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制作者フォーラム

全国制作者フォーラム2020を開催しました

  • 日時:2020年2月22日(土)
  • 会場:如水会館 2階「オリオンルーム」
  • 主催:放送文化基金

 2019年秋に全国3地区で開催した制作者フォーラムでのミニ番組コンテスト入賞者を招き、現在活躍している3人のテレビ番組制作者とコーディネーターの丹羽美之さん(東京大学准教授)をゲストに迎え、全国から制作者や放送関係者約90名が集まり、熱いトーク、意見交換が行われました。なお、新型コロナウィルス感染症の拡大防止のため、例年実施していた懇親会は中止にしました。

(以下敬称略)

<司会> 直川 貴博 (のうがわ たかひろ) 
福島中央テレビ アナウンサー

制作者フォーラム3地区のミニ番組優秀作品上映と意見交換

 各地区で行われたミニ番組コンテストで優秀作品に選ばれた9番組を上映し、すべての作品についてゲストに講評をもらい、会場の参加者を交えて意見交換を行いました。また、上映された番組の中から4名のゲストに気に入った番組を選んでいただき、会の最後に発表、表彰しました。

ミニ番組優秀作品(上映順)


大石 康允さん 小松賞
伊藤 翼さん 斉加賞
古内 まり子さん 丹羽賞
中世古 鋭児さん 圡方賞
九州放送映像祭&制作者フォーラムinふくおか(九州・沖縄地区)
めんたいワイド「崖っぷち九大相撲部」<5分> 大石 康允(福岡放送)
☆小松賞
平成から令和へ ナマ・イキVOICEスペシャル 挑むオンナたち「イカを描く~イカ画家・宮内裕賀~」<5分> 石神 由美子(鹿児島テレビ放送)
KKBスーパーJチャンネル 残したいかごしまの情景「酒とナンコと犬童さん」<4分59秒> 渡部 晋大(鹿児島放送)
北日本制作者フォーラム in せんだい(北海道・東北地区)
NHKニュースこまち 企画「流産 死産 悲しみに寄り添う」<8分47秒> 小川 瑞生(NHK秋田放送局)
YBC news every.「戦争の語り部たち 言語学者の半生」<7分10秒> 伊藤 翼(山形放送)☆斉加賞
Nスタふくしま 「東北唯一の女性刑務所は今」<7分55秒> 古内 まり子(テレビユー福島)☆丹羽賞
愛知・岐阜・三重制作者フォーラム in なごや(愛知・岐阜・三重地区)
チャント!「チャント!調べます“セミは人の体にとまり羽化することはあるの?”」<12分41秒> 中世古 鋭児(CBCテレビ)☆圡方賞
ドデスカ!「あらゆるサーチ 岡崎市あるある」<9分27秒> 荒井 浩介(名古屋テレビ放送)
おはよう日本「LGBT美容室 あなたらしいヘアスタイルを」<5分37秒> 田浦 俊輔(NHK岐阜放送局)

トークセッション

「危機か?好機か?~テレビのいまを語る~」
丹羽 美之さん
小松 純也さん
斉加 尚代さん
圡方 宏史さん

 第2部は「危機か?好機か?~テレビのいまを語る~」をテーマにゲストの小松純也さん(スチールヘッド代表取締役)、斉加尚代さん(毎日放送報道局ドキュメンタリー報道部ディレクター)、圡方宏史さん(東海テレビ放送報道局ディレクター)を迎え、コーディネーター・丹羽美之さん(東京大学准教授)の進行でトークセッションが行われました。
 「ネットメディアが台頭する一方で、若者のテレビ離れが止まらない。局内では『視聴率を取れ』と言われつつ、『働き方改革』の号令がかけられる。権力の監視や弱者の味方に立つといったメディアの責務は、現在どこまで果たされているのでしょうか」。
 冒頭の丹羽さんの発言を皮切りに、テレビの中も外も知り尽くしたゲスト3名がこれまで制作してきた番組作りの裏側を披露し、若手制作者へ向けて熱いエールを送りました。

なぜメディアを撮るのか

 斉加さんは「映像シリーズ」(1980年開始)を担当。彼女が制作した番組は、メディアそのものを取材対象にしている点が特徴的で、そうした作品群(『映像’15 なぜペンをとるのか~沖縄の新聞記者たち』、『映像’17 沖縄 さまよう木霊~基地反対運動の素顔』、『映像’17 教育と愛国~教科書でいま何が起きているのか』、『映像’18 バッシング~その発信源の背後に何が』)を「メディア四部作」と称し、言論空間に一石を投じてきました。
 これらの作品について「ネット空間では、テレビも標的になることがある。そこに時代性があり、言論空間のあやうさを物語っている。基地反対運動を行う人たちに対する報道や、コピペで作られたブログに起因する弁護士会へのバッシングなど、事実を丹念に深堀りし、“叩く側”“叩かれる側”の両者を浮き彫りにすることを意識して制作してきました」と振り返りました。丹羽さんから「“叩く側”への取材に恐怖心はありませんでしたか」と尋ねられると、「恐怖心より好奇心。自分と立場が異なる人がどういう考えなのか興味がある。その場で感じたことを質問して、相手の反応が想定外だったときにこそ取材の醍醐味があるし、それが番組の核になっていくことは多いです」と話しました。
 圡方さんは、ドキュメンタリー番組を映画化し、収益を生み出すことで有名な東海テレビに勤務。監督を務めた『さよならテレビ』は業界内で注目を浴び、賛否両論を巻き起こしました。この映画でテレビ局の内部にカメラを向けた理由を語りました。
 「東海テレビってありがたいことに、『取り上げるテーマにタブーなし』で制作させてもらえます。テレビの役割には視聴者がまだ見たことがないものを撮影して放送するということがあって、これだけバッシングを受けているテレビそのものはまだ誰も題材にしていないと思ったのが出発点でした。ニュースではスポンサーなどの制約もあるし、1%でも数字が取れるものを報道したいから、目の前のことで手一杯になる。期間もある程度自由にやらせてもらえるドキュメンタリーでは、テレビ局が本当に弱者に寄り添えているのかを撮りたかった。最近のテレビは、公平中立であることに縛られすぎて表現することに委縮してしまっているように感じます。作り手の視点を大切にして、多少わがままに表現してもいいと思います」。

正直に叱られる面白さ

 数多くの人気バラエティー番組を制作してきた小松さんは『チコちゃんに叱られる!』の誕生経緯について「私は毎週アイスクリームを5つ食べるほどアイスが好きなのですが、賞味期限がないことをディレクターから教えられるまで知らなかった。これまでアイスを食べてきて、そんなことも知らずに生きてきたことが面白かった。その面白さを信じ切れるかどうかは自分の直観です。この直観を磨くには、普段自分がどう感じているのかを心に刻み込む作業が必要です。その作業の積み重ねが世の中の気分をとらえ、幅広い世代に響いたのではないでしょうか」と話しました。また、昨今の「ヤラセ問題」については、「フジテレビの管理職時代にコンプライアンスをレクチャーする立場にいましたが、人としてやってはいけないことはやらないのが基本です。番組の中で調査して結論が出なかった場合でも、その結果をそのまま放送する。取れ高次第で放送するかしないかを判別するより、何が起きても笑える仕組みにする。それが視聴者との信頼関係を築く上でも大切です」と語りました。

若い制作者へ

 会場からは、「日々、心がけていることは?」「今、一年目だが台本通りに進める作り方に違和感を覚える」「ジャーナリズムとしての今後のテレビの役割」など質問が出ました。
 心がけについて、圡方さんは「体調管理。毎朝1km泳いでから出勤している」「知ったかぶりをしないこと」と語り、斉加さんは「心のメンテナンスとして犬の散歩」「職場の内外で相談できる人を3人作る」とストレス解消法について伝授しました。
 一年目の制作者に対して、圡方さんは「今は型を学ぶ時期。型を身に着けた後にそこから出ていく勇気を持ってほしい」、小松さんは「伝え方を覚えることは必要。ただ、すべて思い通りに撮れるとは限らない。それを受け入れることから始まっていくのではないでしょうか」と回答しました。
 ネットからの発信も増える中、テレビの役割について斉加さんは「災害報道など地域を越えて、マスに向けて発信する必要性はある」とそれぞれのメディアの強みを活かすことを強調しました。
 最後に丹羽さんが「今、テレビを取り巻く状況はいろんな意味で危機的かもしれないが、制作者の受け止め方次第では、こんなに面白くて、チャレンジングな時代はない。今日はそんなヒントがいっぱいあったように思います」と締めくくりました。

ゲスト プロフィール

小松 純也(こまつ・じゅんや)  スチールヘッド代表取締役 
1967年生まれ。兵庫県出身。京都大学在学中、放送作家として活動。1990年フジテレビジョンに入社し、『ダウンタウンのごっつええ感じ』『笑う犬の生活』『トリビアの泉』『ホンマでっか!?TV』『IPPONグランプリ』などの企画・演出を担当。バラエティ制作センター部長を経て、2015年から共同テレビジョンに出向。Amazonプライム・ビデオ『HITOSHI MATSUMOTO Presents ドキュメンタル』総合演出、プロデューサーとしてNHK『チコちゃんに叱られる!』、TBS『人生最高レストラン』など。2019年4月より現職。


斉加 尚代(さいか・ひさよ) 毎日放送報道局ドキュメンタリー報道部ディレクター 
1987年MBS入社。報道記者などを経て、2015年からドキュメンタリー『映像』担当ディレクター。『映像’15 なぜペンをとるのか~沖縄の新聞記者たち』(2015年9月)で第59回日本ジャーナリスト会議(JCJ)賞、『映像’17 沖縄 さまよう木霊~基地反対運動の素顔』(2017年1月)で平成29年民間放送連盟賞テレビ報道部門優秀賞、第37回「地方の時代」映像祭優秀賞、第72回文化庁芸術祭優秀賞など受賞。『映像’17 教育と愛国~教科書でいま何が起きているのか』(2017年7月)で第55回ギャラクシー賞テレビ部門大賞、第38回「地方の時代」映像祭優秀賞。『映像’18 バッシング~その発信源の背後に何が』で第56回ギャラクシー賞奨励賞、第39回「地方の時代」映像祭優秀賞。個人として「放送ウーマン賞2018」を受賞。著書に『教育と愛国~誰が教室を窒息させるのか』(岩波書店)、共著に『フェイクと憎悪 歪むメディアと民主主義』(大月書店)。


圡方 宏史(ひじかた・こうじ) 東海テレビ放送 報道局ディレクター 
1976年生まれ。上智大学英文学科卒業、98年東海テレビ入社。制作部で情報番組などのディレクターを経験したのち2009年に報道部に異動。14年に公共キャンペーン・スポット「震災から3年~伝えつづける~」でギャラクシー賞CM部門大賞。15年「戦争を、考えつづける。」でACC賞グランプリ(総務大臣賞)を受賞。14年に「ホームレス理事長」でドキュメンタリー映画を初監督。16年に映画「ヤクザと憲法」。20年1月より映画「さよならテレビ」が公開中。


丹羽 美之(にわ・よしゆき) 東京大学准教授
1974年生まれ。専門はメディア研究、ジャーナリズム研究、ポピュラー文化研究。主な著書に「NNNドキュメント・クロニクル:1970-2019」、「記録映画アーカイブ・シリーズ(全3巻)」、「メディアが震えた テレビ・ラジオと東日本大震災」(いずれも東京大学出版会)などがある。放送文化基金賞(テレビエンターテインメント部門)専門委員、文化庁芸術祭賞(テレビドキュメンタリー部門)審査委員、ギャラクシー賞報道活動部門委員長などを務める。