HBF CROSS
持ち込み企画の実験室『編成王川島』
▶▶▶ 『日日是てれび日和』──気になる番組を読み解く週一コラム 桧山珠美

【第41回】『編成王川島 Season2 』(NHK・2026年5月18日放送)
NHKの未来を担うバラエティー企画の開発を目指す“新企画探求バラエティー”、それが、『編成王川島』だ。昨年、放送されたのが好評だったようで、この4月からSeason2 がスタートした。
内容は、タレントや芸人らが持ち込んだ企画を実際に番組化し、それをもとに出演者たちが、あれこれ意見を出し合い、最終的に、NHK特命編成部GMの川島明(麒麟)が、「おもしろい」「次も見たい」の尺度で企画をジャッジするもの。
これまでにも、卓球の水谷隼発案によるテニス杉山愛とバドミントン潮田玲子が水谷の指導を受けたうえで、ガチンコ卓球対決する「VS」や、岩崎う大(かもめんたる)による「台本ゼロシアター~今から〇〇演じてもらいます~」という即興劇など。どれも良くできていて、毎回、目が離せない。
出演は、川島のほか、特命編成部デスクに朝日奈央、さらにアドバイザーとして週替わりのゲストが2名。この日は企画プレゼンターが森田哲矢(さらば青春の光)、アドバイザーが伊集院光、横澤夏子。
森田の持ち込み企画は、「みんなの小さなマイルール」。3,000人以上から日常の中の小さなマイルールを調査するもの。多様な価値観があふれる現代、みんなが何を大切にしているのか?マイルールを通して、みんなの生き方や人生観を覗いてみようというのが企画意図。
IT勤務20代男性は「仕事前の朝風呂」、高校生10代女性は「なんにでもコショウをかける」、同じく高校生10代女性「うどんは塩だけで食べる」……。街で話を聞くだけでなく、たとえば、「コショウをかける」の話の時には、実際にいろんな食べ物にコショウをかけた画像が出てくるなど、視聴者にわかりやすく視覚的に伝える工夫も効いていた。
1人暮らしの20代女性の「ダイエットの相談はAI」というマイルールも今どきだ。AIにメニューを決めてもらってそれをかれこれ3ヶ月実践しているそうだが、そのメニューは白湯とゆで卵とヨーグルト。私なら1日でお手上げだ。彼女はAIに、「飲み会に行っていいかどうかも聞く」そうで、ほんとうに世の中はそんなことになっているのか、と時代の変化を実感した。
「読書で集中力を鍛える」とか「毎朝『みそ汁』か『とん汁』を飲むようにしている」という東大生のマイルール。それ自体も興味深いが、その説明の仕方がいかにも論理的なのも興味深い。
番組後半は2組の家庭を取材し、「夫婦のマイルール」を紹介。20代の夫婦は「毎月お互いが思っていることをぶつけ合う日を設けている」そうで、その日はお互いの不満など、なんでもため込まずに言うと決めていて、そのおかげでわだかまりなく夫婦円満に暮らせているとか。
と、まあそんな感じで、いろんな人たちのマイルールを覗き見。人それぞれにこだわりがあり、それを見て、こちらも気づかされることがあったり、学ぶこともあったりと、なかなかいい企画ではなかったかと思う。
競馬好きの川島の「風水的にトイレ掃除をしたあとに競馬をすると当たるという話を聞き、実践したところ、その日はめちゃめちゃ勝ったんで、土日はトイレ掃除をやらないといけないカラダになった」という話や、「夫婦げんかが長引いても夜中0時に謝る」と言う伊集院の話、タレントたちのルールも面白かった。
ただ、この「マイルール」を語る企画は、割と既視感で、フジテレビの『セブンルール』がまさに各人のこだわりや選択基準を丁寧にすくい上げる番組だった。
実際、この放送の翌日には、夕方のニュース番組でも「マイルール」を紹介するコーナーが見られた。
思えば、「VS」は『ほこ×たて』を想起させ、「台本ゼロシアター」は『スジナシ』の影がよぎる。完全に新しい企画というものは、もはや簡単には生まれないのかもしれない。
それでも、この番組が面白いのは、それを「持ち込み企画」として試し続ける点にある。既存のアイデアを実験の場に乗せ、別の角度から照らし直す。その編集の力こそが、テレビの創造力なのだろう。
『編成王川島』を見ながら、そんなことを考えた。
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プロフィール

桧山珠美(ひやま たまみ)
HBF MAGAZINEでは、気になるテレビ番組を独自の視点で読み解く連載『日日是てれび日和』を執筆中。
編集プロダクション、出版社勤務を経て、フリーライターに。
新聞、週刊誌、WEBなどにテレビコラムを執筆。
日刊ゲンダイ「桧山珠美 あれもこれも言わせて」、読売新聞夕刊「エンタ月評」など。
“HBF CROSS”は、メディアに関わる人も、支える人も、楽しむ人も訪れる場所。放送や配信の現場、制作者のまなざし、未来のメディア文化へのヒントまで──コラム、インタビュー、レポートを通じて、さまざまな視点からメディアの「今」と「これから」に向き合います。
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