第51回
ドキュメンタリー部門
優秀賞
受賞者
NHK札幌放送局、NHK旭川放送局
作品名
NHKスペシャル 海獣のいる海 あるトド撃ちの生涯
概要
北海道・礼文島の〝伝説のトド撃ち〟俵静夫・88歳。厳寒の海に小舟で向かい、体重1トンのトドを半世紀以上、しとめ続けてきた。一発で的確に獲物をしとめる技に並ぶ者は、今後現れないとさえ言われている。昔、島民にとって、貴重なタンパク源だったトド。しかし今、猟の目的は深刻な漁業被害を減らすための駆除となった。漁師でもある俵は自戒をこめ、こう語る。「人間が魚を取りすぎたからだ」と。人間が生きるために、トドの命を奪う・・・。その業と向き合い続けてきた俵も、自らの命の終わりを迎えようとしていた。命を奪い、命と向き合う日々の記録。
選考理由
ドローンによる、北の島と海の映像が美しい。魚を奪うトドを殺さざるを得ない漁師たちの厳しい暮らしが、丹念に描かれる。トド撃ち名人と言われた老人の生涯を追った本作は、短編映画と言ってもよい物語性に満ちていて、見る人の心を打つ。
受賞の言葉
「俺の終わりが撮りたいんだな-」初めて取材に伺った際に、俵さんが仰った言葉が強く印象に残っています。50年以上続けてきたトド猟を終えるという意味でお話されたのかもしれませんが、私には俵さんの人生そのものの最期を、覚悟をもって指している言葉に聞こえました。俵さんと共に過ごした時間は短くも、ヒリヒリとした、とても緊張感のあるものでした。その中で、命との向き合い方や自然との距離感、そして生き様に大きな影響を受けました。人間が生きる上で生じる犠牲に対して、現実との折り合いを付けながら自らのあり方を自問する姿から、番組を見た人が何かを感じ取ってもらえたのならば、制作陣としてとてもうれしく思います。
NHK札幌放送局 長谷川悠
スタッフ
語り 田中泯
ディレクター 長谷川悠、班学人
取材 奈須由樹
撮影 上杉篤也(クロステレビジョン)、那珂英一(北方空撮)、那珂義也(北方空撮)
音声 飯塚正治、野澤明人(クロステレビジョン)、古野智康(クロステレビジョン)
映像技術 徳久大郎
映像デザイン 長谷川皓平
音響効果 吉川陽章
編集 持田裕和(NHKグローバルメディアサービス)
制作統括 旗手啓介、重藤里彰
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