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駄菓子と串カツが海を渡る―『JAPANをスーツケースにつめ込んで!』

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【第16回】『JAPANをスーツケースにつめ込んで! ~世界に日本を持ってった~SP』(テレビ東京・2025年11月10日放送)

テレビ東京の月曜夜は、国際色豊かなバラエティ番組が並ぶ。『YOUは何しに日本へ?』『世界!ニッポン行きたい人応援団』――そこに今年4月、新たに加わったのが『JAPANをスーツケースにつめ込んで!』だ。共通するのは、「外国人の視点を借りて日本を見る」という構図。“世界と繋がるバラエティ枠”として注目している。

MCはかまいたちの山内健司と濱家隆一の2人。ナレーターはTONIKAKU。誰かと思えば「安心してください。履いてますよ」でおなじみの、とにかく明るい安村だ。海外でも人気のTONIKAKUが番組に明るく軽快なリズムを添える。

その内容はというと、パンやお菓子、調味料、文房具など、日本人にとってはおなじみの“メイドインジャパン”をスーツケースに詰め込んで海外に持って行き、その国の人に味わってもらい、どれが1番気に入ったかを検証するもの。
たとえば、「あんぱん」「カレーパン」「焼きそばパン」「メロンパン」……といった日本オリジナルパンを、パンの本場フランスへ持っていったり、「うなぎパイ」や「もみじ饅頭」「白い恋人」「信玄餅」など日本の人気ご当地土産をお菓子大好きスウェーデンに持っていったり。見た目の感想や、初めて口にした時のリアクションなど、どれも新鮮で興味深い。

11月10日の放送回は、2時間スペシャル。「日本の駄菓子をお菓子大好き国スペインへ持っていった」と「日本の串カツを串カツのルーツフランスへ持っていった」の2本立てだ(この回のナレーターはアキラ100%と柳原可奈子)。駄菓子編では、「うまい棒コーンポタージュ味」「モロッコヨーグル」「棒キナコ飴」「ヤンヤンつけボー」「ヤッター!めん」「フエラムネ」「蒲焼さん太郎」など懐かしい駄菓子が並ぶ。
番組には出会った家族の自宅にお邪魔するという裏企画もあり、外国の人たちの暮らしぶりが見られるのも嬉しい。自宅の値段を聞くというのはいささか無粋だが……。115人に食べ比べてもらった結果、1位は「ヤンヤンつけボー」に。チョコをつけて食べる工程が珍しいとのことだった。

もうひとつの串カツ編では、熱々を食べてもらうために串カツ職人を連れて行くことに。街頭インタビューで決まった「レンコン」「紅しょうが」「牛串」「キス」「エビ」「しいたけ」「ささみ梅しそ」のほか、山内が「アスパラ豚巻き」、濱家が「うずらの卵」、そして串カツ大好きももクロの佐々木彩夏も参加し、「タラコ」をチョイス。全10品が決まった。
行き先はフランス・ニースとモナコ。日本と同じ食材があるか否かなど、現地の食事情を調査。残念ながら「キス」「タラコ」「紅しょうが」は見つからず。「キス」は「スズキ」で代用。フランスでは魚の卵を食べる習慣がないそうで、「タラコ」は「ボラの卵」で代用。「紅しょうが」は生の生姜から手作りで。
こちらも、108人が試食し、1番を選んでもらう。10位は「梅しそ」で梅の酸味が苦手、9位は「レンコン」で食感が嫌だなどなど。あのシャキシャキ食感がレンコンの醍醐味なのに……。「紅しょうが」の人気は意外にも高く5位だった。

スーツケースに詰め込まれたメイドインジャパンが、世界の人々を驚かせたり、喜ばせたり。そのリアクションを楽しみながら、テレビで異文化交流。月曜の夜、日本と世界のあいだに、笑顔の架け橋がかかる。


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プロフィール

桧山珠美(ひやま たまみ)
HBF MAGAZINEでは、気になるテレビ番組を独自の視点で読み解く連載『日日是てれび日和』を執筆中。
編集プロダクション、出版社勤務を経て、フリーライターに。
新聞、週刊誌、WEBなどにテレビコラムを執筆。
日刊ゲンダイ「桧山珠美 あれもこれも言わせて」、読売新聞夕刊「エンタ月評」など。


“HBF CROSS”は、メディアに関わる人も、支える人も、楽しむ人も訪れる場所。放送や配信の現場、制作者のまなざし、未来のメディア文化へのヒントまで──コラム、インタビュー、レポートを通じて、さまざまな視点からメディアの「今」と「これから」に向き合います。

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