第50回

ドキュメンタリー部門

最優秀賞

受賞者

NHK福岡放送局

作品名

ETV特集 「膨張と忘却~理の人が見た原子力政策~」

概要

長年国の原子力政策に関わった研究者・吉岡斉氏が残した数万点の未公開資料「吉岡文書」が見つかった。科学技術史が専門で九州大学の副学長を務めた吉岡氏は、1990年代から国の審議会の委員などを務め、高速増殖炉もんじゅや国策・核燃料サイクルなどをめぐる政策議論に参加してきた。「吉岡文書」には、そうした国の委員会の内部資料や議論の過程を記したメモ、メールや手帳などが含まれている。「熟議」や「利害を超えて議論を尽くすこと」「利権にとらわれない合理的議論」を求め続けた吉岡氏は国の政策決定の議論で何を訴え、何を見たのか。番組では、見つかった「吉岡文書」を詳細に紐解き、今回独自に入手した内部文書や関係者の証言などをもとに国の政策決定の舞台裏に迫る。

選考理由

長年、国の原子力政策に関わった研究者・吉岡斉氏が残した「吉岡文書」と、取材班が独自に入手した内部文書や証言などをもとに、日本の原子力政策の舞台裏に迫った傑作。 原子力政策は、すでに利権構造が出来上がっているために、「とにかく推進ありき」と、あらかじめ結論づけられている。そのため、会議を空洞化、かつブラックボックス化しようとする政府の無責任な姿がある。しかも重大事故が起きようとも、いったん決めたことは変えられない硬直性。これら合理的思考の欠如は日本の病理と言ってもよい。今も無益な会議によって、重要な政策決定を勝手に決めている、という問題提起は重要である。

受賞の言葉

「当たり前の事を当たり前に言っているだけ」。それが、吉岡斉さんの口癖だったそうです。原子力政策が“膨張”し、後に安全神話と言われることになる過信状態の日本で「利害を超えて、議論を尽くす」当たり前が、いかに困難な事だったのか。取材の過程で思い知らされる日々でした。それでも、信念を貫いた吉岡さんが原発事故後、私たちに託したのは「被災した人々を“忘却”せず、原子力政策に関心を寄せ監視して欲しい」という願いでした。受賞をきっかけに、より多くの方に、その吉岡さんの生き様と願いが伝わればと思います。最後に、膨大な資料を遺してくださった吉岡さんと取材に応じて頂いた皆さまに深く感謝申し上げます。

NHK福岡放送局 石濱陵

スタッフ

ディレクター 石濱陵
撮影 野口真郷
照明 馬渡規夫(VOZ)
音声 小山道夫(シバテック)
編集 草場一友(NO−NAME)
語り 伊東敏恵
音響効果 定本正治
CG制作 富澤央義(NHKアート)
制作統括 鈴木伸元、東野真

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