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放送文化基金賞の受賞者へのインタビュー、対談、寄稿文などを掲載します。

2022年10月3日
第48回放送文化基金賞

レポート

テレビドラマ番組 [演技賞]

自然体の演技
笑福亭 鶴瓶

 優秀賞を受賞した『プレミアムドラマ しずかちゃんとパパ』(AX-ON、NHK)における演技が評価され、笑福亭鶴瓶さんに演技賞が贈られた。
 番組の舞台は父一人娘一人の父子家庭。 父・純介(笑福亭鶴瓶)は生まれながらに耳が聞こえないろう者。職人気質だが愛嬌のある純介と感情豊かで明朗な娘の静(吉岡里帆)は“町の名コンビ”。父の耳代わり口代わりを務めてきた静がひょんなことから出会った男と恋に落ち、結婚するまでの親離れ子離れを描く。
 番組は「ろう者を社会的弱者と決めつけるべきではないとする現代的視点が盛り込まれ、ろう者の親の耳代わり口代わりを務めるコーダ(CODA=Children of Deaf Adult/s)の人生を実にリアルに描き出し、誰かのことを気にかけながら生きる大切さを感動的に描いた」と評価された。

 河合祥一郎テレビドラマ番組審査委員長は、笑福亭鶴瓶さんの演技について「ろう者であっても普通の人と何ら変わらない普通の生活を送っている作品が示そうとするそうしたろう者の実際を、驚くほどの自然体で示した演技力は高い評価に値する。手話を交えての演技はさぞかし大変だったのではないかと推察されるが、持ち前の笑顔が魅力の人柄や、懐の深い人情味をも駆使して、娘の愛すべき“父”としての存在感を示してくれた。人の心をほっこりさせてくれる不思議な力を持つ人だが、その力を演技でも十全に発揮してくれた。人間観察力に優れている人だからこそ、演技においてもその力が活かされたのであろう」と講評した。

 贈呈式で笑福亭鶴瓶さんは「どうもありがとうございます。大変な賞をいただきまして」と感謝の言葉を述べた後、ドラマを受けた時のことを振り返って「独演会とかあったんで、『ドラマは出られへんで』って言ったんです。そしたらマネージャーが『セリフあんまりないです』って言ったんですけど、セリフどころかもう手話がものすごく大変で。本当大変でしたよ(笑)」とユーモアを交えて語った。またドラマのワンシーンについて「(吉岡里帆さん演じる娘に)お前がいじめられるのは、俺が“ろう”やからか?というシーンがあるんです」と実際にその手話を見せながら、「この“間”…ね。セリフを喋ってないのに、この瞬間、涙がぶわっと出たんですね。手話に“間”がある。“このドラマを受けてよかった”と思いました。いろんな言葉を使う仕事をしてるんですけど、手話に“間”があるとわかったときに“素敵なドラマやな”と思いました。スタッフが苦労しましたので、こんな賞をいただいて本当に嬉しかったです。ありがとうございました」とスピーチした。