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「エッホエッホ」…?「新巻鮭」は通じない?―世代間ギャップを楽しむ『THE世代感』の魅力

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【第20回】『THE世代感 特別編 日曜に出張! 昔の12月の風景映像に隠された4つの謎クイズ』〔テレビ朝日・2025年12月7日放送〕

世代間ギャップが叫ばれて久しい。先週、発表された「新語・流行語大賞」でも、なんのことやらさっぱりわからなかったのが「エッホエッホ」だ。もちろん、調べてみれば元ネタはすぐにわかる。が、それを理解したところで……という感じもする。ま、「エッホエッホ」を知らなくても、これまで問題なく生きてこられたのだから、よしとしようとは思いつつも、社会のどこかで流行している言葉を自分だけ知らなかったというのは、ちょっとした焦りと一抹の寂しさをともなう。

そんな世代間ギャップをまるっと番組にしたのが『THE世代感』だ。昭和世代が当たり前だと思っていることが令和世代には全く通じない。同じ映像を見ても世代が違えば受け取り方も変わる。その感覚や感じ方の違いをクイズ形式で答えていくのだが、これが実に興味深い。

通常は土曜に放送されるが、この日は特別編と称し日曜の放送だった。内容はというと、今年もあと少しということで、昭和平成の年末の映像を令和世代の若者に見せて、彼らが驚いた今との違い、4つの違和感について答えるものだ。MCを務めるのは30代のホラン千秋と50代のフットボールアワー後藤輝基。回答するのは40代のガクテンソク奥田修二、矢田亜希子と、50代の中山忍、FUJIWARAの藤本敏史の4人だ。

流された映像は、有線放送でリクエストの電話を受け付けた担当社員が、該当曲のレコードを探し、レコードプレーヤーで手作業で掛けるものや、上野アメ横の年末の風景、東海道新幹線の帰省ラッシュ、居酒屋での忘年会などなど。

昭和世代にはどれも懐かしい年末の風景だが、この映像に令和世代が抱いた違和感は4つ。「有線放送」「新巻鮭の“新巻”」「新幹線の3人掛け座席の方向」「居酒屋の座敷が掘りごたつではない」だった。

令和世代は、鮮魚店に貼っていた「新巻」がなんのことかわからなかったようだ。「シンマキ?」「シンカン?」……。大振りの鮭を一匹まるごと数日間塩漬けした新巻鮭。お歳暮の定番で、美術の教科書にも載っていた(高橋由一『鮭』)、昭和世代にはおなじみのあの新巻鮭だが、アメ横の中でも現在取り扱っているのはわずか2軒だった。健康志向の昨今、減塩商品が増加し、新巻鮭の需要も減ったというのだ。

番組の魅力は、ただ昔のVTRを流すだけで終わらないところにある。現在、どうなっているのか、取材することで、時代の変化をリアルに実感できる。そのVTR素材を膨大なアーカイブ映像の中から探す苦労も想像に難くない。

この番組は、昭和・平成の映像を懐かしむだけでなく、令和世代の目で見た今とのギャップを知ることができる。世代間の違いを知ることで、お互いに理解も深まる。昭和世代としては、番組を通じて自分をアップデートできたような感覚も味わえる。

芸能人の過去映像や昔の番組を見て楽しむ番組はよくあるが、こんなふうに市井の人たちの暮らしぶりや街並みを見せてくれるものはあまりない。そういう意味でも貴重な番組といえる。

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プロフィール

桧山珠美(ひやま たまみ)
HBF MAGAZINEでは、気になるテレビ番組を独自の視点で読み解く連載『日日是てれび日和』を執筆中。
編集プロダクション、出版社勤務を経て、フリーライターに。
新聞、週刊誌、WEBなどにテレビコラムを執筆。
日刊ゲンダイ「桧山珠美 あれもこれも言わせて」、読売新聞夕刊「エンタ月評」など。


“HBF CROSS”は、メディアに関わる人も、支える人も、楽しむ人も訪れる場所。放送や配信の現場、制作者のまなざし、未来のメディア文化へのヒントまで──コラム、インタビュー、レポートを通じて、さまざまな視点からメディアの「今」と「これから」に向き合います。

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