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『女芸人No.1決定戦 THE W 2025』霜降り明星・粗品が持ち込んだ“緊張感”

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【第21回】『女芸人No.1決定戦 THE W 2025』(日テレ・2025年12月13日放送)

桧山珠美コラム

今年もこの季節がやってきた。『女芸人No.1決定戦 THE W』だ。

結成15年以内のコンビを対象に漫才日本一を決める『M-1グランプリ』、コント日本一を決める『キングオブコント』、ピン芸人日本一を決める『R-1グランプリ』、結成16年以上のコンビ限定の『THE SECOND 〜漫才トーナメント〜』などなど、お笑いの賞レースは数々あれども、女性芸人限定はこの『THE W』のみ。

2017年に開催された第1回優勝者はゆりやんレトリィバァ、以降、阿佐ヶ谷姉妹、3時のヒロイン、吉住、オダウエダ、天才ピアニスト、紅しょうが、にぼしいわしと続く。

そして、今年。史上最多エントリー1044組のなかから予選を突破したのは、もめんと、電気ジュース、とんでもあや、紺野ぶるま、エルフ、パンツ万博、ニッチェ、ヤメピの8組。その中から見事、頂点に立ったのは、芸歴21年目のニッチェだった。2017年決勝4位、2018年決勝3位のあと、7年間のブランクを経ての優勝だけに喜びもひとしおだろう。

昔はネタ番組にも出演していたが、昨今のニッチェといえば、『王様のブランチ』などの情報バラエティ番組で見かける程度だった。結婚や出産・子育てと人生のフェーズが変わるなかで、いわば、タレント的ポジションに落ち着いていくのだろう、と。

それが、再び賞レースの舞台に立ち、主戦場であるコントで真っ向勝負し、結果を残した。この事実は、女芸人のみならず、多くの女性たちに勇気と希望をもたらしたのではないか。

40代の2人が、今の自分たちだから出来る表現で、もう一度頂点を目指す。その姿勢を見習いたい。いつでも、いくつからでも挑戦できると思えれば、人生はまだまだ面白くなる。阿佐ヶ谷姉妹優勝の際にも感じたが、紆余曲折、艱難辛苦を乗り越えて掴んだ栄光は、結果以上の価値を持つ。それは「努力は報われる」「継続は力なり」といった何の根拠もないが、私たちを励まし続け、ポジティブな気持ちにさせてくれる言葉が、単なることわざではなく、揺るぎない真実であることを証明してくれるから。

一方で、今、大会を語るうえで欠かせない存在がいる。審査員として初参加した霜降り明星・粗品だ。冒頭、「『女やからおもんない』『女のくせにおもろい』といった視点は一切抜きにして審査する」と宣言。その言葉通り、審査コメントは終始辛辣で、粗品が口を開くたび、会場の空気は凍りついた。

正直に言えば、これまで『THE W』を見てきて、そもそもだがこのジェンダーフリーのご時世に、「女芸人」くくり自体どうなのかとモヤモヤしていたのも事実だ。が、それ以上に、かりにも予選を勝ち抜いて決勝に進出した芸人たちのネタが、必ずしも面白いとは言い難いことへの違和感が毎年つきまとい、割り切れない思いを抱えていたのだった。

しかも、女だからと舐められたくない、という意識の裏返しか、下ネタに走る芸人も少なくなく、表現の幅という点では、いささか辟易するところもあった。おまけに審査員のコメントは甘口で、客席は大ウケ。しかも賞金は『M-1』と同額の1,000万円。このアンバランスさに釈然としない思いを抱いていた視聴者も多かったのではないか。

その不満を一気に解消してくれたのが粗品だった。周りを気にせず、ほかの先輩審査員を前にしても、容赦ないまでのダメ出しをしてみせる。それが、今大会の一番の見どころだったといっても過言ではない。

粗品の存在が浮いて見えたとしたなら、それは彼が異端なのではなく、これまでの大会の空気が甘過ぎたということだ。賛否はあるだろうが、粗品のおかげで、今年の『THE W』は見応えがあった。

審査員の粗品を唸らせる女芸人が、今後、数多く現れるのであれば、その時こそ、『THE W』は真の意味で存在意義を獲得するのではないか。

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プロフィール

桧山珠美

桧山珠美(ひやま たまみ)
HBF MAGAZINEでは、気になるテレビ番組を独自の視点で読み解く連載『日日是てれび日和』を執筆中。
編集プロダクション、出版社勤務を経て、フリーライターに。
新聞、週刊誌、WEBなどにテレビコラムを執筆。
日刊ゲンダイ「桧山珠美 あれもこれも言わせて」、読売新聞夕刊「エンタ月評」など。


“HBF CROSS”は、メディアに関わる人も、支える人も、楽しむ人も訪れる場所。放送や配信の現場、制作者のまなざし、未来のメディア文化へのヒントまで──コラム、インタビュー、レポートを通じて、さまざまな視点からメディアの「今」と「これから」に向き合います。

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