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平成おもちゃ箱の先に、これからのテレビ|「テレビとCMで見る平成・令和ヒストリー展2026」
桧山珠美 (フリーライター)

横浜・放送ライブラリーで開催中の企画展「テレビとCMで見る平成・令和ヒストリー展2026」。平成元年(1989年)から令和7年(2025年)まで、37年間のテレビ番組とCMを振り返る会場に並ぶのは、パネルに台本、歴代の「TVガイド」、そして懐かしいおもちゃたち。フリーライターの桧山珠美さんが訪ねてそこで出会ったのは、テレビの歴史だけではなかった。
「このドラマ、見てた!」「懐かしい!」
横浜・日本大通りにある放送ライブラリーで開催中の「テレビとCMで見る平成・令和ヒストリー展2026」。会場のあちこちから、そんな声が聞こえてきた。
パネルを読み込むだけで、ゆうに40分
平成元年から令和7年まで、37年間のテレビ番組やCMを振り返る企画展の何がすごいって、1年ごとにまとめられたパネルの情報量だ。テレビにまつわる出来事に加え、NHK・民放各局で話題になったドラマのタイトル、出演者、脚本家の名前、さらに、その年にスタートした情報・教養・バラエティ番組まで、テレビの歴史を彩った番組が次々と現れる。そんなパネルをじっくり読み込むだけでも、ゆうに40分以上はかかった。
会場内には、歴代の「TVガイド」も展示されている。これがまた面白い。表紙を飾るのは、懐かしい顔、顔、顔。あの頃、テレビで活躍していたアイドルやスターたち。表紙を眺めているだけで、当時のテレビの勢力図まで見えてくるようで、実に興味深い。

そういえば、1年ごとのパネル横にも、その年の「TVガイド」が展示されているが、平成7年までは判型がA5と今よりも小ぶりだった。そういえばこのサイズだったなと、懐かしい友人に再会したような、なんともいえない気持ちになった。
音楽を聴く「形」は、こんなにも変わった
音楽もそうだ。平成元年は、Winkの「淋しい熱帯魚」のシングルレコードと8センチサイズの縦長CDが2つ展示されている。それが翌年からは縦長シングルCDのみに、そして、アルバムと同じ12センチサイズのCDへと移る。さらに、令和になるとシングルは「配信」時代に。ジャケットそのものが存在しない。音楽を聴くという行為は今も昔も変わらないのに、その「形」はこんなにも変わったのか、と。
テレビも、音楽も、私たちの身の回りにあったエンターテインメントは、少しずつ姿を変えてきた。その変化を、懐かしさとともにたどることができるのも、この企画展の魅力だ。
平成おもちゃ箱は、小さなタイムカプセル
会場には、1989年生まれのスタッフによるコラムとともに、シール帳や文房具、たまごっちやポケモンカードに、ガラケーやMDなど、懐かしいグッズたちが「平成おもちゃ箱」として並んでいる。

折しも、いまは「平成レトロブーム」。シール帳はリバイバル人気となり、たまごっちもポケモンも、進化を続けながら今なお子どもたちを夢中にさせている。
「平成おもちゃ箱」は単なる懐古コーナーではない。平成と令和をつなぐ、小さなタイムカプセルなのだ。
「シール帳」といえば、まだ記憶に新しい令和5年のドラマ『ブラッシュアップライフ』コーナーには、実際に使用されたシール帳や、あーちん、なっち、みーぽんの3人が小学生の頃、テレビドラマの感想を書き込んだ「じゆうちょう」といった貴重な小道具が展示されている。画面の中で見ていたものが目の前にある。『ブラッシュアップライフ』ファンとしては、思わず身を乗り出してしまうような垂涎ものの展示だった。

記憶の引き出しを開けるように
会場内は、私のようなおひとりさまだけでなく、カップルや家族連れが多かった。
歴代『金田一少年の事件簿』の台本が並べられた展示を見ながら、「やっぱり初代(堂本剛)が一番よかった」「ともさかりえが可愛かった」などと言い合うカップル。
『女王の教室』のパネルの前で、「『女王の教室』だって」と興味を示す小学生の男の子に、母親が「『アリエッティ』の声の人が出てたんだよ」と説明している。何のことかと思ったら、アニメ映画『借りぐらしのアリエッティ』で主人公のアリエッティの声を担当していたのが志田未来だった。
誰が出演していたのか。どんなストーリーだったのか。記憶の引き出しを開けるように語る姿がなんとも楽しそう。
あのドラマに夢中になった頃。何度も聴いたあの歌。家族で同じ番組を見て大笑いし、翌日、学校で昨日見たテレビの話で盛り上がったこと。
テレビが暮らしのメインストリームだった時代が、確かにそこにあった。
これからのテレビをつくる人たちの言葉
企画展の最後には、「特別展示」として、放送現場で活躍している制作者たちが寄稿した「令和のテレビ~AI時代のテレビの可能性~」が展示されている。

これが、読めば読むほど面白い。テレビの未来をどう切り拓いていくのか。AIとどう向き合い、テレビだからこそ伝えるものをどう残していくのか。それぞれの言葉に、いちいち頷いてしまう。
そこには、テレビの現状を嘆く言葉はない。あるのは、放送の未来を担い、日々、試行錯誤を続ける作り手たちのまっすぐな言葉だ。
テレビ離れが叫ばれて久しいが、それでも、先人たちが築いてきたものを受け継ぎながら、これからのテレビを作ろうとしている人たちがいる。その言葉がなんとも頼もしい。
懐かしいテレビを振り返った最後に、これからのテレビをつくる人たちの力強い言葉に出会えた。それがなによりも嬉しかった。
会場内では、CMやテレビ番組の上映会もある。こちらも、一度座ったら最後、いつまでも見ていたくなる作品ばかり。

夏休み真っただ中。おひとりさまもカップルも家族連れも、あらゆる世代が楽しめる企画展になっている。自由研究のテーマに、テレビやCMの歴史を選ぶのもいいのでは。
展示されていたのは、テレビやCMの歴史だけではない。
そこにあったのは、テレビを見ていた私たちの歴史だった。
企画展「テレビとCMで見る平成・令和ヒストリー展2026」
2026年8月7日(金)〜9月27日(日)
◎月曜休館【9/21(月・祝)は開館、9/24(木)は休館】
時間:10:00〜17:00
会場:放送ライブラリー 展示フロア
入場無料
主催:(公財)放送番組センター
※放送文化基金は、放送ライブラリーを運営する放送番組センターを後援しています。
プロフィール

桧山珠美(ひやま たまみ)
HBF MAGAZINEでは、気になるテレビ番組を独自の視点で読み解く連載『日日是てれび日和』を執筆中。
編集プロダクション、出版社勤務を経て、フリーライターに。
新聞、週刊誌、WEBなどにテレビコラムを執筆。
日刊ゲンダイ「桧山珠美 あれもこれも言わせて」、読売新聞夕刊「エンタ月評」など。
“HBF CROSS”は、メディアに関わる人も、支える人も、楽しむ人も訪れる場所。放送や配信の現場、制作者のまなざし、未来のメディア文化へのヒントまで──コラム、インタビュー、レポートを通じて、さまざまな視点からメディアの「今」と「これから」に向き合います。
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