制作者フォーラム
映像制作の極意を学ぶ——第一線で活躍する制作者ら集う「全国制作者フォーラム2026」を開催!【第1部/全3部】
編集部 鈴木祥吾
2026年2月14日(土)、「全国制作者フォーラム2026」が東京・如水会館で開催された。会場には制作者やメディア関係者ら約100名が参加。第1部は各地区のミニ番組コンテストで上位3作品に選ばれた作品の上映と意見交換、第2部にNetflixの髙橋信一氏による講演、そして第3部はゲスト全員によるトークセッションと多様な構成で、放送や配信の未来を展望した。まずは、第1部ミニ番組優秀作品の上映と意見交換の模様をお伝えする。(全3部)

上映作品&受賞結果一覧(※上映順)
「ミニ番組優秀作品上映&意見交換」では、昨年末に3地区(福島、名古屋、福岡)で上位3作品に選ばれた計9本を上映。ゲストは五百旗頭幸男氏(石川テレビ放送ドキュメンタリー制作部部長)、木村友紀氏(NHKコンテンツ制作局第2制作センターチーフ・プロデューサー)、田中良樹氏(フジテレビジョンスタジオ戦略本部第3スタジオディレクター)、コーディネーターとして丹羽美之氏(東京大学教授)が登壇し、制作者と意見を交わしながら、各番組の講評・審査を行った。さらに、ゲストのお気に入りの作品をそれぞれ1本ずつ選出し、懇親会で発表した。司会は下田朋枝アナウンサー(長崎文化放送)が務めた。
| 賞 | 制作者 | 番組名 |
|---|---|---|
| ー | 土橋奏太 (RKB毎日放送) | タダイマ!『僕だから伝えられること~日本一小さな営業マン』 |
| ー | 緒方太郎 (熊本県民テレビ) | news every.くまもと『【大好きな娘へ】死の4日前、すい臓がんの父が伝えた愛と希望の言葉』 |
| 木村賞 | 小田夏好 (鹿児島テレビ放送) | ナマ・イキVOICE『おばあちゃん、戦争のはなしをきかせてください』 |
| ー | 井坂桃花、涌井寛之 (北海道文化放送) | みんテレ『重い障がい“18トリソミー”医療的ケア児と家族の1年』 |
| ー | 水谷悠真 (NHK山形放送局) | やままる『父の心の傷を背負って 元日本兵のPTSD』 |
| 丹羽賞 | 土川怜音 (テレビユー山形) | Nスタやまがた『東日本大震災から14年~あの日を境に変わった女性~』 |
| 五百旗頭賞 | 飯嶋風子 (NHK名古屋放送局) | まるっと!『“外国籍”消防団員の壁 ~愛知 西尾の模索~』 |
| 田中賞 | 鈴木桃寧 (中京テレビ放送) | キャッチ!『旭丘高校天文部の挑戦』 |
| ー | 昌山莉子 (テレビ愛知) | 5時スタ『豊田市に墜落したB29 搭乗員はなぜ生き延びたのか』 |

どうすれば視聴者に伝わるのか?—全9作品を総括して
上映された9作品は、どれも地域に根差し、丹念で丁寧な取材から現状を拾い上げる力作ばかり。暗い現実の中から希望を見出そうとする被写体にカメラを向けた、いわば“読後感”のいい作品が多く並んだ。審査員として招かれたゲストらは、そういった素材の良さを評価しつつ、より視聴者に伝えるためにはどういう工夫が必要か、的確に講評していった。
ゲストからのアドバイスとして共通していたのは、「映像の力をもっと信じる」ということ。
現場の生きた音、被写体の沈黙、一瞬の表情。それが一番大事な部分
被写体が感想を言う前に、ナレーションやスーパー(字幕)で先食いしてしまったり、BGMで感情を煽ったりしては、せっかく撮れた映像も興ざめしてしまうのではないか
ファーストカットをロングショットから入るのは楽だが、安易に感じる。視聴者に振り向いてもらいたいなら、一番引きの強い映像を最初に見せないともったいない
単なるダイジェスト版にならないように、伝えたいことを絞って、逆算して映像を組み立てていく。余計な映像を入れてしまうと、何が言いたいのか分かりづらくなってしまう
放送局によっては取材にかけられる日数が限られていたり、各地区で番組を出品する規定の都合でなくなくカットせざるを得なかったりと個別の事情がある。ただ制作者たちから、「編集がオーソドックスになっていた」「入り方と終わり方にまだまだ工夫が足りないと感じた」「取材者の勝手な解釈にならないよう気を付けていたつもりだったが、頂いた講評を持ち帰って、次の取材や制作に生かしたい」と力強い声が聞かれた。
「自信を持って、番組を作り続けて」―受賞作品の講評
例年にも増して厳しく辛口な意見も飛び交う中、第1部や懇親会で語られた、受賞作品へのゲストの講評をそれぞれ紹介する。
「ティーン(10代)のいい顔を撮るのは簡単ではない」(田中氏)
田中さんが演出を手がける『新しいカギ』(フジテレビ)は、学生たちが主役で、子どもや家族に大人気のバラエティ番組だ。「通常の演者さんや大人とも違う、ティーンのいい顔を撮るのは簡単なことではないが、それが映像として残っている」として、田中さんは『旭丘高校天文部の挑戦』を選んだ。
この番組は、旭丘高校天文部が地球を撮影する挑戦に迫った作品。BGMの入れ方や、天文部がぶつかった困難をどう分かりやすく設定していくのか、といった指摘はあったものの、主人公のキャラやテンポのよさなどが評価された。

「感情が動く一瞬を大事に」(木村氏)
木村賞の『おばあちゃん、戦争のはなしをきかせてください』は、奄美大島から長崎の軍需工場へ働きに出たおばあちゃんが、今まで娘にすら隠していた被爆体験を初めて語る番組。戦争の記憶を思い出したくない方が多い中、何度も通って信頼関係を築き、悲惨な体験を引き出した点や抑制的なスーパーで表情や声を活かした構成が評価された。
『あさイチ』(NHK)を制作している木村氏は、「感情が動く一瞬をすごく大事に思っていた」と明かし、真実が語られた際の娘の驚いた表情を「もし自分が取材現場にいたら、忘れられないシーン」と語った。
一方、番組枠である『ナマ・イキVOICE』は、30代をターゲットにした番組のため、「97歳のおばあちゃんがどういう30代を過ごされたのか、少し足してみてもいいのかな」といった指摘も。

「法解釈の不穏さをきっかけに」(五百旗頭氏)
数々のドキュメンタリーで受賞してきた五百旗頭さんが選んだのは、『“外国籍”消防団員の壁 ~愛知 西尾の模索~』だ。制作した飯嶋さんは、「多文化共生に関わる企画を担当する中で、『外国人の消防士の方っていたっけ?』と疑問に感じたところから取材が始まった」と明かした。
番組内では、愛知県西尾市の消防団に所属する、ボリビア籍のクエトさんに密着し、「公権力の行使」という政府の見解により、外国籍の消防団員が消火活動に加われない実態を描いた。
五百旗頭さんは、「制作者の違和感を出発点に、本当に丁寧にきめ細やかな取材をして、西尾市の独自運用で消火活動に加われるようになったクエトさんの清々しさも描きつつ、法解釈の不穏さも併せ持つ作品だ」と評した。さらに「この着眼点をきっかけに取材を重ねていけば、もしかしたら面白いドキュメンタリーができるんじゃないかなと思わせてくれた」と期待を込めた。

「もっといい番組になるという伸びしろも込めて」(丹羽氏)
丹羽賞には、『東日本大震災から14年~あの日を境に変わった女性~』が選ばれた。かつて震災を経験した女性が教師となり、生徒への「命の授業」に密着した番組。取材期間はわずか2日間という短さに丹羽氏は、「この作品を2日で仕上げたことと、今のローカル局が置かれた厳しい現実に、良くも悪くも驚かされた。もし、さらに取材ができるなら、もっといい番組になるという伸びしろも込めて」と評価した。
続けて、「先生の伝えたいメッセージとそれを受け止める子どもたちの表情に心を動かされた。今後もそういう一瞬一瞬を大切に番組作りをしていただけたらなと思います」と語った。

最後に、「ここでお会いした制作者の皆さんは、明日の放送界を担っていく方々です。自信を持って、今後も番組を作り続けていっていただければと思います」とエールを送り、懇親会は盛況のうちに終えた。
懇親会での受賞者スピーチでは、4名全員から「天狗にならず、これからも一歩一歩」と謙虚なコメントが続いて、会場が沸いた。午後から来場した髙橋信一氏からは、このフォーラムの感想として「私はお世辞でもなく、テレビをよく見ていて、視聴者として楽しませてもらっています。今回のフォーラムで、改めて放送局の皆さんとうまく協業できたらいいなと思いました」とテレビ好きの一面を明かした。
次回は、髙橋信一氏(Netflixコンテンツ部門ディレクター)による、第2部の講演「Netflixのヒットコンテンツ制作の舞台裏とクリエイティブ・ビジョン」の内容をお届けします!
プロフィール

五百旗頭幸男(いおきべゆきお)
石川テレビ放送ドキュメンタリー制作部部長(記者、ディレクター)
1978年兵庫県生まれ。チューリップテレビを経て、2020年に石川テレビ入社。富山市議会の不正を追った番組『はりぼて~腐敗議会と記者たちの攻防~』(16年)で菊池寛賞など多数受賞。『日本国男村』(22年)で民放連賞最優秀、『能登デモクラシー』(24年)でギャラクシー賞選奨、同作の劇場版(25年)で早稲田ジャーナリズム大賞を受賞。その他の公開映画に『はりぼて』(20年)、『裸のムラ』(22年)がある。

木村友紀(きむらゆき)
NHKコンテンツ制作局第2制作センターチーフ・プロデューサー
2007年NHK入局。ディレクターとして大分放送局に赴任後、2012年から『あさイチ』を中心に情報番組を担当。また開発番組『サンクスonデリバリー』の立ち上げにも携わる。『あさイチ』では主に月・水の55分のフリー特集を担当し、ライフハック系の特集からジャーナルな内容まで多様なテーマを扱う。私生活では2児の母。

田中良樹(たなかよしき)
フジテレビジョンスタジオ戦略本部第3スタジオディレクター
1991年埼玉県生まれ。早稲田大学卒業後、2014年にフジテレビ入社。これまで多くのバラエティ番組で演出やディレクター業務を行い、現在はレギュラー番組『新しいカギ』『Aぇ! groupのQ&Aぇ!』の総合演出を担当。また、2024年には『FNS27時間テレビ 日本一たのしい学園祭!』、25年末には『新しいカギ年越し生放送SP!』の総合演出を務めた。

髙橋信一(たかはししんいち)
Netflixコンテンツ部門ディレクター
1979年静岡県生まれ。2020年Netflix入社。Netflixの東京オフィスを拠点に、日本発の実写全般での制作及び編成を担当。『浅草キッド』や『シティーハンター』などのNetflix映画、「地面師たち」「極悪女王」「イクサガミ」などのシリーズやバラエティ作品のプロデュースも担当。「九条の大罪」(主演:柳楽優弥)は、2026年春に配信を控える。

丹羽美之(にわよしゆき)
東京大学教授/コーディネーター
1974年三重県生まれ。専門はメディア研究、ジャーナリズム研究、ポピュラー文化研究。番組アーカイブを用いてテレビの文化や歴史を研究している。主な著書に『日本のテレビ・ドキュメンタリー』、『NNNドキュメント・クロニクル:1970‐2019』(いずれも東京大学出版会)などがある。放送文化基金賞審査委員(エンターテインメント部門)。民放onlineで「放送人 この言葉、あの言葉」を連載中。
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