第51回

ドキュメンタリー部門

奨励賞

受賞者

NHK

作品名

ETV特集「“法”の下の沈黙 ~優生保護法の罪 1948-2024~」

概要

終戦後から半世紀にわたり、障害者への強制不妊手術を認めていた旧優生保護法。2024年7月に最高裁判所で、成立時から一貫して憲法違反だったという判決が下された。その被害者は約25,000人。2018年、被害者の1人が国の責任を問う訴訟を提起、原告は6年で39人に広がった。しかし国を訴えたのは、被害者のうちごく一部。多くの人が、今も傷みを胸に秘めたままだ。その沈黙の理由とは?そして、社会はなぜ半世紀もの間、強制不妊手術を見過ごしてきたのか。被害者の側と社会の側の両面から、優生保護法がもたらした“沈黙”の理由を探っていく。

選考理由

障害者や犯罪者を差別し、労働力の確保のために国家が生殖を管理しようとする旧優生保護法について、1948年の成り立ちから現在に至るまでを、歴史的に検証している。各自治体に付されたノルマによって、本人の意志に関係なく断種・手術された人々の悲しみとやり場のない怒りを癒すことは誰にもできない。人生に深く関わる生殖の問題だからこそ、被害者は口を噤まざるを得ない。人権侵害という観点から、国家の責任を追及する傑作である。

受賞の言葉

被害をうけた飯塚淳子さんに初めてお会いしたのは2016年。彼女が必死に声をあげる姿に引っ張られるように、被害の実相に迫りたいと取材をしてきました。番組では “法”の下で手術が認められたために、社会が「当たり前」と疑問視せず、被害者も沈黙を強いられ、問題が表面化しにくくなった構造に注目しました。25,000人の被害者のうち原告は39人。未だ沈黙を続ける人の中には、「障害のある自分が悪いのだから」と支援を断る人もいます。岩盤のように社会が動かない中、事態を変えたのは、沈黙を破った当事者たちの勇気。映像の力で、彼らの生き様や尊厳が少しでも伝わり、問題を考えるきっかけになることを願っています。
NHK 鈴木洋介

スタッフ

制作統括 渡辺由裕、村井晶子
プロデューサー 海老沢真
ディレクター 鈴木洋介、小黒陽平、大麻俊樹
編集 渦波亜朱佳(ベリー)
撮影 鈴木裕高(NHKテクノロジーズ)、原田人
音声 吉川学(シバテック)
音響効果 日下英介
語り 上田早苗
出演 千葉広和、渡邊數美、柴田隆(仮名)、小島喜久夫、大山勲、尾上敬子、尾上一孝、飯塚淳子(仮名)

 

 

 

 

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