放送文化基金賞
第42回放送文化基金賞「【番組部門】個人賞」の受賞のことば
演技賞
佐藤 健「TBSテレビ60周年特別企画 日曜劇場 天皇の料理番」

ありがとうございます。共演者、スタッフの皆様、作品に獲らせていただいた賞だと思います。改めてこの作品に出演できたことを嬉しく思います。役者人生の中でも、なかなかこのような作品に巡り会うことは簡単なことではないのですが、今後もこの作品に恥じぬ仕事をしていけたらと思っています。気を引き締め直し励みます。今回は選んでいただき本当にありがとうございました。
演技賞
樹木希林「福岡発地域ドラマ いとの森の家」

いとの森の家は美術も頑張った作品です。水の流れを家の前にそそぎ入れ、橋を渡し、家の中は丁寧に時代を表わしていました。動きやすく使いやすく。地方局でドラマを作ることが少いのに演出家の思いが皆を動かしました。戦争は敵国だけでなく自国人どうしの思惑でも悲劇を起こします。アインシュタインが言ってました。「無限なものが2つある 宇宙と人間の愚かさだ」。さてさて誉められて木に登るくらいの愚かさは許して下さい。
企画賞
小山田文泰「しあわせ食堂 笑顔と孤独と優しさと」

以前、限界集落を見つめる番組を作った時に感じた事があります。それは「人は誰でもドラマチックに生きている」という事。子を思う気持ち、親を心配する気持ち、故郷を愛する気持ち、そんな気持ちがすでにドラマなのだと。
以来、市井の人々の声に耳を傾け、光や風や四季の移ろいに目を配り、その空気ごと編み込んで届けたい、そう思って番組を作ってきました。
今回の取材にご協力いただいた皆さんと、目指すべきものへ向かって共に邁進してくれた番組スタッフに、心から感謝いたします。
演出賞
羽根井信英「100分de平和論」

特段変わった演出をしようと番組を作りませんでしたので「演出賞?何で?」というのが偽らざる気持ちです。「平和」は凡愚の我が手に到底余るテーマで、実地取材も予算的に何一つできない中、やったことは唯、先生方が選ばれた本に向きあうことでした。昔の名著に書かれた内容が「これってまんま今のことじゃん」とつながる驚き。国家の立場ではなく一人の人間として考えること。名著のメッセージをうまく伝えられたか甚だ心もとないですが、今後もより良い「伝え手」になれるよう、歩んで参りたいと思います。
脚本賞
瀬戸山美咲「FMシアター あいちゃんは幻」

これまで舞台の世界で活動してきた私に、今回の脚本を書くチャンスを与えてくださった笠浦ディレクターに心から感謝いたします。そして脚本を作品として立ち上げてくださった素晴らしいキャストとスタッフの皆様、本当にありがとうございました。『あいちゃんは幻』は、時が経つと失われてしまう、でも人と人のあいだに確かに存在した「感触」を残したいと思って書きました。人と人が出会い、かすかにつながった。そのつながりに少しだけ救われた。そんな小さな物語に潜む力を信じて、これからも書いていきたいと思います。