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『有吉ゼミ』の「相撲グルメ」は侮れない

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【第25回】『有吉ゼミ▼グルメすぎる玉ノ井部屋の2大イベント! 餅つき&爆食新年会に密着SP』(日テレ・2026年1月26日放送)

大相撲一月場所も無事千秋楽を終え、ウクライナ出身の大関・安青錦(安治川部屋)が二場所連続優勝を成し遂げた。異国の地からやってきて、日本の国技の世界で頂点に立ち続ける。その姿には大きな感動をもらった。

その翌日、『有吉ゼミ』ではこんな企画を放送していた。「グルメすぎる玉ノ井部屋の2大イベント! 餅つき&爆食新年会に密着SP」。

実はここ数年、テレビバラエティが「相撲グルメ」を取り上げ、すこぶる評判が良い(私、調べ)。昭和の時代、力士といえば、「のど自慢」のような番組で、その美声を轟かせ視聴者を魅了していたものだが、令和の時代は、それが「相撲グルメ」にとって代わったかたちだ。

それ以前も、相撲部屋密着ドキュメンタリーなどで、ちゃんこを食べるシーンはあった。が、あくまでもそれは稽古や相撲部屋のしきたりなどがメインで、ちゃんこはおまけ扱いだった。それがいまでは逆転。稽古シーンはなくとも、ちゃんこは見せる。それどころか、カメラがちゃんこ場に張り付き、仕込みから、料理の手順まで、事細かに映し出すのだ。戦場のようなちゃんこ場で、大きな力士たちが動き回るなか、邪魔にならないようカメラを回すスタッフもさぞや大変なことと察する。

ちなみに、23日の『ウワサのお客様』(フジテレビ)でも、朝青龍の後輩・明徳義塾高校相撲部に密着。その爆食ぶりを取り上げていた。その2週間前には、二子山部屋が福岡で開催したちゃんこイベントに密着するなど、たびたび「相撲グルメ」が登場していた。

で、『有吉ゼミ』はというと、「グルメすぎる相撲部屋」をシリーズ化。先月も、田子ノ浦部屋の九州遠征に密着。角界最年長レジェンドちゃんこ長が作る絶品料理の数々を紹介したり、九重部屋の「かつしかスポーツフェスティバル」でのちゃんこイベントに密着するなど、毎週のように、「グルメすぎる○○部屋」シリーズを放送している。

なかでも、この日密着されていた玉ノ井部屋は別格だ。元寿司職人ちゃんこ長・東波の料理愛、メニュー開発の飽くなき探求心がすさまじく、何十人前も作る豪快な手さばきは一度見たら目が離せなくなるほど。

しかも、今回は、「餅つきと新年会」という二大イベント。恒例「餅つき大会」のために用意されたもち米はなんと450キロ(3000合)!それを精米機で洗い、容量80キロの容器に移し替えて力士たちが運ぶ。力士たちが一丸となって準備する様子が描かれる。仕上げに水を張り、さらに、もち米に包丁を刺して立てておく。包丁を刺すことで邪気を払い、もち米を清めるための儀式だとか。神事としての相撲の伝統のあれこれを垣間見ることができるのも嬉しい。480人分のお雑煮。その迫力たるや。

さらに、新年会では、海鮮40キロをふんだんに使った豪華ちらし寿司に、うにとキャビアを載せた茶碗蒸しなど、その“画力”に、ただただ圧倒される。

それらを瞬く間に食べ尽くしてしまう力士たちの旺盛な食欲と笑顔。見ているこちらも幸せになる。

どうしてこんなにも「相撲グルメ」に惹かれるのか。

普段、目にすることのない力士たちの日常。彼らは食べるのも仕事のうちで、そんな力士たちに美味しいものを食べて力をつけさせたいと、アイデア料理を次々と生み出していくちゃんこ長の存在。

そこにかつてあった日本の家族的な温かさを垣間見ることができるからなのかもしれない。

面白いもので、番組を見ていたら、力士たちの顔と名前、性格や人となりがだんだんわかってくる。気がつけば贔屓の力士も出てきて、最近では相撲中継まで見るように……。土俵から入るファンもいれば、「相撲グルメ」が入り口のファンがいてもいい。たかが「相撲グルメ」と侮るなかれ。「相撲グルメ」は、相撲人気上昇に一役買っている。 

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プロフィール

桧山珠美(ひやま たまみ)
HBF MAGAZINEでは、気になるテレビ番組を独自の視点で読み解く連載『日日是てれび日和』を執筆中。
編集プロダクション、出版社勤務を経て、フリーライターに。
新聞、週刊誌、WEBなどにテレビコラムを執筆。
日刊ゲンダイ「桧山珠美 あれもこれも言わせて」、読売新聞夕刊「エンタ月評」など。


“HBF CROSS”は、メディアに関わる人も、支える人も、楽しむ人も訪れる場所。放送や配信の現場、制作者のまなざし、未来のメディア文化へのヒントまで──コラム、インタビュー、レポートを通じて、さまざまな視点からメディアの「今」と「これから」に向き合います。

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