放送文化基金賞
第46回放送文化基金賞「【個人・グループ部門】個人賞」の受賞のことば
演技賞
柄本 佑 土曜ドラマ 心の傷を癒すということ

『心の傷を癒すということ』の事を語ろうと思うと沢山の気持ちが頭の中に錯綜してまとまった言葉がなかなか出てきません。それだけこの作品は自分にとって特別な作品でした。
ただ一つはっきり言葉に出来ることは、安克昌さん一家へプレゼントを贈る気持ちで撮影に臨んだということです。それは僕だけに限らず安達監督はじめBKスタッフ全員の中にあった想いです。私的と言ってもいい程です。そんな私的な想いをみんなで愚直にまっすぐ貫いたからこそ今回の賞に繋がったのだと思います。ありがとうございます。
そして安家の皆さん、BKスタッフの皆さん、ヤッタネッ!
演技賞
桜井ユキ よるドラ だから私は推しました

初めて台本を読ませて頂いた時の感覚を今も鮮明に覚えているのですが、これから始まる撮影の日々と、この役と生きていくという楽しみ、緊張感、不安、様々な感情が入り混じり泣きそうになった事を覚えています。
今回、初めての主演という立場で参加させて頂いて身に染みた「役を成立させて頂いてる」という事。本当に実感しました。そんなみんなで支え合い完成した作品に対し、賞を頂けた事。今すぐNHK大阪に行きスタッフキャストの皆んなでハイタッチをしたい気持ちでいっぱいです。
スタッフキャスト、そして観てくださった方々皆様に心から感謝の気持ちでいっぱいです。
出演者賞
八木勝自 KNBふるさとスペシャル 19人を殺した君と 重い障がいのある私の対話

今回の受賞本当にありがとうございます。
私が受賞をする事で、障碍者、健全者を苦しめ、差別に追い込んでいる優生思想の問題を考える機会になればと思っています。
多数の障碍者を殺害したのは全く許せない事です。しかし、私が拘置所で会った植松は好青年でまじめな人でした。彼を〈殺害の実行〉に追いやったのは、間違った正義感の優生思想であり、それを植え付けたのは社会であって、私たち一人一人なのです。
このような事件が起きない社会を作って行きましょう。
演出賞
加藤 拓 スペシャルドラマ ストレンジャー 〜上海の芥川龍之介〜

中国発のウィルスが世界を変え、『ストレンジャー 〜上海の芥川龍之介〜』を制作していた一年前とは隔絶の感がありますが、私たちが体験した中国の活力と喧噪はいまも鮮明に記憶の中にあります。100年前の芥川龍之介と同じく、われわれスタッフもまた中国映像産業へのストレンジャーであり、活気にあふれた日中のコラボレーションはとても充実したものでした。今回の賞を励みにこれからも新しい挑戦をつづけたいと思います。大変光栄な賞をいただきスタッフを代表して感謝を申し上げます。
出演者賞
杉田秀之 奇跡体験!アンビリバボー 仲間たちとの12年越しの約束SP

12年越しに果たした富士登山の約束、頂上で見た景色の記憶は御来光でも絶景でもなく、涙と笑顔に溢れた仲間の姿でした。人は誰かの支えがあればどんな困難も乗り越えられることを、仲間が教えてくれました。私たちのストーリーを番組にして頂いたこと、そして何よりアンビリバボーな出演者賞の受賞をとても嬉しく思います。
躊躇してしまう一歩を誰かの力を借りて踏み出すこと、誰かの踏み出す一歩を応援してあげること、そんなアイデアが今後もメディアを通して社会に広がることを願っております。
出演者賞
アーサー・ビナード 文化放送報道スペシャル 戦争はあった

ぼくがいちばん行きたくないところ、誰も行かせたくないところが「忘却の彼方」だ。とは言え、「忘れるな!」と叫んでも人々の記憶力が増すわけではない。ただ、もし話の面白さが聞き手にとって、忘れられない域に達すれば、語り継がれる可能性が生まれる。「戦争はあった」という番組では、小松左京氏の洞察力と表現力を思いっきり借りたが、文学を作り上げる者はそもそも忘却を嫌うのだと深く頷いた。彼方へ片付けられた大事な先人たちを再発見しながら、これからも語っていきたい。その支えを与えていただき、幸甚です。