制作者フォーラム
【藤村忠寿】「すでに終わっている映像」を、今さら検証する意味
12月11日に開催された「愛知・岐阜・三重制作者フォーラム」。これまで全ての地区の制作者フォーラムに審査員、トークセッションのゲストとして参加してきましたが、今回は久しぶりの参加となりました。

メインとなるミニ番組コンテストに出品されるVTRは、各局の若手が制作したもので、主に情報番組のワンコーナーであったり、ニュースの一項目であったり。つまりそれらは「映像作品」と呼ぶにはおこがましい、日々の放送の中で消費されていく、たった数分間のVTRです。
たぶん多くの人の目に触れてはいるだろうけれど、たぶん多くの人の記憶にはあまり残っていない、そしてたぶんもう二度と放送されることはないであろう一過性のVTRの数々。言ってみれば一般視聴者の中では「すでに終わっている映像」。それを今さらフォーラム参加者全員で視聴し、審査員が評価する。「そこにどんな意義があるのか?」。
先に言いますが私は「そこにこそ意義がある」と思っています。
今回のコンテストで印象に残ったVTRは、町の消防団に入った外国人が、ホースを持って消火活動することもできず、直接人命救助をすることもできず、法律によって後方支援のみに活動が限定されているという事実を伝えたものでした。「それはおかしいのではないか?」という制作者の強い疑問がこのVTRにはあふれています。制作者はそれを強く印象付けるために取材対象者を、正義感にあふれた言葉を流暢に発する外国人男性に絞っています。「自分の町、自分の家族を守るために消防団に入ったのに」と言う彼の言葉に、多くの視聴者が制作者の意図通りに「これはおかしい」と思ったことでしょう。
制作者に聞きました。「あなたは今後この問題を、法律を変えるまで踏み込んでいくのか?それとも事実を伝えることだけに徹するのか?」。答えは「今はまだわかりません」というものでした。今はそれでいいと思います。そして、今後も考え続けてほしいと思います。

日々大量に制作され、消費されていくテレビ映像。若手制作者たちは、その現状に疑問を抱く間もなく明日のネタ探しに奔走する渦に巻き込まれています。でも、一度立ち止まり、自分の映像を振り返る時間は作らないといけません。そうしなければ、消費されることに慣れきった先輩制作者たちが築いてしまった今のテレビの現状を好転させることはできません。
「すでに終わっている映像」を、今さら検証することは制作者にしかできないことです。年に一度ではあるけれど、だからこのフォーラムには意義があると私は思っています。
プロフィール

藤村忠寿(ふじむら ただひさ)
北海道テレビ放送コンテンツ制作局シニアクリエイティブフェロー
1965年生まれ、愛知県出身。90年に北海道テレビ放送に入社。東京支社の編成業務部を経て、95年に本社の制作部に異動。96年にチーフディレクターとして『水曜どうでしょう』を立ち上げる。『歓喜の歌』、『ミエルヒ』(ギャラクシー賞テレビ部門優秀賞、文化庁芸術祭賞テレビ・ドラマ部門優秀賞、放送文化基金賞ドラマ部門奨励賞)、『チャンネルはそのまま!』(2019年日本民間放送連盟賞テレビ部門グランプリ)など多数のドラマを演出。
役者としての出演作に映画『猫は抱くもの』(犬童一心監督)、舞台『リ・リ・リストラ』(鈴井貴之演出)など多数。
著作に『けもの道』(KADOKAWA)、『笑ってる場合かヒゲ 水曜どうでしょう的思考』(朝日新聞出版)、嬉野雅道との共著に『人生に悩む人よ 藤やん・うれしーの悩むだけ損!』(KADOKAWA)、『腹を割って話した』(イースト・プレス)『仕事論』(総合法令出版)など。
藤村忠寿さんがゲスト審査員として参加した「愛知・岐阜・三重制作者フォーラムinなごや2025」の記事はこちら
「自分の感性を信じて」-愛知・岐阜・三重制作者フォーラムinなごや2025を開催
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