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欽ちゃんと浜木綿子、44年ぶりの再会が生んだ感動 『ボクらの時代』(フジテレビ・8月17日放送)

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毎週楽しみにしている番組のひとつに、日曜朝の『ボクらの時代』(フジテレビ・あさ7時)がある。さまざまな分野で活躍する3人が自由にトークをするもので、進行役にあたるMCがいないので話があちこち飛んでしまうこともあるが、それもまた良し。ファミレスで友人同士が延々とおしゃべりしているような自然な会話が魅力だ。

時には映画や舞台の番宣では!? と思われる回もあるが、撮影現場や稽古場での裏話など共演者ならではの興味深い話を聞くことが出来るので、それはそれで面白い。が、やはり、そんな番宣抜きにして、気心知れた3人のとりとめのない会話がなんとも楽しい。

8月のラインナップは、高橋優×大竹しのぶ×大倉忠義(3日)、山西惇×大倉孝二×ケラリーノ・サンドロヴィッチ(10日)。そして、17日が萩本欽一×浜木綿子×柴田理恵。これは見ものだった。萩本と浜が会うのはなんと44年ぶりというから驚く。今回は浜が会いたい2人ということで人選されたようだが、その理由が「あちらに行く前に会っておきたかった」とのことで、感動的な再会からスタートした。

まもなく90歳を迎える浜と、84歳の欽ちゃん。浜は欽ちゃんにとってあこがれの存在だという。修行時代、“うまいが笑う”と教えられた欽ちゃん。その意味は、「芝居がうまいほうがお客さんは笑う。で、笑わすんじゃなくて、うまいが笑うんだ」ということ。それができているのが浜で、「凄い人がいるなあ」と。

そこで、番組(欽ちゃんドラマ・『Oh!階段家族』!!)をやるときに、浜木綿子さんを、とオファーしたものの、「自分は浜さんが憧れだから、一緒に芝居できないから、“一緒のシーン作んないでください”って言ったんだよ。恥ずかしくて」と話す欽ちゃんに、「それで(共演が)なかったんですか?」と浜。とても半世紀前の話とは思えないほどリアルな話しぶりに驚く。

「何気なく鼻歌歌う時、あります?」と欽ちゃんが訊くと、「歌います。家で。宝塚の歌をときどき」と浜。「いいねえ、それ、聞きたいね」という欽ちゃんに向かって、間髪入れず「春、すみれ咲き、春を告げる~」と『すみれの花咲く頃』を美しい声で口ずさむ浜。舞台で声が出なくなって以来、公の場で歌うことを封印していたというが、「こういう時、歌わない人、欽ちゃんお嫌いでしょ」と浜。

これには欽ちゃんも感激していた。

80歳でYouTubeを始めた欽ちゃん。「80って面白いねっていう言葉を探す旅をしたい」と夢を語る欽ちゃん。浜も「絵を描こうかな、今、歌ったら声が出たから歌ってみようかな」と。そんな2人を見て、「希望が湧いてきた」と66歳の柴田。

SNS時代にあって、会話よりも文字でコミュニケーションをとることが多くなったが、やはりこうして、顔を突き合わせておしゃべりすることに勝るものはない。元気な先輩たちに力を貰った。

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プロフィール

桧山珠美(ひやま たまみ)
HBF MAGAZINEでは、気になるテレビ番組を独自の視点で読み解く連載『日日是てれび日和』を執筆中。
編集プロダクション、出版社勤務を経て、フリーライターに。
新聞、週刊誌、WEBなどにテレビコラムを執筆。
日刊ゲンダイ「桧山珠美 あれもこれも言わせて」、読売新聞夕刊「エンタ月評」など。


“HBF CROSS”は、メディアに関わる人も、支える人も、楽しむ人も訪れる場所。放送や配信の現場、制作者のまなざし、未来のメディア文化へのヒントまで──コラム、インタビュー、レポートを通じて、さまざまな視点からメディアの「今」と「これから」に向き合います。

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