第48回

ドキュメンタリー部門

最優秀賞

受賞者

NHK名古屋放送局

作品名

目撃!にっぽん 妹が生まれなかったかもしれない世界 ~出生前診断と向き合って~ 

概要

私(ディレクター)には、18歳のダウン症の妹がいる。彼女は、私たち家族にとって大切な存在だ。しかし、いま、妹が生まれてこなかったかもしれない世界が広がっている―
お腹の赤ちゃんの状態を調べる、出生前診断。特に、妊婦の血液でお腹の赤ちゃんの障害を調べるNIPT(新型出生前検査)が手軽さを背景に広がっている。そして、検査で障害の可能性が分かり、確定した人の9割が中絶をしているという。
私は、両親に出生前診断について尋ねたとき、衝撃的な言葉を聞いた。
「そのときの自分だったら、検査を受けて陽性だったら妹を生めなかったかもしれない」。
命を選ぶということは、どういうことなのか。私は、実際に出生前診断を受け、決断を迫られた人たちに話を聞くことにした。取材から見えてきたのは、家族それぞれの実情、そして情報がないままに選択を迫られる現実だ。今なにが必要なのか、当事者との対話から考えるセルフドキュメンタリー。

選考理由

最近は、NIPT(新型出生前検査)、つまり胎児の染色体異常の可能性を調べる検査をする妊婦が多い。高齢出産が増えてニーズが高まる中、学会の認定を受けていない美容外科や皮膚科も参入しているという現実がある。優生思想に通じる、障害者差別に繋がる、という声がある一方で、産むべきか否かと選択を迫られる当の妊婦の悩みは深い。
この作品は、ダウン症の妹を持つ若い女性ディレクターの切実さと、妹への深い愛が伝わってくる。小品ながら、重要な問題提起のなされた優れた作品であることが評価された。

受賞の言葉

NIPT(新型出生前検査)が、社会的な議論が十分にされずにビジネスとして広がる現状に違和感を抱き、取材を始めました。両親や、検査を受け決断を迫られた人たちの話は、言葉のひとつひとつが重く、賛否だけで語ることはできない現実を知りました。障害がわかった赤ちゃんの中絶を選んだ方の「自分の選択が、障害のある人たちが生きづらい世の中につながってほしくない」という言葉が印象に残っています。命の選択に繋がるこの技術を社会でどう使い、その先にどんな世界の形を描くのか考えていくことが必要だと感じました。普段、気軽には話しづらいテーマだと思うので、この番組が、家族やパートナー、友人との議論のきっかけになれば幸いです。
NHK 植村優香

スタッフ

撮影・ディレクター 植村優香
編集 樋口俊明(エール)
撮影 田嶋文雄(NHKテクノロジーズ)
音響効果 栃木康幸
音声 藤原孝智(CRAZY TV)
映像技術 鮫島要(CRAZY TV)
プロデューサー 水谷宣道
制作統括 石田望

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