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「制作者セミナー」という新たな挑戦 |
法政大学 助教授 丹羽 美之 |
放送文化基金による新たな挑戦がはじまった。それがこの「若手制作者全国交流セミナー」である。昨年、全国4地区で開催されたミニ番組コンテストの入賞者を一同に集め、短期集中の制作者セミナーを開催するというユニークな試みだ。
社員・職員のための研修であれば、民放連やNHKが自分たちで定期的に行っているものがある。しかし、今回のように、系列や地域、NHKや民放の枠を越えて、「制作者」(私はこれを広い意味での「テレビ・ジャーナリスト」だと考えている)という目線で企画されたものとなると、あまり聞いたことがない。制作者による独自のネットワークづくりを長年にわたって支援してきた放送文化基金ならではの好企画だと思う。
会場となった東京・四ッ谷の主婦会館には、各エリアから選ばれた20人あまりの若手制作者が集まった。私がコーディネーターを担当したゲスト講師によるセミナーでは、これまでドキュメンタリー番組の制作に携わってきた山登義明氏(NHKエンタープライズ)や藤井稔氏(中部日本放送)が、自らの体験を交えて、独自の番組論を語ってくれた。山登氏はそれを「他者性」というキーワードで表現し、藤井氏は「引き算の論理」という言葉で披露した。両氏に共通していたのは、現実と格闘していくなかで自分なりのテレビの方法論を作り上げていくことの重要性だったように思う。
このほかにも、作品合評会や意見交換、石高健次氏(朝日放送)による講演など、盛りだくさんの内容で、参加者は朝から晩まで缶詰めになり、それぞれの悩みや思いを率直に語り合った。地域放送局の若手制作者たちが抱える危機感も浮き彫りになった。何よりもこうしたことを現役の制作者同士が議論する場が、いまのテレビには少なすぎるように思う。今回の試みを、決して1回だけで終わらせることなく、制作者自身による横断的な学びの場へと継続的に発展させていくことができればすばらしい。そのために何ができるか、これからも私なりに考え、支援していきたい。 |
<略 歴>
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丹羽 美之 (法政大学 助教授) |
NHKディレクターを経て、大阪大学大学院人間科学研究科に学ぶ。2003年より法政大学に勤務。専門はメディア文化研究(テレビ論、映像論)。 |
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