助成
放送文化基金 成果報告会&2025年度助成金贈呈式
助成がつなぐ、放送の未来へ
放送文化基金の2025年度の助成対象が決まり、2026年3月4日、ホテルルポール麹町(東京都千代田区)にて成果報告会と2025年度助成金贈呈式を開催しました。当日は研究者や放送現場に携わる方、文系、理系問わず様々な分野で放送・メディアに関わる方々が一堂に会し、研究や実践の成果を持ち寄るとともに、組織の垣根を超えた交流が生まれました。
編集部 甲斐靖子


幅広い分野からの成果報告
放送文化基金の助成は、技術開発から人文社会分野、イベントまで幅広い分野を支援しています。成果報告会では、技術開発部門と人文社会部門から、1年の助成期間を経て評価が高かった方の成果の報告と、イベント事業部門からは直前に開催されたばかりのイベントについての報告がありました。
技術開発│自動走行車内の「快適さ」を科学する
技術開発部門からは奈良先端科学技術大学院大学准教授の澤邊太志さんが「自動走行時の視覚と前庭感覚制御による快適なエンタメ体験の実現」について発表を行いました。
自動走行車では、予測しにくい車両の動きによって搭乗者がストレスを感じたり、車酔いを起こしたりする可能性があります。澤邊さんは、視覚と前庭感覚(体のバランスを感じる感覚)を制御するシステムによって、搭乗者の負担を軽減する手法を開発しました。あわせて、車内での映像視聴が楽しさや臨場感に与える影響についても実証実験を行い、安全で快適な自動走行車の実現に向けた知見を報告しました。

人文社会│デジタルがつなぐケニアの礼拝
人文社会部門からは、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所フェローの吉田優貴さんが「ケニアの教会におけるディジタル・テクノロジーの活用」について発表を行いました。
ケニア・エルドレット市の教会では、礼拝のライブ配信や携帯送金サービスM-PESAによる献金など、デジタル技術が活用されています。自宅から教会が遠く参加が難しい人もいる中、スマートフォンの普及とともに広がったこうした仕組みが、人々の信仰生活にどのような利便性や変化をもたらしているのかを報告しました。

イベント事業│青森の高校生と放送の未来
イベント事業部門からは、地方の映像クリエーター育成実行委員会 副委員長の小山田文泰さんが「放送の未来を担う人材育成・交流事業」について発表を行いました。
地元の現役制作者のレベル向上と共に、高校生たちに、地方から映像発信する意義やその魅力を伝え、地方からの番組制作の将来へつなげることを目的としたイベントで、地方局で活躍しているドキュメンタリストを招いて作品の上映会とパネルディスカッションを行うとともに、青森県内の3校の高校放送部員が3つのチームに分かれ、ドキュメンタリスト指導のもと短編動画制作のワークショップを行った様子を報告しました。

成果報告会には約70名が参加し、質疑応答の時間には、参加者からの質問はもちろん、助成審査委員長から他部門の報告者への質問も出るなど、活発な意見交換が行われました。
各報告内容の詳細は近日HBF MAGAZINEに掲載予定です。お楽しみに。


2025年度助成金贈呈式
続いて行われた贈呈式では、各部門の審査委員長が審査の概要と所感を述べたのち、濱田理事長から、採択された代表者一人ひとりに目録が手渡されました。
今回の助成では、技術開発部門10件、人文社会部門17件、イベント事業部門22件が採択され、総額は8,715万円。採択されたプロジェクトは、これから1年間にわたって研究・開発・事業等を行い、成果報告へとつなげていきます。

また、各部門の代表が今後の展望について語りました。

技術開発部門代表・北崎充晃さん(豊橋技術科学大学大学院)
「リアルアバターの他者・AI操作による自己感喪失の定量化と受容性検討」
研究のきっかけは、自分のリアルアバターを作った時に自分の意志とは無関係に動くのを見て感じた「自分が乗っ取られたような感覚」だった。生成AIやCG技術の進展は、放送映像制作に大きな可能性を開いている。その中でそれらを「安心して使える条件を明らかにする」ことを目標に研究を進めたい。

人文社会部門代表・末宗達行さん(著作物の「写り込み」研究会/横浜国立大学大学院)
「SNS時代の報道を巡る著作物利用に係る権利制限の新たな解釈論」
インターネット空間での情報流通が社会的な影響を増す中で、テレビや新聞など既存のメディアには、信頼できるコンテンツの提供者としての新たな役割が期待されている。引用の規定や写り込みの規定など、従来は報道に関係すると思われなかった複数の権利制限規定の解釈論を再構築し、既存メディアの良質な情報の提供に役立てたい。

イベント事業部門代表・許田結莉さん(日本国際放送)、浅井批文さん(テレビせとうち)
「地方民放局のコンテンツを海外に展開するためのフォーマットを開発する取り組み」
テレビせとうち制作の「おばあちゃんの台所」がこれまで描いてきた食や暮らし、おばあちゃんという存在の普遍性は海外でも共感を呼ぶものだと思っている。外国人が観光では得られない体験ができるようなコンテンツを作り、発信することによって、日本の地域発番組が国境を越えて広がるきっかけになればと思う。日本の地域文化を世界に届ける道しるべを示していきたい。
いずれもプロジェクトに対する意欲・目標が語られ、1年後にどんな成果が出てくるのか期待が高まります。
また、申請の多かったテーマや注目すべき傾向を読み解くコーナーが設けられ、助成対象者とともに紹介されました。2025年度の傾向としては様々な動画配信サービスが台頭し、メディア状況が大きく変わる中、全ての分野でメディア状況の変化を先取りする研究が目立ちました。また、バリアフリーやジェンダー問題など社会福祉に資するプロジェクトも採択されたほか、東日本大震災から15年の節目でもある今年は、災害に関するプロジェクトも多く採択され、時代の関心を反映した多様なテーマが採択されました。
当日は聴覚に障害を持った出席者もいらっしゃり、贈呈式と懇親会は手話通訳付きで行われました。
懇親会で生まれる新たなつながり
技術開発、人文社会、イベント事業と幅広い分野の方々が集まる懇親会では、あちこちで活発な意見交換が行われ、閉会の時間まで部門や所属を超えて多くの参加者が交流を深めました。情報交換をきっかけに、地域や放送局の系列を超えてお互いを訪問する約束が生まれたり、アーカイブ資料を学校の授業に使えないかオファーをする姿もありました。この懇親会での人的ネットワークの広がりをきっかけにして、助成プロジェクト同士の連携が生まれたり、新しいプロジェクトの構想が動き出したりと、新たな放送文化の芽を育む機会となっています。

この日参加された方からは「放送というと番組づくりのイメージしかなかったが、放送文化基金の助成は多岐に渡って活用できることを知った」という声のほか、「普段交流することのない分野の人と話すことで、新たなプロジェクトのヒントになった」「審査委員長や審査員の先生方に、懇親会の場で直接自分の研究について助言をいただくことができ、とても貴重な機会だった。今後の研究に生かしていきたい」など、交流の場としての手応えが多く寄せられました。「次は自分が成果報告会で研究結果を報告できるように1年間頑張りたい」と次への意欲を語る声もあり、「助成を受けるのが初めてで今後の手続きに不安があったが、事務的な流れについて説明を聞くことができて安心した」という声からは、初めて助成を受ける方へのサポートの場としても機能していることが伝わります。


放送文化基金の助成は、放送を中心としたメディア文化に興味のあるどなたにも門戸を開いています。新しいプロジェクトのアイディアや研究対象を見つけた方はぜひ申請ください。一緒に放送文化・メディア文化の芽を育てられる日を心待ちにしています。
◆2026年4月1日からは2026年度イベント事業部門(前期)の受付も開始します◆
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