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地図というレンズで街の歴史を掘り起こす『マップタイムトラベル』

▶▶▶ 『日日是てれび日和』──気になる番組を読み解く週一コラム 桧山珠美 

【第34回】『マップタイムトラベル』(NHK総合・2026年3月26日放送)

深夜にテレビを見ていたら面白そうな番組に出くわした。『マップタイムトラベル』というもので、テーマは「山手線の謎」。スタジオ中央に据えられた巨大な立体マップをはじめ、さまざまな地図を駆使しながら、山手線の名の由来や、路線の成り立ち、どのように発展していったか、その謎を探るものだった。

MCは林修先生。さらにもうひとり、陰の声・ハチとして進行を手伝うのは「ワンピース」ルフィの声でおなじみの田中真弓。ゲストはイモトアヤコと井桁広恵、鉄道博物館の学芸員。再放送とあったので、調べてみたら昨年4月に放送したものだった。

その新作が3月26日に放送された。今回のテーマは「渋谷はなぜ若者の街に?」。林修先生と田中真弓は変わらず、ゲストは子供の頃、渋谷に住んでいたという椿鬼奴、恐らく名字で選ばれたであろう大阪出身の渋谷凪咲。そして、青山学院大学の高嶋修一教授。

驚いたのはスタジオの変化だ。ハチ公やモアイ像などが立体化され、テーマパークのようにカラフルで賑やかなセットが組まれ、前回とは比べ物にならないほど派手になった。その反面、主役であるはずの地図が若干地味になったような…。前回、得意気に紹介していたスタジオ空間にバーチャルの地図を浮かび上がらせるという趣向もなくなったようだ。これでは、タモリがブラブラ&出演しない『ブラタモリ』になってしまうではないか。

とはいえ、地図と写真を手掛かりに、街の発展をたどり、その来歴をひも解く構成はわかりやすくて見応えがある。今は無き東急文化会館や東急百貨店など懐かしい映像も随所に差し込まれ、かつての渋谷の記憶を呼び起こす。折しも西武百貨店閉店のニュースが伝わり、変わりゆく渋谷の「今」と、映像の中の「過去」が静かに重なった。

今や渋谷のスクランブル交差点といえば世界中から注目される観光スポットだが、そのきっかけが2002年の日韓ワールドカップだったとは知らなかった。大会の熱狂の中で、若者たちが集まり、歓喜の象徴となった。世界の中でも交差点が観光地になる例は珍しいとか。

渋谷がなぜ若者の街になったか? その答えは番組を見ていただくとして……。街を扱った番組は数多く存在するが、いずれもグルメや観光に偏りがちだ。しかし、本作は、地図という装置を使って、歴史の地層を掘り起こす。それらとは一線を画す、じっくりと腰を据えて楽しめる「おとなの教養バラエティー」となっている。

次回の予告では、「ワイキキはなぜ世界一のビーチリゾートになったのか」や「ローマはなぜ未完成の街なのか」と視線は海外へと広がるようだ。グローバルな展開も悪くはないが、願わくは、もっと身近な「国内の馴染み深い場所」を掘り下げて欲しい。

なぜならば、この番組の醍醐味は、見慣れた景色に潜む「意外な過去」を、地図というレンズを通して発見する驚きにあるから。海外の華やかなエピソードも刺激的だが、国内のことをもっと知りたい。

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プロフィール

桧山珠美(ひやま たまみ)
HBF MAGAZINEでは、気になるテレビ番組を独自の視点で読み解く連載『日日是てれび日和』を執筆中。
編集プロダクション、出版社勤務を経て、フリーライターに。
新聞、週刊誌、WEBなどにテレビコラムを執筆。
日刊ゲンダイ「桧山珠美 あれもこれも言わせて」、読売新聞夕刊「エンタ月評」など。


“HBF CROSS”は、メディアに関わる人も、支える人も、楽しむ人も訪れる場所。放送や配信の現場、制作者のまなざし、未来のメディア文化へのヒントまで──コラム、インタビュー、レポートを通じて、さまざまな視点からメディアの「今」と「これから」に向き合います。

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