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アイディアはある!だが金はない!?│「放送作家」というナゾの職業を記録する

放送作家の証言プロジェクト 村上卓史(日本放送作家協会 副理事長)

鈴木おさむさんと内村宏幸(日本放送作家協会理事長)

「アイディアはあるけど、資金が…」放送作家たちの“あるある”から始まったプロジェクト。レジェンドから現役まで、放送作家自身の言葉でその仕事と時代を記録する「証言アーカイブ」。さらにトークイベントへと広がった取り組みを、プロジェクトメンバーで放送作家の村上卓史さんに寄稿していただきました。

アイディアはある!だが金はない!?

冒頭の一言はまさに『クリエイターあるある』。もちろんテレビ局や制作会社に企画を出していくつかの番組化はそれなりに実現してきましたが、あくまで視聴者を意識した人気コンテンツ作り。それが本道ではあるのですが、それとは別に伝えたいことがずっと頭の中にありました。

とはいえ、地道な企画は主要メディアではなかなか採用されにくいのが実状。サブスクなどが生まれて媒体が多様化したこともあり、低コストでの配信は可能になりましたが一定レベルを維持するための活動資金はやはり不可欠です。

そして、残念ながら放送作家になるような人間はお金を生み出したり、管理するのが大の苦手。おそらく日本一請求書を出すのが遅い集団だと思います。ただコンテンツ制作への情熱はかなり持ち合わせています。

奇しくも放送100周年という節目のタイミングの前後。その一端を担ってきた放送作家の役割を当事者たちに語ってもらいたいというモチベーションがあり、有志によるプロジェクトチームが立ち上がりました。後世のクリエイターに向けてアーカイブとして残すことはできないのか。そんな計画を練っていたのですが、やはり資金調達がままなりませんでした。このままでは計画中止もやむなしか…と悩んでいたところ、放送文化基金の助成制度を知りました。

考えた当初は正直「放送文化」という概念は希薄でしたが、実際に募集要項を確認したところ、まさに主旨に合う企画として成立することが判明。そこから先は放送作家の得意分野です。時にはあることないこと書くのが…もとい無から有を生み出すのが真骨頂の仕事。企画意図から実現に向けての準備、さらには未来への展望などをしっかり書き込んで申請しました。その結果、ありがたいことに委員の皆様の承認を得て助成していただけることとなりました。まさにチームで長年抱いていた夢が実現した瞬間です。

放送文化遺産「放送作家の証言アーカイブ」

制作資金ができたのですから、あとは実践あるのみ。まずは『放送作家』という、聞いただけでは何をしているのかよくわからない謎の職業を多くの人たちに理解してもらうためのディスカッションをプロジェクトチーム内で開始しました。

会議を重ねるうちに、歴史を語ってもらうだけではなく、若い世代が憧れる職業として認知してもらいたい、という要望も出るようになりました。さらに進めていくと、同じ職業であるにも関わらず、時代によって役割や環境が大きく違うことも判明しました。

奥山コーシン先生へのインタビュー

そこでシリーズ前半はレジェンドと呼ばれる超ベテラン放送作家を中心にインタビュー動画を制作しました。ドリフターズや欽ちゃんといった昭和のテレビの主役たちと番組作りをしてきた大御所たちに在りし日のテレビ業界の舞台裏を語ってもらったのです。創成期ならではの試行錯誤の日々、パイオニア制作者たちの熱き思い、そして今では考えられない破天荒な環境。まさに後世に残すべきアーカイブ作品となりました。なかでも多くのお弟子さんを育てた故・奥山コーシン先生のインタビューはまさに未来のクリエイターへの提言でした。故人を偲ぶお別れの会でミニ上映会を行い、そこで弟子たちが涙したという報告を受けた時、このプロジェクトを推進してよかったと心から思ったものです。

ダンカンさんとインタビュアーのたむらようこ

第2期以降は平成から現在のヒット番組に携わってきた売れっ子放送作家の皆様にご出演いただきました。こちらでは現代のメディア事情につながるエピソードが数多く語られ、放送業界を目指す若者たちへのよき指針となりました。2年前に放送作家を引退した鈴木おさむさんにリタイア直前にご登壇いただいたことや、タレント&ブレーンを兼任するたけし軍団のダンカンさんにお話いただけたことで目玉もできました。これも助成金あってのキャスティングですので関係各所に感謝しかありません。

▶️「放送作家の番組証言アーカイブ」ページ(日本放送作家協会)

進化するコンテンツ!動画からイベントへ!

これまで17人のクリエイターに動画へご出演いただくことで多くの反響を得ましたが、配信によって得たノウハウでさらなる進化系の企画を作ることができました。それが放送番組センターさんとの共催による放送作家トークイベントです。メディア業界に興味をもつ若者が気軽に参加し、かつ直接クリエイターと接する場として設定しました。

2025年トークイベントの様子

日本放送作家協会の協力により、初回から内村宏幸理事長(『「笑う犬」シリーズ』『サラリーマンNEO』『LIFE!』)を筆頭に中野俊成さん(『アメトーーク!』『大改造‼劇的ビフォーアフター』)、矢野了平さん(『高校生クイズ』『くりぃむクイズミラクル9』)、大井洋一さん(『水曜日のダウンタウン』『チャンスの時間』)といった放送作家オールスターと言っても過言でないメンバーが参加してくださいました。トップクリエイターである彼らが企画をどう考えるのか?メディア業界の今後は?多岐に渡るテーマで語り合い、多くのお客様が聴講していました。特に最後の質問コーナーでは学生を中心に双方向の意見交換が実現し、配信では果たせなかった課題をクリアすることができました。イベントゆえに多くの人が観覧できなかった点についても後日ネット配信をすることで解決しました。

▶️2025年トークイベントの開催レポートと動画(放送ライブラリー【公式note】)

2026年トークイベント出演者
左から宮地ケンスケさん、内村宏幸理事長、伊藤正宏さん、山名宏和さん、桝本壮志さん

結果的に長年にわたって配信をし、その集大成としてイベントを開催したことで当初の目的を達成できたようです。ちなみに今年行われた第2回の伊藤正宏さん(『めちゃ×2イケてるっ!』『ポツンと一軒家』)、山名宏和さん(『坂上&指原のつぶれない店』『行列のできる相談所』)、桝本荘志さん(『世界まる見え!テレビ特捜部』『ナニコレ珍百景』)、宮地ケンスケさん(『全力!脱力タイムズ』『千鳥のクセスゴ!』)の出演回も好評で多くの観客たちの知的好奇心を満たしていました。

▶️2026年トークイベントの開催レポート(放送ライブラリー【公式note】)

今後にむけて…放送作家の闘いは続く!?

とはいえ、まだまだ最終目標には到達していません。それぞれ再生数も観客動員も及第点ではありますが継続することでさらに認知度を上げていく使命は残されていると考えています。そのためには新たな起爆剤が必要です。

具体的には放送作家と演出家という立場の異なるクリエイターによるトークセッションなども興味深い企画になりえるでしょう。また質問コーナーなどでのやりとりをヒントに、学生と放送作家が直接対話しながらコンテンツ制作していくワークショップなども検討中です。チーム内だけでなく、様々な関係者からアドバイスを受けつつ、最終目標に向けて前進していきます。新たな時代に即した配信やイベントを放送作家集団である当プロジェクトらしい企画力と実行力で継続していく所存です。

冒頭の「アイディアはある!だが金はない!?」が看板に偽りにならぬよう、チーム一丸で精進しますので関係者の皆様、引き続きお付き合いいただければ幸いです。

村上卓史(むらかみたかふみ)
放送作家、日本放送作家協会 副理事長
1966年9月26日生まれ。大学在学中にテリー伊藤に師事し、テレビ業界へ。『天才・たけしの元気がでるテレビ!!』『ねるとん紅鯨団』で88年に放送作家デビュー。現在、『ウイニング競馬』『クイズ!ドレミファドン』など担当。著書に「放送作家という生き方」。日本放送作家協会副理事長。東京馬主協会理事。

2020年度~2024年度 助成 人文社会・文化部門/イベント事業部門
放送作家の証言プロジェクト

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