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成果報告会

「喫茶らじお」~おしゃべりがつなぐ、まちとひと~【高橋紘子】

成果報告会2025

『喫茶らじお』は、過疎化が進む新潟県阿賀町を舞台に、遊休施設や空き店舗を活用して近隣住民に集まってもらい、お茶を飲みながら交流し、その様子をポッドキャストで配信していくプロジェクト。
地元の放送局と企業が手を取り合い、実行委員会を立ち上げ、町に賑わいと人々の活気を取り戻すためにスタートしました。
名前のとおり、まるで喫茶店でくつろぐような感覚で、地元の人や外から訪れた人が「声」を交わし、つながれる場所を目指しています。
 本稿は、2025年3月7日にホテルルポール麹町で開催された成果報告会にて、実行委員の高橋紘子さん(新潟放送)が発表された内容をもとに、ご本人にご寄稿いただいたものです。

過疎の現実を目の当たりにして

「テレビのチカラで地域を元気にしたい」ローカル局のテレビディレクターとして、長年思い続けてきたことだ。携わっていた情報番組の企画で、新潟県の県境ばかりを取材していたときのこと。「俺の代で棚田をやめるわ、儲からないから」「この町から逃げ出したいよ…」地域住民にマイクを向けると返ってきた言葉だ。市街地から遠く離れた過疎が進む地域の現実を目の当たりにした、ショッキングな出来事だった。「このままでいいのかな…」ザワザワする気持ちを抱えながら、私はアクションを起こすことにした。それが、空き店舗や遊休施設を使って、まちの賑わいづくりに取り組む『喫茶らじお』だ。

『喫茶らじお』の開催

開催場所は、福島県境の新潟県阿賀町。約9,000人が暮らし、その半数は高齢者が占めている。人口減少により、交流の場が少なくなっているこのまちで、人々が気軽に集い、語り合える『居場所』をつくる試みである。フリーアナウンサーの伊勢みずほさんが喫茶店のマスターに扮し、淹れたてのドリップコーヒーをふるまう。雪室で低温熟成した豆を使用した、まろやかな味わいの本格コーヒーを飲みながら、おしゃべりが始まる。

夢や希望はまだまだある!

「山を整備すればトリュフが採れるのよ、長生きしてトリュフハンターになるのが夢なの!」「移住した当時は苦労したよ~、だけど船頭になってからは飲み会にひっぱりだこ!それでは舟歌を一節」「“ふーつゆ”って知ってか?お麩を使った精進料理で、たぎった油をだし汁の中にジャーっといれると、うんまいだ!」と、興味津々のおしゃべり(時には方言まじりの熱い語り)が、仮設のカウンター越しに繰り広げられる。聞きだし上手なアナウンサーもさることながら、住民たちの話しの巧さに圧倒されっぱなしのひとときだ。「このまちにはなにもない」と言うみなさんの中には、地域の誇りがあるのだ…!夢や思いを語り合う、これこそが地域活性化そのものではないだろか。

おしゃべりは地域を越えて

『喫茶らじお』の楽しいおしゃべりはポッドキャストで隔週土曜日に配信中だ。動画・音声コンテンツは、インターネットの配信プラットフォームの普及により、放送の枠を越えて全国、世界へ届けることができるようになった。2025年4月に実施した喫茶らじおには、県外のリスナーが駆け付け、阿賀町民だけでなく、多様な人が交わる機会となった。普段は触れ合わない人たちが出会い、笑い、刺激し合う…ローカル局が様々な垣根を超え、地域にできることがまだまだあるのではいないかと、可能性を感じている。 喫茶らじおのキャッチコピーは『たまには、お茶べりしませんか?』さぁどうぞ、どなたでも。温かいコーヒーを片手に、地域の人々との素敵な出会いを体験してみませんか?

『喫茶らじお』はradiko,Spotifyで配信中!

*2024年度イベント事業部門助成「過疎地域における遊休施設の利活用を考える住民参加型音声コンテンツ事業」(喫茶らじお実行委員会)

「喫茶らじお」~おしゃべりがつなぐ、まちとひと~

高橋紘子 プロフィール

2008年 株式会社新潟放送入社。テレビディレクターとして情報番組・ニュース番組に従事。『「日本のチカラ」世界がとりこ!高級爪切り~鍛冶屋の工場革命』民間放送教育協会文部科学大臣賞受賞。『俺は工場の鉄学者』日本民間放送連盟賞テレビ教養番組部門優秀賞受賞。2021年~放送局による地域プロデュースに携わる。

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