と太田。だけど、「船場吉兆(ささやき女将)の話は永遠」と口を揃えて言ったのには笑った。

2人とも、ビートたけしのファンだったという共通点も。『オールナイトニッポン』のヘビーリスナーで、いつかたけし軍団に入りたいと思っていたものの、例のFRIDAY事件で軍団に入るのは断念したとクドカン。また、たけしも凄いけど、その横で笑っている放送作家・高田文夫こそ凄いのではないかと思い、高田と同じ日芸の放送学科を受験し、進学したというエピソードも披露。

そこで、太田が、「俺なんか裏口(入学)だって言われて裁判までやったんだから」といつもの“日芸裏口ネタ”を挟みつつ、クドカンと高田文夫は同じ系統だと分析。その理由として、クドカンが高田文夫に目をつけたように、高田もまたクレイジーキャッツを見ながら、植木等も面白いけど、実はこの青島幸男が凄いんじゃないかと、放送作家に目をつけたと言い、なるほどなあと感心した。

常に王道が好きで、お笑いなら萩本欽一からビートたけし、歌ならサザンオールスターズ、という太田に対して、「王道が好きなのに、どうして、漫才で出てきて『助けてくれ~』ってやるんですか」と、ツッコミを入れたクドカン。自身はというと、「なるべく王道に行かないよう行かないようしていた」と言うが、それが大河ドラマまで手掛けるまさに王道の脚本家になったのだから人生わからない。

2人ともバカリズムの才能を高く評価していて、クドカンが「バカリズムのように才能ある芸人が脚本を書き出したらどうしよう」と脅威に感じているというのも意外というか……。

そしてなによりも心を打たれたのは、終盤の太田の発言だ。

「なんで誰も本気出さないの、テレビ屋は。テレビオワコンってこんだけバカにされて、なんで誰も怒んないんだよ。俺は思ってるわけですよ。なんかこうちょっともう諦めてる、テレビマンが……って感じがする。自分もテレビやってるなかで」と、熱く語る太田。

「だから僕はもう一度、宮藤さんにお願いしたいのは、バラエティの作家として……コント番組。僕、本気なんですよ。すぐそうやって笑ってごまかすじゃないですか」と直訴。

その後、エンディングでクドカンも、「一緒になんか作れたらいいですね。テレビでやっていいのかこれ、みたいなのをあえてテレビでやる、みたいな」と前向き発言。

太田も「いつまでもオワコンとかオールドメディアって言われてるよね~、って話で留まるんじゃなくて、やろうよってなれば」。誰よりもテレビの行く末を考えているのは太田なのでは。そんなテレビ愛を感じた。

クドカンと太田がタッグを組んだコント番組、実現を熱望する。

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プロフィール

桧山珠美

桧山珠美(ひやま たまみ)
HBF MAGAZINEでは、気になるテレビ番組を独自の視点で読み解く連載『日日是てれび日和』を執筆中。
編集プロダクション、出版社勤務を経て、フリーライターに。
新聞、週刊誌、WEBなどにテレビコラムを執筆。
日刊ゲンダイ「桧山珠美 あれもこれも言わせて」、読売新聞夕刊「エンタ月評」など。


“HBF CROSS”は、メディアに関わる人も、支える人も、楽しむ人も訪れる場所。放送や配信の現場、制作者のまなざし、未来のメディア文化へのヒントまで──コラム、インタビュー、レポートを通じて、さまざまな視点からメディアの「今」と「これから」に向き合います。

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