制作者フォーラム
「自分の感性を信じて」-愛知・岐阜・三重制作者フォーラムinなごや2025を開催
HBF編集部 川副祐子

2025年12月11日(木)「愛知・岐阜・三重制作者フォーラム」が愛知芸術文化センター小ホールで開催されました。ミニ番組コンテストとトークセッションが行われ、愛知・岐阜・三重の制作者を中心に約90名が参加しました。
ミニ番組コンテスト
ミニ番組コンテストでは、各局1本ずつ夕方のニュースや1コーナーの特集などのミニ番組が対象です。戦後80年ということもあり、例年より戦争を扱った作品が多く出品されました。10作品の中から優秀賞3作品、放送文化基金特別賞1作品選ばれました。審査員の芦田太郎さん(プロデューサー)、長谷川朋子さん(コンテンツ・ビジネス・ジャーナリスト)、藤村忠寿さん(北海道テレビ放送コンテンツ制作局シニアクリエイティブフェロー)が1作品ごとに講評を述べました。

優秀賞3作品 ※上映順
| 受賞者 | 作品名 |
|---|---|
| 昌山莉子(テレビ愛知) | 『5時スタ 豊田市に墜落したB29 搭乗員はなぜ生き延びたのか』 |
| 飯嶋風子(NHK名古屋放送局) | 『まるっと! “外国籍”消防団員の壁 ~愛知 西尾の模索~』 |
| 鈴木桃寧(中京テレビ放送) | 『キャッチ! 旭丘高校天文部の挑戦』 |
放送文化基金特別賞(梅岡賞)
| 三浦真平(名古屋テレビ放送) | 『ドデスカ!あらゆるサーチ「地元あるあるin愛知・蒲郡市」』 |
優秀賞に選ばれた1作品目『豊田市に墜落したB29 搭乗員はなぜ生き延びたのか』は、墜落したB29の搭乗員12人中、生き延びた1人の米兵を調査している2人の市民を取材。その中で語られる2人の想いを伝える番組。審査員からは、切り口に独自性があってよかった。ただVTRにはもう少し工夫できるところもあったのではという意見がありました。

2作品目の『“外国籍”消防団員の壁 ~愛知 西尾の模索~』は、地域の消防団に在籍する外国籍の団員は実際の火災現場において消火活動の大半が制限される実態に対して、西尾市がどのように向き合っているのかを伝えた番組。審査員からは、知らない事実だった。制作者の疑問から取材を始め、番組化していた。ディレクターの感性を大事にしていって欲しい。現状を伝えるだけでなく、もう一歩踏み込んで“変えていくこと”をしてもいいのでは、との意見もありました。

3作品目『旭丘高校天文部の挑戦』は、高校生たちが約1年にわたり「宇宙から地球」を見たいと“気球”を成層圏へ飛ばす挑戦を描いた番組。審査員からは高校生のキャラクターをしっかりと視聴者に意識付かせていて、疑問に思うところを作らず構成も良かった。今後もこの高校生たちを追うといい。また、挫折や苦悩など負の面も見たかったという意見もありました。

トークセッション

興味あることを言語化する
まず、はじめに「コンテンツを制作する上で心掛けていること、大切にしていることは?」という質問に、『水曜どうでしょう』を制作してきた藤村さんは「自分が何に興味を持って自分が何をやりたいかっていうことが一番でしたかね」。「視聴者におもねってというか、“あなたはこういうもの好きでしょって”って物を提示することはないですね。それやったらつまらないと思って。」と回答。
テレビ朝日時代は『あざとくて何が悪いの?』『あいつ今何してる』などを制作してきた芦田さんは「自分が制作した番組に出ている演者さんが損をしないように。その人の“知らない一面が見れたな”とかポジティブな感情を抱くようにしています。」と回答し、さらに「自分が好きな演者の自分にしか照らせない側面に気づいて、信じきって、それを言語化して企画書を書けば、何かおのずと個性ある企画になるんじゃないかな。」とアドバイスしてくれました。
続いて、最初の質問とも関連しますが「番組のアイデアやネタはどのように生まれるか?情報収集の方法などについて知りたい。」という質問に「たまたま取材に行ったときに、“これ何だろう?”って興味を持つこと。自分が興味あるものをやっているのが一番。」と言う藤村さんの回答に、芦田さんは「自分も興味を言語化して番組化するというところに落とし込むという努力をしていた。ただ、多分20代の方たちってテレビを見ていない。そうすると気づかずにパクッてしまうということが起きてしまうので、僕は色んなテレビを見てます。」と答え、会場にいる制作者たちにテレビを見る大事さを伝えていました。

テレビの強みに気づいて
「テレビのコンテンツが、他の動画配信サービスなどのコンテンツと今後差別化を図るとしたらどのようなこと?」という質問に対して、国内外のドラマ、バラエティー、ドキュメンタリー番組制作事情を取材している長谷川さんは「10年前は動画配信サービスが、地上波でできないことを企画しないと、ということだったのに、質問が逆になったのが新鮮に感じました。ローカル局からしたら、キー局、動画配信、YouTube、いろんなところと差別化しないといけない。結局、面白ければ見ちゃう。それに尽きるのでは。」
藤村さんは「ローカル局の番組を作っていた我々にとってみると動画配信ってすごく良かったんですよ。キー局を通さなくても全世界に配信されるから。だから地上波の中で差別化できてれいれば、実は多様性があると思う。」
藤村さんから芦田さんに「配信の世界に行って見えたものってあるの?」と質問がとび、芦田さんは「オリンピックやワールドカップなどの国民的なスポーツイベントの生放送、大事件や大災害などのリアルタイムでの報道機関としての生放送は、配信がまだ着手しきれていない分野なのと、テレビはどんなにアクセスが集中してもサーバーがダウンするということはない電波の強みがあるので強みとして発信していくべき」「配信は、例えばAという番組があった場合、基本的に1年に1回のサイクルで出していくんですけど、テレビバラエティは毎週放送を積み重ねることによって、文化への浸透の速度が速いと思う。そこはテレビの良さかなと思います。」と返答しました。テレビ局と配信会社の両方の作品作りを知っている芦田さんだからこそ話せることをたくさん語ってくれました。
そこから予算、人材が少なくなっているという話になり、3人から共通して「もうタイムテーブルを全部埋めようとする発想をそろそろ止めた方がいい」「夜中の2時、3時にテレビを見ている人はいない」「もうその時間は再放送、停波でもいい」との意見も出ました。

まずは面白いものを!
「テレビ局が“配信”を重視していることはどう思うか?(コンテンツを配信して収入を!の流れについて)」という質問に長谷川さんは、「海外では当たり前なこと。何度も見たいというニーズもあるし、数年前のものだって見たいというのもあるから、どんどん配信に出していって欲しい。」
藤村さんは、「制作者の中には“放送外収入をどれだけとれるかということを企画書の段階で入れ込んで”というのは、そこまで手が回らないというのはありますよね。」
芦田さんは「確かにマネタイズは大事ですけど、ディレクターはまず面白いものを作って欲しい。そこは経営者やプロデューサーが考えることで、ディレクターに最初から言うのは良くないと思います」と回答しました。

個性を大事にして
「作品のクオリティをあげるには?」という質問があり、芦田さんは「最後は自分で編集します」と返答し、藤村さんが「結局、自分でやるっていうところに、細かいことかもしれないけど、個性が絶対に出るってことだよね」「今日のミニ番組を見てて思ったのが、何で皆、同じ入り方するのかな?何で結論の言葉が似ているのかな?と思った。ネタとしては目を引くものがあったけど、目を引いた映像の切り方とか編集の仕方、音の入れ方とかがなかった。セオリー通りだった。1個でいいから“あれ?おかしいぞ?どういう意図でこれやったの?”みたいなのが欲しい。それはきっと視聴者も同じなんじゃないかな。」との意見がありました。
その他にも質問があり、話しが尽きないトークセッションとなりました。参加した制作者の皆さんは、普段悩んでいることへのアドバイスをもらえて、熱心にメモを取りながら審査員の話に聞き入っていました。
懇親会
懇親会では、優秀賞作品の表彰があり、受賞した制作者は「客観的に番組を見て意見をもらうことは普段ないので、とても刺激的で良い機会でした」と感想を述べていました。審査員の3人の周りには人が絶えず、トークセッションのつづきとも言えるほど質問とアドバイスが飛び交っていました。

ゲスト審査員の藤村忠寿さんからフォーラムの感想を頂きました!
【藤村忠寿】「すでに終わっている映像」を、今さら検証する意味
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