放送文化基金賞
「AIは人間の魅力を引き出すもの」-AI実験バラエティ シンギュラ
第52回放送文化基金賞 エンターテインメント部門 優秀賞
対談 飛田将斗×丹羽美之

人間とAIの相乗効果で新たな笑いを創り出した『AI実験バラエティ シンギュラ』(フジテレビジョン)が、第52回放送文化基金賞エンターテインメント部門優秀賞を受賞しました。企画・演出を手がけた飛田将斗さんに、丹羽美之審査員長が、AIを取り入れた制作過程から、これからのテレビの可能性までお話を伺いました。
丹羽 第52回放送文化基金賞エンターテインメント部門優秀賞受賞おめでとうございます。
飛田 ありがとうございます。初めての企画・演出の番組が受賞できたことが信じられず、驚きでした。
丹羽 周囲の反応はいかがでしたか?
飛田 いろんな方から「おめでとう!」と言っていただきました。特に番組スタッフの皆さんから言ってもらえたのは嬉しいですし、賞を頂いたことで少しでも恩返しが出来たことが何より嬉しいです。
丹羽 AIを使った作品の応募も少しずつ増えてきています。その中でも、『AI実験バラエティ シンギュラ』は、AIの使いこなし方が一段抜けていました。「笑いとAIの活用を高い水準で融合させている」と審査委員一同とても評価が高かったです。
飛田 嬉しいです。

フジテレビに入りたかった!
丹羽 この番組はどういうきっかけで生まれたのですか?
飛田 大学時代にデータサイエンス、ディープラーニング、機械学習、今でいう人工知能を勉強していましたが、まずは、第一にフジテレビに入りたかったんですよ!小学生の頃から。
丹羽 小学生の頃から!?
飛田 そうなんです。フジテレビに入ったときに役立つことは何かないかなと考えていました。大学1年生のときに、当時テレビ朝日の芦田太郎さんの講演会に行ったら、「他のテレビ局員が持っていないような知識を持っておくといいよ。」とおっしゃっていて、丁度そのタイミングで、同級生からAIを勉強しないか、と声を掛けられたんです。このスキルを持っていたら、フジテレビでいつか番組が作れそうだなと思ったので、勉強を始めました。
丹羽 大学生の頃からAIを学んで、フジに入ったら、そういう番組を作りたいという思いが最初からあったということですか!そして初めて作った番組で受賞。それ、少しドラマチックにストーリーを作ってませんか(笑)。
飛田 全く作ってないんですよ!(笑)。
丹羽 なんでそんなにフジテレビが好きだったのですか?
飛田 小学生の頃に「お台場冒険王」に連れて行ってもらったりもしましたし、当時見ていた番組が全部フジテレビでした。『クイズ!ヘキサゴンII』『はねるのトびら』『すべらない話』『IPPONグランプリ』『VS嵐』『SMAP×SMAP』など、好きな番組がすべてフジテレビで、自然とフジテレビに入りたいと思っていました。
丹羽 2000年代のフジテレビがすごく勢いのあった時代を体験していたんですね。

人間の知能がAIの知能を越えるところを見て欲しい
丹羽 『シンギュラ』を作るにあたって、飛田さんは「AIを道具として使う」とおっしゃっていますね。それはどういう意味ですか?
飛田 今、色んなAI企画の番組が放送されるようになってきていますが、どの番組もAIは「こんなことも出来ます」「あんなことも出来ます」という紹介のブロックが多いんですよね。でも本当は、AIがすごいのではなくて、あくまでAIは道具で、それによって"人間の魅力を引き出すもの″と大学時代からずっと思っています。人間と対立する存在ではなく、あくまで人間を手助けする道具という印象です。
丹羽 確かに、人間とAIを競争させたり、人間がやってきたことをAIに置き換えて代替させるような企画が多いですね。この番組は、AIを遊び道具として使い、人間の魅力や、まだ見ぬ才能を引き出すというアプローチがすごく面白かったです。
飛田 ありがとうございます。
丹羽 飛田さんが若い頃からAIに触れて、学んで、日常的にもAIを使いこなしている、AIネイティブ世代だからこその発想なのだと思います。『シンギュラ』というタイトルに込めた意味は何ですか?
飛田 「シンギュラリティ」はAIが人間の知能を越える転換点を指しますが、シンギュラリティと言いながら、実は人間の知能がAIの知能を越えるところを見て欲しい、という裏返しの理論でタイトルをつけました。“AIってすごい”という番組と見せかけて、人間のすごさが見える、というようなちょっとした遊び心です。
MC若林さんとの不思議なご縁
丹羽 総合MCにオードリーの若林さんを起用した意図は何ですか?
飛田 二つ理由があります。ひとつは、AIネイティブの目線で指摘が欲しかったんです。若林さんは日常的にすごくAIを使用している方で、例えば、車でドライブしている時もGeminiをONにして、会話しながらドライブしていたり、悩み事を相談したりしているんです。
二つ目は、僕が人生で一番最初に会った芸能人がオードリーさんなんですよ。小学生の頃に地元の大学の文化祭に来ていました。その時からずっと好きで、いつか一緒に仕事がしたいと思っていました。この二つがちょうど重なったのでオファーしました。
丹羽 全部きれいに話が出来ているよね(笑)。
飛田 そうなんですよ!(笑)。不思議なご縁を感じました。
丹羽 AIを普段から使いこなしているからこそ出来るコメント。そして、もちろん笑いについても超一流。両方をしっかり理解したうえで番組の方向性を示してくれる導き役として、若林さんの存在は大きかったと思います。
新しいものと昔ながらのものをうまく融合できたら
丹羽 「脳内大喜利」がこの番組の柱だと思います。どういう発想で生まれたのですか?
飛田 企画を立てている当時、SNSでは、ひとことコメントをつけたAI生成画像の投稿が普通にありました。これ大喜利だな、と思いながら見ていました。SNSでは流行りつつあるのに、テレビでは一切見ないというもどかしさがあったので、作家さんとの打ち合わせの中でそのタネが企画になっていったという感じです。
丹羽 確かに、生成AIが出始めた頃に、面白い画像を作って見せ合うとういうようなことをしていましたね。それをテレビで馴染みのある大喜利という形式に落とし込んだところが上手いなと思いました。
飛田 若者にも受けることをやりたいという思いと、画像でパッと出た方が上の世代の方たちにも分かりやすく伝わるのかなという思いがありました。新しいものと昔ながらの馴染みのあるものをうまく融合できたらいいなという思いで作りました。
丹羽 AI活用で失敗しがちなのは、新しい技術を投入するから、フォーマットも新しくしないといけない、と勘違いしてしまうことだと思います。結局何をやっているのか分からなくなってしまう。逆に、テレビで馴染みのある安定したフォーマットにAIを組み合わせたところが、ある意味発明だったと思います。
飛田 最初から新しいものをやると、そもそもAIが新しいので、受け入れられないと思います。いつか、もっと番組がなじんできたら新しいものに挑戦したいです。

リアルタイムで著作権をチェックする
丹羽 大喜利企画でいうと、『IPPONグランプリ』がフジテレビにはありますよね。今回のAIを使った「脳内大喜利」とではスタジオの制作プロセスとして違うところがありますか?
飛田 大きく分けると二つあります。一つ目は、何のシステムを導入するかというところ。例えば、芸人さんの中でパソコン入力に慣れていない方がいらっしゃったり、英語のほうが生成画像の精度は高いけど、日本語で、しかも簡単に打ち込めるようなUI、UXになっていて、且つ、生成までの時間が短いというような理想のソフトを追い求めるという、一番最初のAIソフト選定の作業が他の大喜利企画にはないところです。
二つ目は、出来た画像に対する著作権の確認。リアルタイムで生成された画像をサブといわれる副調整室でチェックしていて、万が一著作権を侵害するものが出た場合には、フロアに指示を出して、「こういうプロンプトはやめてください」という説明を入れていました。そこも普通の大喜利番組とは違う作り方だと思います。
丹羽 収録時に同時並行でチェックを入れるのは、どうやっているのですか?
飛田 生成された画像がリアルタイムでプロンプトと一緒に副調整室に届くようにしています。そこで、プロンプトに固有名詞が含まれていないか、仕上がった画像に対して、グーグルでの類似検索を行い、簡易的ではありますが、絶対NGではないか、ということをリアルタイムでチェックしています。もちろん、その後、放送までに最終チェックもしています。
丹羽 著作権侵害という点にはすごく気を付けましたか?
飛田 そうですね。例えば、サッカー関連の生成画像ですと、アディダスと打ち込んでないのに、選手のユニフォームにアディダスのロゴが入ったものが生成されてしまう可能性もあります。そういうところも細かく細かくチェックしました。他にも、ソフトとしてそもそも使用していいのか、生成したものの権利は誰に渡るのか、生成AIのソフトの会社なのか、生成した人なのか、アカウントを作っている会社のものになるのかなどの確認も必要でした。
丹羽 それは生成AIのソフトによって違うんですね。
飛田 そうなんです。今回は、生成者およびアカウントのものになるということで、ひろく番組のものになるという意識で扱っています。今後は演者さんとも新しい契約の仕方が発生するのではないか、と思いました。
まだ人間、負けてないぜ!
丹羽 放送では、すごくテンポよく回答が生まれているように見えましたけど、実際にはどうなんですか?
飛田 1枚目の生成画像が出るまでは、皆さん一斉にプロンプトを打ち込んでいるので時間がかかりますが、その後は、やりとりをしている間に生成しているので、そんなにカットしていないです。生成まで7秒で、平均して3回ぐらいプロンプトを打ち込むとイメージ通りの画像が生成されていました。
丹羽 プロンプトの回数が思っていたより少ないので、驚きです。

丹羽 『IPPONグランプリ』では、どんどんネタが重なっていって、そこで爆発的な笑いが生まれますよね。そのテンポ感って大事だと思うのですが、「脳内大喜利」でも畳みかける感じが上手く出ていました。
飛田 そこを大事にしています。
丹羽 番組の中でも少し紹介されていましたが、プロンプトはどんなことを打ち込んでいるんですか?すごく興味があります。
飛田 人によって違うのが面白いところです。すごい曖昧に打ち込んでいる人もいれば、とっても細かいプロンプトを打ち込んで、ほぼイメージ通りに生成できていたりします。人によってプレイスタイルが違う味わい深さも感じました。
丹羽 大喜利企画ではお題の設定も大事だと思うのですが、どういう風にお題を作っていたのですか。
飛田 お題もAIで作ろうとしたんです。作家さんからの案とAIが出した案をミックスさせて、実際に制作でシミュレーションをしました。そこから本番用に抜粋したのは、人間が考えた案でした。そこにはちょっと嬉しさもありました。”まだ人間、負けてないぜ“と。
丹羽 「脳内大喜利」をやってみて、芸人さんの力ってすごいなと思ったところはありますか?
飛田 終始、収録中思っていました。回答を出すときの”間“です。同じ回答でも秋山さんがあの口調で、あの間で出されると笑ってしまうんですよ。あの笑いの取り方は人間でないとできないですし、お笑いって、その芸人の性格や個性、キャラクターに乗っているから、AI単体でウケを取るというのはすごく難しいんじゃないかなと思いました。
丹羽 「AIで人間の魅力を引き出す」という番組のコンセプトが「脳内大喜利」で見事に表現されていました。
今の技術の不具合を笑いにはしたくない
丹羽 「冠代行エーアイ」はどういう発想から作ったのですか?
飛田 10年、20年後の芸能界に、人間ではないタレントが出てくると信じています。そうなったときに番組はどうなるんだろうと実験したかったんです。ゲストがAIというのはありがちだと思うので、AIがMCとして番組を回したらどうなるのかと思って作りました。

丹羽 永尾柚乃ちゃんのAIを作るのは大変でしたか?
飛田 思っていたより大変ではなかったです。これまでのインタビューや出演時のデータを学習させて作ったので、声も柚乃ちゃんにしたのですが、3分間のボイスデータを読み込ませただけです。ただ、精度としては課題がありました。プロトタイプが出来てから収録までに学習させる日数が足りなくて、理想の精度にはなかなか到達しませんでした。
丹羽 具体的に精度というのは、表情とか動きですか?
飛田 価値観みたいなところです。発言内容ですね。これがすごく難しかったです。語尾を直したり、回答が長いから短くしてとか、逆に短いから長くしてとかしたら、根幹の部分が変わってしまう、というようなことがありました。永尾柚乃ちゃんに見えない要素が出てきてしまったりと、次への反省点を学習することができました。
丹羽 AI柚乃ちゃんがうまく回せないところが面白かったですけどね。
飛田 そうなんですよ。今しか見られない不具合を面白がるのは悪いことではないし、取り入れていきたいとは思いますが、それをメインの笑いにはしたくなかったんです。演者の皆さんが面白くしてくださって、結果論ですが、大喜利と冠代行の企画としての特質性が逆になったので、番組としての緩急はついたのかなと思います。
丹羽 人間の魅力を引き出すという意味では、あそこにAI柚乃ちゃんがいることによって、周りの人たちのトークの上手さや柚乃ちゃん本人の魅力が浮かび上がっていました。そこは番組コンセプトとも合っていたのかなと思います。AIではできないMCの力みたいなものは見えてきましたか?
飛田 技術的な問題点ですが、今回導入したAIは話者の分離ができないんですよ。今、ホリケンさんが話しているのか、くっきーさんが話しているのか、声質で誰か判断ができません。
本当は技術的にはクリアできるのですが、膨大な予算がかかります。AIには眼もないので、ホリケンさんが一発ギャグをやっても、映像として捉えられていないので、対応できない。これも莫大な予算をかければ実現はできますが、今回の企画では無理でした。でも、逆に、人間にはできない非情な発言ができるので、そこはひとつ新しい可能性は感じました。上岡龍太郎みたいな(笑)
丹羽 最近、あのようなMCはいないですからね。
人とのつながりまで強くする不思議な企画
丹羽 5月放送の第2弾では「空想ものまねショー」がありましたが、これはどういうことを考えていたんですか?
飛田 AI永尾柚乃ちゃんにギャクを振ったときに、あまりにも訳の分からないことを言って、人間には理解できないギャグを披露してくれたんですよ。そのVTRを見終わったあとに、若林さんが「AIが考えるギャグも一流の芸人が身体で表現すれば面白くなるのかな~?」とぼそっと言っていたのをタネに形にした感じです。

丹羽 やってみた手応えはどうでしたか?
飛田 僕としてはすごく面白かったです。偉い人が下の者に向かって「あれやれ!」と無茶ぶりするような縮図にはなっているのですが、AIであることによって嫌な感じが拭えている。誰も傷つかない無茶ぶり企画に進化できる香りがすごくしたので、先々チャンスがありそうだなと思いました。
丹羽 だんだん、やっている芸人さんたちのチームワークが生まれてくるところなどは面白かったです。
飛田 やはり人間なんです。結局、そこで輝くのは人間で、どんどん人とのつながりまで強くしていくという不思議な企画でした。
丹羽 まだ次々に企画が湧いてきそうですね。
番組制作を支えてくれた技術チーム
丹羽 今回使ったAIソフトは企画ごとに違うのですか?
飛田 全部違います。
丹羽 何を使用しているか聞いてもいいですか?
飛田 メジャーなものを使用しています。画像生成はMidjourneyを使いたかったのですが、日本語での生成があまり上手くいかなかったので、Googleのソフトをベースに使用しました。AI柚乃ちゃんは韓国のベンチャー企業と作り上げました。
丹羽 技術的なところのサポートが大事になると思うのですが、どのようにチーム作りをしたのですか?
飛田 以前、AI×大喜利というので企画を出していたのですが、社内のAIに対する不安が強くて、実現しませんでした。今回、「シンギュラ」として企画を出し直す際に、技術の人たちのバックアップがあれば上層部も納得してくれるだろうと思い、まず企画書を技術に持っていきました。そこでフジテレビのAI利活用委員会という、AIの活用をサポートするような委員会のメンバーを紹介してもらい、番組スタッフとして入っていただきました。企画の段階から一緒に番組を作り上げていった感じです。放送後の知らない間に自分もAI利活用委員会のメンバーに入っていましたが…(笑)。

丹羽 番組制作には技術は欠かせないですが、今回は生成AIの技術も必要になってくるからそこは大変だったのではないですか。
飛田 企画段階から、なんとしてもシンプルなUI、UXに仕上げたい、というのを相談していました。なので、専用のページを作ってくれたり、会社を紹介してくれたりと、サポートしてくれたので、すごく助かりました。今回、バーチャルプロダクションというLEDのスタジオを使用させていただいたのですが、それもフジテレビとしては、そんなにまだ使っていなかったので、LEDチームとの打合せもありました。
丹羽 背景のセットですか?
飛田 はい。ただの一枚の大きいLEDです。
丹羽 え~っ!そうだったのですね。
飛田 セットのデザインもAIを使って作ったので、普通の番組制作にはない行程だらけでした。特にAI柚乃ちゃんをバーチャルスタジオに投影させて、セットの中にいてもクロマキーとは違って、目線を合わせて会話できるというのにしてもらいました。初めての企画でやりたいことを言いまくったら、実現させてもらえたという感じです。本当に技術の皆さんには感謝です。
丹羽 技術面と演出面のすり合わせで大変だったことはありますか?
飛田 ある程度自分が勉強していたということもあって、そもそも無理な要望は演出上入れてなかったので、比較的スムーズだったと思います。ほんと予算だけですね(笑)。
丹羽 フジテレビとしても、技術的な挑戦だったのではないですか?
飛田 初めての番組作りだったので、何が普通の進め方かもわからないまま進めていたので、技術さんとの打合せが圧倒的に多かったです。それが異常だとは思っていなかったので、出来たのかもしれません。
丹羽 ある程度キャリアを積んでいると、テレビの作り方はこういうものだ、という制約が自然とかかってしまうものです。飛田さんのような新しい発想が大事だと思います。
レギュラー枠でやりたい
丹羽 『シンギュラ』の第3弾はあるのですか?
飛田 ぜひやりたいなと思っています。テレビで「見たことのない企画」というのが生まれづらい現代の中、久しぶりに新しい企画を生み出せるチャンスが来ているので、ひたすらに新企画を生み出していきたいです。
丹羽 どんな新企画を考えていますか?
飛田 ドッキリ、音楽、料理、クイズなど往年の企画を新しい切り口で、ちょっとでも目新しくできたらいいなと思っています。超斬新なことをやるには技術的に時代がまだ早いですが、恋愛リアリティーショーもやりたいんです。第18弾あたりになるかな(笑)。
丹羽 レギュラー化する予定はないのですか?
飛田 社にかけあってます!
丹羽 テレビ朝日が「AI大作戦」というレギュラー番組を始めましたね。
飛田 そうなんですよ。悔しい思いはありました。単発ではなくレギュラーでやるからこそ、業界、しいては会社を明るくしていけるのではないかと思っているので、「シンギュラ」をレギュラーでやりたいという思いはとても強いです。
丹羽 一度立ち上げると、どんどんブラッシュアップして積み上げていけるので、レギュラーでやると作りやすくなっていくというところもありますよね。
飛田 「シンギュラ」を作ったチーム皆が、他の番組のスタッフよりもAIに対する知識が深いので、レギュラー枠さえあれば!
丹羽 今後も新しい技術が出てくると思います。新しい技術を番組に取り込んでいく際に、飛田さんが大事にしていることはありますか?
飛田 AIや最新技術に振り回されず、自分が面白いと思っていることが、ぶれないように作っていきたいです。
丹羽 今回の番組は飛田さんのそういう思いが番組としても結実していたから、これだけ評価されたのだと思います。
AIが普及していく中で、テレビならでは、テレビだから届けられる価値とはなんでだと思いますか?
飛田 この10年間テレビならではの価値は薄まってきていると感じています。僕が小学生だった頃のテレビはすごく輝いて、テレビらしさがありました。実際に制作の現場をみると、見たことのないような新しい企画が受け入れられづらい状況があります。そんな中で、AIというものを一つかませるだけで、なんとなく知の鎧を被ったように見えます。そうすることで、また攻めた企画ができるのではないかと思います。AIを使うことで、テレビならではのいいところを復活させられるチャンスになるのではないかと希望を抱いています。
丹羽 飛田さんの人間への信頼、熱い思いがすごく伝わってきました。今後もすばらしい番組を作り続けてください。ありがとうございました。
飛田 頑張ります。ありがとうございました。
【あらすじ】AI実験バラエティ シンギュラ
日進月歩で進化するAIを活用した新しい2企画をMCオードリー若林正恭とお届けした番組。【脳内大喜利】では、お題に対して即座に画像生成し回答する、新時代の大喜利を実験。芸人たちの脳内イメージを画像として生成することで、言葉だけでは表現しきれなかった視覚的笑いが誕生した。【冠代行エーアイ】では、「芸能人をAIで再現してMCを任せたらどうなるのか」を検証。俳優・永尾柚乃の見た目・声・思考を再現した”AI永尾柚乃”を生成し、MCを担当させることで、近未来のバラエティ番組を実現した。
プロフィール

飛田将斗さん (とびた まさと)
フジテレビジョン スタジオ戦略本部 第3スタジオ 制作センター
演出・ディレクター
1998年生まれ、東京都町田市出身。慶應義塾大学在学中にデータサイエンス・人工知能を学び、20年にフジテレビジョン入社。人事局に配属されたのち、2023年にバラエティ制作に異動。『人志松本の酒のツマミになる話』『お笑いオムニバスGP』などを担当し、『深夜のハチミツ』でディレクターに。現在は『新しいカギ』のディレクター。26年1月に『AI実験バラエティ シンギュラ』で初の企画・演出を担当し、同年5月には第二弾も放送された。

丹羽美之さん (にわ よしゆき)
エンターテインメント部門審査委員長
1974年生まれ。東京大学大学院情報学環教授。専門はメディア研究、ジャーナリズム研究、ポピュラー文化研究。主な著書に「日本のテレビ・ドキュメンタリー」、「NNNドキュメント・クロニクル:1970-2019」、「記録映画アーカイブ・シリーズ(全3巻)」(いずれも東京大学出版会)などがある。
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