放送文化基金賞
【第50回放送文化基金賞】放送文化の講評
放送文化 講評
河野尚行 委員長
放送を成り立たせる分野の多様さに毎回気づかされるが、今回はその思いを特に強く感じた。審査では、既に大きく評価され、多くの受賞歴があるものについては、この際、除こうという声もあり、議論の末、次の4件を選出した。
●大森洋平(NHK)
ドラマにおける時代考証での功績。NHK番組制作ディレクターからの転身、平安時代から昭和に至る様々なドラマの時代表現に適切な助言を繰り返し、その成果を出版する。許容範囲も示す実践的な時代考証は、ドラマ制作者達の実用的なバイブルになっているという。
●岡山放送 情報アクセシビリティ推進部
30年前から幅広く手話放送を実施。地域のろう団体と共に立ち上げた「OHK手話放送委員会」で、テレビ独自の手話表現を工夫する。最近は様々なスポーツの手話による中継放送も地元企業や各種団体の協力で実施。「情報から誰一人取り残されない社会」を目指す放送局の姿勢を示す。
●『アイヌ語ラジオ講座』制作チーム(STVラジオ)
明治時代からの同化政策でアイヌ語の話者が年々減少、日常会話での使用者も減る。それはアイヌ文化そのものの衰退も意味する。こうした流れにSTVラジオでは30年前から初心者向けのアイヌ語講座を開始、いろいろ工夫を凝らして北海道のアイヌ文化の保存に一役買っている。
●『笑味ちゃん天気予報』制作スタッフ(RSK山陽放送)
月曜〜金曜の夕方7時前の10分。中四国地方で一番の農業地帯である岡山県の田畑で働く地元農民の姿を織り交ぜての天気予報。空の下の産業には、天候の情報は最大の関心事だ。女性キャスターのリポートも現地に溶け込み、実に楽しい。番組に参加する地元民も、番組にノリノリで清々しい。10年続く、地域放送局の見事な地域サービスである。