第46回

ドキュメンタリー部門

最優秀賞

受賞者

日本テレビ放送網

作品名

NNNドキュメント’19「なかったことに、したかった。未成年の性被害①」「なかったことに、できない。性被害②回復への道は」

概要

2019年、性犯罪裁判で無罪判決が相次いだ。理由は被害者が抵抗しなかったからだという。本当にそうか? 我々は被害を訴える様々な方々を取材した。性被害の8割は顔見知りからで、被害者は体が凍り付く。被害者の4割は未成年で、証言能力が低いと判断される。被害者は周囲から「あなたにも落ち度がある、相手にも家族がある」と責められる。問題の本質は勇気を出して告発した被害者の思いをくみ取れない私たちにあるのではないか。罰せられる事もない加害者は実態をよく知るべきであり、変わるべきは私たち社会ではないか。
そして、性犯罪の被害者は、体の傷だけではなく、精神も傷つく。自傷行為、自殺願望、性の回避や依存。他人との人間関係が構築できないなど、人間の発達に大きな影を落とす。そして心と体の傷は、長い時間が経っても癒えることはなく、むしろじわじわと被害者を蝕んでいく。そんな被害者は、どうやって回復していくのか。2週連続で被害の実態を訴え回復への手がかりを探った。

選考理由

2019年、性暴力への判決に批判が広がった。当時19歳の娘への性的暴行の罪に問われた父親に、無罪が言い渡されたのだ。無罪判決の理由は、「被害者が抵抗できない心理状態」を意味する「抗拒不能」だった。被害者の4割は未成年で、その8割は顔見知りからの犯行だという。番組では、「抵抗できない」立場にある者に加えられた性被害と、その実態。さらに、被害者の生涯負う傷を描いている。被害を告げることさえできなかった被害者の苦しみと、救うことのできなかった法律の不備を問う、これまでになかった切り口の番組である。

受賞の言葉

性被害にあった子ども達が被害を「なかったこと」にすると知ったのは、今から10年ほど前。生きづらさに関する取材の中で、性的に傷つきながら「逃げない自分が悪い」「慣れているし平気」と被害を否定する女の子達と出会いました。言葉と裏腹に、彼女達は自分を「汚い」と語り、自傷行為や自殺未遂を繰り返していました。その後性暴力について学ぶ中で、そうした言動こそが被害の影響だと知りました。
今回証言してくださったのは未成年期に被害を受け、今も痛みを抱え続けている20代から40代の女性達。「社会がまだ理解できていない問題を、子ども達が抱え込む現実を変えたい」と、語りづらい葛藤を言葉にしてくださった方々に深く感謝致します。
ALIVE 植田恵子

スタッフ、チーム

ディレクター 植田恵子(ALIVE)
ナレーター 國井千聖(ビーボ)
撮影 門脇妙子(フリー)
編集 松田美子(フリー)
プロデューサー 福田晴雄(ALIVE)、古市礼子(ALIVE)、今村忠
チーフプロデューサー 有田泰紀

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