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『トットの欠落青春記』-芦田愛菜が生きた“徹子の青春”

▶▶▶ 『日日是てれび日和』──気になる番組を読み解く週一コラム 桧山珠美 

【第6回】24時間テレビ48 ドラマスペシャル『トットの欠落青春記』(日本テレビ・8月30日21時50分ごろ)

今年も『24時間テレビ』が放送された。いまや“夏の風物詩”としてすっかり定着したこの番組、今年のテーマは「あなたのことを教えて」だった。

酷暑のなか、マラソンランナーの横山裕は完走することができるのか、とか、体調不良で急遽、出演見合わせのKing & Prince高橋海人の代役として、ダンス企画に参加することになったTravis Japan松田元太が、一から振り付けを覚えて当日、無事、踊りきることが出来るのか、など、事前の話題は尽きない。

とりわけ、楽しみにしていたのが、ドラマスペシャル『トットの欠落青春記』。芦田愛菜が黒柳徹子の青春時代を演じるものだ。ほかに、徹子の母・朝に尾野真千子、父、守綱に小澤征悦。
物語の導入部としてまずは、徹子の子ども時代のエピソードを少々。机のフタを何度もパタパタしたり、チンドン屋さんを呼んだり……。『窓際のトットちゃん』にも出てくる有名な話で、ほかの生徒の邪魔になるということで、小学校を3か月で退学させられるというもの。さらに、その次に行くことになるトモエ学園で、徹子の話を4時間も聞いてくれて、「君はほんとうはいい子なんだよ」と認めてくれた小林先生のことなど……。

そして、ドラマがスタートした。
なんといっても、芦田愛菜のなりきりぶりが素晴らしかった。早口で淀みなく喋るところはもちろん、全身から醸し出す明るく快活な姿は徹子そのもの。今回はNHK専属テレビ女優第1号になるまでが描かれたが、試験や面接でことごとく失敗するも、その「無色透明」なところがいい、と合格するのも納得の純真ぶりだった。
また、徹子が何をしても何を言っても、「いいわねえ」と肯定する母に子育ての極意を見た気がした。
余談だが、芦田愛菜が名子役として知られることになった『Mother』(2010年・日本テレビ)で、彼女を育児放棄する母親を演じたのが尾野真千子だった。ふたりが時を経てわかり合える母娘として共演したことには感慨深いものがあった。

これまでにも、満島ひかり主演『トットてれび』(2016年・NHK)や、清野菜名主演『トットちゃん!』(2017年・テレビ朝日)など黒柳徹子を主人公にドラマ化された作品はいくつもある。さらに、現在、BSでは『チョッちゃん』が放送中だ。
しかも、今年は戦後80年、放送100年ということもあり、全世代が知っていて、なおかつ、興味を持つ人物といえば、徹子さんくらいしかいないのも事実。先日も、『音楽はかつて“軍需品”だった~幻の楽譜に描かれた戦争~』(Eテレ)というドキュメンタリーを見ていたら、徹子さんが時代の証言者として登場していて、こんなところにも徹子さんが……! と思った。
NHK専属テレビ女優第1号の徹子さんが今も現役で『徹子の部屋』のMCを務めて、視聴者を楽しませてくれることに感謝したい。

第50回放送文化基金賞贈呈式で「放送文化基金50周年記念賞」を受賞した黒柳徹子さん

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プロフィール

桧山珠美(ひやま たまみ)
HBF MAGAZINEでは、気になるテレビ番組を独自の視点で読み解く連載『日日是てれび日和』を執筆中。
編集プロダクション、出版社勤務を経て、フリーライターに。
新聞、週刊誌、WEBなどにテレビコラムを執筆。
日刊ゲンダイ「桧山珠美 あれもこれも言わせて」、読売新聞夕刊「エンタ月評」など。


“HBF CROSS”は、メディアに関わる人も、支える人も、楽しむ人も訪れる場所。放送や配信の現場、制作者のまなざし、未来のメディア文化へのヒントまで──コラム、インタビュー、レポートを通じて、さまざまな視点からメディアの「今」と「これから」に向き合います。

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