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「母と子のフジテレビ」が帰ってきた『ぱちぱちるんるん』

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【第35回】『ぱちぱちるんるん』(フジテレビ・2026年4月5日放送)

「母と子のフジテレビ」が帰ってきた『ぱちぱちるんるん』

桜満開の春。新たな出会いの季節に、新番組も続々とスタート。なんとなく心おどる季節でもある。

『ぱちぱちるんるん』はそんな新番組のなかでも、ワクワク度はNo.1だろう。いってしまえば、子ども番組なのだが、こんなに楽しい番組を子どもにだけ独占させるのはもったいない。アニメあり、歌あり、脳トレあり…。カラフルな画面を眺めているだけでもウキウキしてくる。新しさと懐かしさが絶妙に合わさり、小さいお友達はもちろん、大きなお友達も楽しめる番組になっている。

ひとつひとつのコーナーは短く、目まぐるしく変わる。それはスマホで動画コンテンツを見ることに慣れている子どもたちを飽きさせないようにする工夫と思われる。

たとえば、どんなコーナーがあるかというと…。

個性豊かな列車たちが主人公のアニメ『チャギントン』や、あの食べ物とあの食べ物を足してみたらどうなるかを実験する「ぱく+ぱく」。初回は、醤油とマンゴーを組み合わせると大トロの味になるとやっていた。そうか、今の子どもたちは大トロの味を知っているのか、と妙なところに感心したり…。

「ぱちるんソング」では、EDM(エレクトロニック・ダンス・ミュージック)にアレンジした童謡「ちょうちょう」で、子どもたちが披露するダンスが、あたりまえだけどいまどきのヒップホップ系なのに驚いたり…。

掃除ロボットの目線で、部屋を掃除する様子を映す「はたらくメカのひとりごと」にも小さな発見があった。ほかにも、お笑い芸人(初回はツンツクツン万博とにゃんこスター)がネタを披露する「げら+げら」、視聴者の寝ぐせ写真を紹介する「寝ぐせミュージアム」などなど。

これらが<新しさ>だとして、<懐かしさ>のほうはといえば、ガチャピンやムック、ミカンせいじん、コニーちゃんなど過去のフジテレビの子ども番組に登場していた人気キャラクターたちの再登場。それに加えて、昔の子どもたちが遊んでいたおもちゃを紹介(この日はエポック社の「ポカポンゲーム」)し、実際に遊ぶ「ふしぎなおもちゃ箱」コーナーや、極め付きは、「めいきょくげきじょう」と題した懐かしのキッズソングを見せるもので、この日は、「およげ!たいやきくん」と「ドキドキドン!一年生」だった。

ふたつとも、懐かしの『ひらけ!ポンキッキ』のオリジナルナンバーで、当時と同じアニメを流す演出にも懐かしさ倍増だ。「およげ!たいやきくん」のリリースは1975年ということで、実に50年も前の曲ということになる。今回、このようなかたちで甦り、半世紀を経た今も子どもたちに歌い継がれていくとすれば、これほど幸せな循環はない。

思い出されるのは「母と子のフジテレビ」という言葉だ。ママとあそぼう!『ピンポンパン』に始まり、『ポンキッキ』シリーズ、『ウゴウゴルーガ』、そして、『世界名作劇場』――かつてフジテレビは、子どもに優しい局だった。それが、視聴率競争や少子化の波のなかで方向転換し、子ども番組はBS、CSへと移され、地上波からほとんど姿を消してしまった。現在残っているのは、『サザエさん』と『ちびまる子ちゃん』くらいのものだ。

昨年の社を揺るがすような出来事を経て、その結果、原点である「母と子のフジテレビ」に回帰し、子ども番組に活路を見いだそうとしているのかもしれない。

私たちが子どもの頃には、子ども向けの番組が山ほどあった。子どもの頃に出会ったテレビは記憶の奥でずっと光り続けている。あの頃のように、子どもたちが目を輝かせて見つめるテレビ番組は何処へ。良質な子ども番組は未来の視聴者を育てる。フジテレビの挑戦を素直に応援したい。

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プロフィール

桧山珠美(ひやま たまみ)
HBF MAGAZINEでは、気になるテレビ番組を独自の視点で読み解く連載『日日是てれび日和』を執筆中。
編集プロダクション、出版社勤務を経て、フリーライターに。
新聞、週刊誌、WEBなどにテレビコラムを執筆。
日刊ゲンダイ「桧山珠美 あれもこれも言わせて」、読売新聞夕刊「エンタ月評」など。


“HBF CROSS”は、メディアに関わる人も、支える人も、楽しむ人も訪れる場所。放送や配信の現場、制作者のまなざし、未来のメディア文化へのヒントまで──コラム、インタビュー、レポートを通じて、さまざまな視点からメディアの「今」と「これから」に向き合います。

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