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『サンドウィッチマン&芦田愛菜の博士ちゃん』7周年企画 あの博士ちゃんたちは今
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【第18回】『サンドウィッチマン&芦田愛菜の博士ちゃん~あの博士ちゃんの今がスゴいぞSP~』(テレビ朝日・2025年11月22日放送)
毎週、楽しみにしている番組のひとつに『サンドウィッチマン&芦田愛菜の博士ちゃん』がある。2019年にレギュラー放送が開始され、今年で7年目に入り、これまでに登場した博士ちゃんは272人に及ぶという。
ちなみに、番組では、特定の分野に圧倒的な知識を持つ子どもたちを“博士ちゃん”と呼び、スタジオに招いて(あるいはリモートで)、サンドウィッチマンと芦田愛菜にその知識をプレゼンするのが番組の趣旨だ。
大人顔負けの知識を得意げにアピールする博士ちゃんには毎回、驚かされるばかり。単に子どもが可愛いというだけでなく、その豊富な専門知識や熱量に圧倒され、子どもの可能性、のびしろに感嘆。自分もなにか好きなことをみつけて頑張らなくては、と、前向きな気持ちにさせてくれる有難い番組でもある。
今回、7周年を記念し、過去に出演した博士ちゃんたちが今、どうなっているか、という企画だった。大人にとって7年という月日はあっという間だが、子どもの7年は大きい。果たして、今も好きなことを追い続けているのかどうか。果たして、あの時の可愛かった博士ちゃんたちが、どんなふうに成長しているのか。見たいような見たくないような……。
最初に登場したのは「ねぷた絵博士ちゃん」。ちなみに、青森市は「ねぶた」、弘前市は「ねぷた」と呼ぶ。当時、9歳だった男の子は、現在14歳に。身長170センチの立派な青年になってもねぷた熱は変わらず。番組出演時は300点だったねぷた絵は今や1000点にまで増えていた。本人も今では、ねぷた絵師として活動している。さらに若手のねぷた・お囃子好きが集まる「津軽佞武多 響樂會(つがるねぷたきょうらくかい)」を立ち上げ、自身も横笛の練習に励むなど、ますます頼もしい。「5年前はねぷたが好きだったけど、現在はねぷた文化全体が好きで、未来に遺していきたい」という言葉に嬉しくなった。
次に登場したのは、「郷土玩具博士ちゃん」。5年前、番組に出演した際は9歳だった。全国から集めた郷土玩具は300個以上、日本郷土玩具の会に在籍し、おじいちゃん世代の人たちが多い会のなかで、ひとりだけ子どもということもあり、可愛がられ、将来の会長だとまで持て囃されていた男の子だ。
当時、郷土玩具で溢れていた部屋を訪ねてみると、なんということでしょう。そこはアメリカンレトロ調に模様替えされていたのだった。電車通学中にアメリカの昔の映画を見て、すっかりハマってしまったのだとか。ドアにコカ・コーラのステッカーが貼っていたので、あれ?とは思ったが……。ちなみに、郷土玩具の会の人にはアメリカンレトロにハマったことを未だ言えていないので、若干の気まずさがある、とのこと。おじいさんたちの落胆はいかばかりと思ったが、今も郷土玩具は好きで、月に1回の会には参加し、郷土玩具の数も600~700個に増えたというからほっとした。
そんなこんなで、博士ちゃんたちの今は、久々に会った親戚の子どものような懐かしさもあり、成長に驚いたり、興味深いものだった。
後半は、番組に美空ひばり博士ちゃんとして登場し、プロの演歌歌手になった梅谷心愛に密着。2023年に「磐越西線ひとり」でメジャーデビューを果たし、2024年には日本レコード大賞で新人賞を受賞し、現在は18歳に。地方まわりやカラオケ喫茶の営業、そして、ライブハウスでのソロライブの様子が見られた。
歌うことが大好きな博士ちゃん。夢が叶ったとはいえ、厳しい世界の中で苦労しているように見えたが、それもまた現実だ。これからも頑張る博士ちゃんたちを応援したい。
自分の好きなことを極めることはなんて素敵なことだろう、というのを番組は教えてくれる。そんな博士ちゃんたちの「好き」を大人たちがサポートするのも素晴らしい。いつまでも続いてほしいなあと願う。
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プロフィール

桧山珠美(ひやま たまみ)
HBF MAGAZINEでは、気になるテレビ番組を独自の視点で読み解く連載『日日是てれび日和』を執筆中。
編集プロダクション、出版社勤務を経て、フリーライターに。
新聞、週刊誌、WEBなどにテレビコラムを執筆。
日刊ゲンダイ「桧山珠美 あれもこれも言わせて」、読売新聞夕刊「エンタ月評」など。
“HBF CROSS”は、メディアに関わる人も、支える人も、楽しむ人も訪れる場所。放送や配信の現場、制作者のまなざし、未来のメディア文化へのヒントまで──コラム、インタビュー、レポートを通じて、さまざまな視点からメディアの「今」と「これから」に向き合います。