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『#WAKUをこえろ!』石川県の民放テレビ4局がつながった日│防災イベント「能登トークパーク」開催記

石川民放テレビ4局共同キャンペーン「#WAKUをこえろ!」プロジェクト 代表幹事 中島佳昭(北陸朝日放送)

民放4局キャラクター・アナウンサー・イベント参加者で記念撮影(2026年3月21日@石川県七尾市)

石川県の民放テレビ4局が、局の垣根を越えて手を組む「#WAKUをこえろ!」キャンペーン。能登半島地震と奥能登豪雨の記憶をつなぎ、防災への意識を未来へと手渡すために企画した防災イベント「能登トークパーク」。記録的な大雪による延期という試練を乗り越え、実現に至った舞台裏と、そこに込められた思いとは。北陸朝日放送の中島佳昭さんに寄稿していただきました。

ライバル同士のテレビ局がタッグを組む 「#WAKUをこえろ!」

石川県の民放テレビ4局は2022年度から「#WAKUをこえろ!」キャンペーンを展開している。視聴者のテレビ離れに危機感を持った民放4局が、局の垣根をこえて連携し、テレビのチカラを発信する取り組みだ。4局の編成部長が中心となり、運営をしている。

夕方の報道情報番組での桜の同時生中継や、4局の自社制作番組でアナウンサーや社員が相乗り出演する企画を実施。2024年元日に発生した能登半島地震の1カ月後には4局アナウンサー出演のメッセージ動画「ともにこえよう石川」を放送し、能登の復旧・復興支援にも取り組んだ。

2025年度のテーマは「#つたえよう石川」。能登半島地震や奥能登豪雨の風化防止に向け、能登地区で防災イベントを共同開催する企画を放送文化基金に申請することにした。

石川県民放4局キャラクターが能登の観光施設などをキャラバン(2025年8月9日@石川県内灘町)

迫りくる開催日に焦りも…会議の日程調整に苦労

企画採用の通知を受けた2025年8月から本格的に防災イベントの準備を始めた。会場は七尾市の能登演劇堂、開催日は2026年1月25日に決定した。大寒の時期にあたり、悪天候の懸念はあったが、4局のスケジュールを調整した上での判断だった。

イベント内容は大まかなコンセプトや方向性が決まっていたものの、詰めなければならないことは山ほどあった。日々の業務に対応しているうちにみるみる時間が経過し、迫りくる開催日に内心、焦りも感じていた。4局の編成部長のスケジュール調整が難しい中、リアル会議とオンライン会議を組み合わせながら議論を重ね、実務は4局で分担した。

テレビ金沢はイベントに参加する災害支援団体の募集、プレスリリースやSNS用の告知画像の作成を担当し、七尾市教育委員会を通じて地元小中学校にもイベントを案内した。北陸朝日放送は放送文化基金への申請書や会計処理の窓口となり、自社で実績のあったアナウンサー体験コーナーを担当した。北陸放送は日本財団HEROsのアスリートの参加調整や、ステージイベントの進行台本を作成。石川テレビは来場者に配布する防災グッズ100セットの手配、キッチンカーの出店を取り仕切った。

各局の編成部長がイベントの準備作業に苦労していることは電話やメールでのやり取りを通してひしひしと感じたが、一度も愚痴めいた言葉やネガティブな発言は聞かなかった。イベント開催に向けて気持ちはつながっている、そう感じた。

災害支援団体の能登復興への思い 責任の重さを感じる

イベント名は「#つたえよう石川 能登トークパーク~伝えるチカラで備える日~」に決定。能登半島地震、奥能登豪雨という二度の大災害の経験を語り合い、地域の課題や未来への一手を県内外に発信することを目指した。

イベントの柱は日本財団HEROsのアスリートや能登で活動中の災害支援団体を招いたステージでのトークイベントだ。驚いたのは声をかけた災害支援団体が全て参加を表明したことだ。事前に提出してもらったヒアリングシートには各団体が能登復興のためにどのような活動をしてきたのか、活動資金や人材不足などの課題に直面しながらも懸命にサポートを続けていることがびっしりと書かれていた。「この声を届けなければ…」。イベントを開催する責任の重さを感じた。

イベント開催前に記録的な大雪…苦渋の決断

イベント開催日の1月25日が近づく中、北陸は記録的な大雪となっていた。気象状況が改善することを祈るような思いで願っていたが、1月23日の昼前、民放4局の編成部長が緊急でオンラインのミーティングを開き、来場者の安全確保や雪による交通機関の麻痺などを理由にイベントの「延期」を決断した。

延期を乗り越え、民放4局防災イベント「能登トークパーク」開催

振替開催日は快晴 イベント会場の能登演劇堂

延期による振替開催日となった3月21日、石川県は快晴となり、青空が広がっていた。
石川の民放4局共同開催の防災イベント「#つたえよう石川 能登トークパーク~伝えるチカラで備える日~」が七尾市の能登演劇堂で開催された。

午前8時半頃、民放4局のスタッフ、アナウンサー、設営・音響の担当者が続々と集まる。会社や立場は違ってもこの日はワンチームだ。開場は午前10時30分を予定していたが、数量限定で配布される防災グッズを求めて来場者が行列を作ったため、急遽、開場時間を10分早めた。

「能登トークパーク」オープニング 民放4局アナウンサー・キャラクターが登場

ステージでは4局のアナウンサーとキャラクターが勢揃いして会場を盛り上げ、10の災害支援団体・個人が、これまでの支援活動や能登復興への思いを語った。その言葉一つ一つに日々のニュースでは伝えきれない被災地支援の現実があり、能登の人たちを支えてきた希望があった。

災害支援団体によるパネルディスカッション

私にとって印象的だったのは災害支援団体の方々から「私たちも枠をこえて…」という言葉を何度か聞いたことだ。「#WAKUをこえろ!」キャンペーンを展開する民放4局のイベントを通じ、災害支援団体同士が枠をこえてつながり、新たな支援が生まれる。私たちが目指していた姿でもあった。

10の災害支援団体・個人がブースを出展し活動報告
民放4局キャラクターと来場者の記念撮影

日本財団HEROsからはオリンピック金メダリストや元日本代表選手など4人のアスリートが参加し、避難所生活で役立つストレッチを紹介したほか、来場した子どもたちと一緒に簡易トイレの組み立ても体験した。キッチンカーのグルメを楽しむ人たち、アナウンサー体験コーナーで現役のアナウンサーからアドバイスを受ける子どもたちの姿もあった。午後3時30分、「能登トークパーク」は無事に終了した。

日本財団HEROsのアスリートと来場者がボールを使って交流
日本財団HEROsのアスリートと来場者が簡易トイレの組み立てを体験

民放4局スタッフへの最後のあいさつで…

撤収作業を終えた後、楽屋に民放4局のスタッフが集まり、私が総括のあいさつをすることになった。私は人一倍、涙腺が緩く、感極まってしまわないか心配になったが、平静を装ってあいさつを始めた。無事にイベントを開催できたことへの感謝、スタッフへの労いの言葉を述べる。

4つのテレビ局が力を合わせれば単独ではできないような大きなイベントも開催できたこと、災害支援団体の皆さんも枠をこえてつながろうとしていることを話しているうちにところどころ声が震え、目に涙がたまってきた。「やばい、耐えなければ…」と思っていたが、次の言葉が出てこなくなり、案の定、涙腺が崩壊してしまった…。

「#WAKUをこえろ!」を掲げる石川県の民放4局が共同開催した防災イベント「能登トークパーク」。そこで語られた言葉の中にはいつどこで起きるか分からない、次の災害に備えるためのヒントがきっとあるはず。これからもWAKUをこえ、テレビのチカラを信じて発信を続けていきたい。

中島佳昭(なかしまよしあき)
北陸朝日放送 編成局総合編成部長
石川県金沢市出身(43歳)2005年北陸朝日放送入社 営業局に配属された後、2007年から報道制作局で記者、ニュースデスク、ドキュメンタリー番組のディレクターを担当。2023年10月から編成局総合編成部長。石川ふるさとCM大賞の統括や石川地区民放テレビ4局共同キャンペーン「#WAKUをこえろ!」にも携わる

2025年度助成 イベント事業部門(前期)
「能登半島地震・奥能登豪雨の経験を未来へ 「#つたえよう石川」民放4局共同防災イベント」
石川民放テレビ4局共同キャンペーン「#WAKUをこえろ!」プロジェクト
代表幹事 中島佳昭(北陸朝日放送 編成局総合編成部長)

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