第51回

ドキュメンタリー部門

奨励賞

受賞者

NHK大阪放送局

作品名

NHKスペシャル 封じられた“第四の被曝” ―なぜ夫は死んだのか―

概要

私たちの社会が、その存在すら忘却してきた被ばく事件がある。1958年、アメリカの水爆実験により、海上保安庁の船「拓洋」と「さつま」の乗員113名が放射線を浴びていたのだ。1年後、乗員の永野博吉さんは、急性骨髄性白血病でこの世を去った。国は永野さんの被ばく線量は「微量」で、白血病と「直接関連づけることは困難」と結論づけ、妻の澄子さんは事件の実態を知らされずに、その後の人生を過ごしてきた。なぜ夫は死んだのかー。1945年、広島・長崎への原爆投下。1954年のビキニ事件。それらに次ぐ“第四の被曝”。その実態に迫る。

選考理由

広島、長崎、福竜丸に次ぐ第四の被曝とされる、海上保安庁の船「拓洋」と「さつま」。
しかし、この事件は国民には知らされなかった。背景には、日米関係の悪化を双方が怖れたという事実がある。個人は国家に優先されない、という強烈なメッセージが籠められていることと、スクープ力が高く評価された。

受賞の言葉

「夫の博吉は放射能で亡くなったんです、それをまだ忘れないでいる人がいたんですね」。
これは、妻・澄子さんに初めてお会いできた時、最初に告げられた一言です。その言葉のあまりの重みと、ご遺族にしか発することができないリアリティに、私はただただ身を震わせるばかりでした。国からも、科学者からも、メディアからも、65年間見過ごされ、“なかったこと”にされた夫の被曝と死。澄子さんは、国の役人から「日本だけの問題でなくアメリカも絡んでいる」と口止めされ、家族にすら何も語れずに生きてきました。取材中に亡くなられた澄子さんの証言を、私たちに託された遺言と受け止め、できるかぎりの取材を継続していきたいと考えています。
NHK大阪放送局 ディレクター 横里征二郎

スタッフ

語り 松尾スズキ
ディレクター 横里征二郎
取材 山下哲平、山下達也
撮影 鈴木裕高
音声 吉川学
編集 林洋三
音響効果 高石真美子
コーディネーター 柳原緑
リサーチャー ウィンチ啓子、五十嵐哲郎
制作統括 高比良健吾、宮原修平、三村忠史

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