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苦手なはずのリアリティショーを見始めたわけ|新井順子プロデュース『奇跡の5分間』

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【第32回】 『奇跡の5分間〜1曲に夢を託すリアリティショー』(TBS・2026年3月16日放送)

正直に言えば、リアリティショーというものが苦手だ。とくに、恋愛リアリティショー、画面越しに漂う独特の空気に、どうにも気恥ずかしくなってしまうのだ。昨今はそのジャンルも細分化が進み、男性同士の恋を描く『ボーイフレンド』や、35歳から60代男女が共同生活を送りながら“人生最後の愛”を探す『あいの里』、MEGUMIが企画・プロデュースを務めたヤンキーたちの『ラヴ上等』など、人気とされる作品も一応覗いてみたが、やはり私には少々ハードルが高かった。

それでもこの番組は見てみようと思ったのは、TBSスパークルの新井順子氏が企画・プロデュースを手掛けたと知ったからだ。ドラマ『アンナチュラル』や『MIU404』『最愛』、『海に眠るダイヤモンド』、映画『ラストマイル』など、数々の話題作を世に送り出し、先日は芸術選奨の新人賞も受賞した。そのヒットメーカーが、リアリティショーを手掛けたらどんな番組になるのか。そこに純粋な興味が湧いた。

番組の名は『奇跡の5分間〜1曲に夢を託すリアリティショー』。この日の深夜2時05分に始まった新番組だ。

コンセプトは明快。「テレビの力で夢を叶えたい」と集まった8人の男女が2組に分かれ、バンドを結成。共同生活を送りながら、3週間後のライブで観客100人をどちらが感動させるか。たった一度、5分間の演奏で、より観客の支持を集めたチームに、番組が夢を叶える手伝いをするというもの。その姿をカメラが追う。8人にはそれぞれ夢がある。命の恩人を探したい、がん闘病を経てチャリティライブを開きたい……。その夢の背景が、番組を通じて少しずつ明かされていく。

8人とも楽器未経験者。わずか3週間でどこまでやれるのか、ということもだが、早くもメンバー同士の衝突などもあり、波乱の予感。初回では、61歳メンバー最年長の男性と、23歳リーダーの女性の間に不穏な空気が漂い、そこがクローズアップされていた。

「(相手チームを意識し)気を抜かないで頑張ろうね」とメンバーを鼓舞するリーダーに対し、「おじさんから一言、老害かもしれないけど言っていい?」と前置きしつつ、「相手のことは一切気にしないほうが本番は上手くいく」と持論をぶつける最年長の男性。

その翌日、「信頼関係を築くために、おしゃべりしたい」と歩み寄るリーダーに対して、「時間がもったいない。正直、楽器演奏で各人の背景理解までいるかっていうと、そこまでは要らないんじゃねって思う。効率重視なんです」とにべもない。

そう言いながらも、「どうしても父親世代と娘世代の会話になっちゃって、なんとかしたい」とスタッフ相手に本音を語る男性。

「人に何かを伝えるのは難しい」と反省するリーダーも、「誰よりも早く楽器を演奏できるようになって、信頼を勝ち取る」と日記に書いた。

スタジオで8人を見守るのは、斎藤工、くっきー!(野性爆弾)、TBS田村真子アナウンサーの3人。自身もバンド活動をしているくっきー!が、バンド内で起こりがちな衝突や揉めごと、バンドあるあるをさりげなく解説してくれ、わかりやすい。

波乱含みのスタートといったところか。言いたくなるおじさんの気持ちもわからなくもないが、そこはぐっとこらえるべきだろうなどと思ったり…。「老害」になりたくないと思いながら、「老害」をやってしまっている61歳に、ついわが身を重ねてしまう。

20代から60代までとメンバーの幅も広いので、世代間の壁をどんなふうに乗り越えていくのか、あるいは乗り越えないままなのか。そんなところも見どころと言える。しかも、8人には、「5分間のライブ」で観客を魅了するというミッションがあるのだ。

ドラマとは違い、リアリティショーには台本がない。番組を見進めていくうちに、8人の個性もみえてきて、推しメンができるかもしれない。しかも、ゴールに感動があることは間違いない。

リアリティショーが苦手な私も、この番組はもう少し見てみようと思った。“奇跡の5分間”に立ち会うために。

※全6回、3月27日までに放送される。

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プロフィール

桧山珠美(ひやま たまみ)
HBF MAGAZINEでは、気になるテレビ番組を独自の視点で読み解く連載『日日是てれび日和』を執筆中。
編集プロダクション、出版社勤務を経て、フリーライターに。
新聞、週刊誌、WEBなどにテレビコラムを執筆。
日刊ゲンダイ「桧山珠美 あれもこれも言わせて」、読売新聞夕刊「エンタ月評」など。


“HBF CROSS”は、メディアに関わる人も、支える人も、楽しむ人も訪れる場所。放送や配信の現場、制作者のまなざし、未来のメディア文化へのヒントまで──コラム、インタビュー、レポートを通じて、さまざまな視点からメディアの「今」と「これから」に向き合います。

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