
|


ちょっと『引き算』でもしてみませんか? |
中部日本放送 報道部 プロデューサー 藤井
稔 |
(1)テレビ制作の「足し算」と「引き算」
現在のテレビの「視聴率最優先主義」を、「テレビ番組制作」の世界に持ち込むと、『足し算』の論理になります。具体的には、字幕スーパー、BGM、ナレーション、アップ映像などの多用です。
この論理に慣れると、無意識でパターンでそれをするようになります。『足し算』の論理を否定するのではありませんが、無意識にパターンで作った番組は、やはり「醜悪」だと思います。そして、そうなる危機が、今現在、私たち制作者を取り巻く環境の中にある。で、この「危機」を防ぐために、私は『引き算』の論理で「テレビ番組」を作ろうと思っています。テレビを構成する要素の中で、不要と判断したものを削除していって「TV番組」を作るということです。
これを実際にやってみると、「普段、自分が『足し算』の論理で、何を足そうとしているかの本質」がよく判る。いわば「自分の足元確認」が出来るわけです。
(2)ローカルで出来ること、出来ないこと
ローカル局には、3つのジャンルの「仕事」があると考えています。【1】ネット局と互角に戦うために、「ネットに負けない、勝とうとする」番組、【2】ネット局のソフトの質を目指して、「ネットを目標に頑張る」番組、【3】ネット局とは関係ない、むしろ「ローカルにしか作れない」番組。
【1】も【2】も、当然「足し算の論理」が根幹となってきます。つまり、『視聴率最優先主義』からは、今やどこの地方局であろうと逃げられないわけです。
しかし、こんな時代だからこそ、【3】の「ネット局とは関係ない、いやネット局には作れないローカルにしか作れないソフト」の可能性・価値が、今後重要になってくると、私は信じています。
(3)結局、TV表現の可能性を信じるしかない!
以前「ナレーション一切なし、BGM一切なし、スーパー一切なし、登場人物のアップ映像一切なし」という番組も作ったこともあります。想像以上に「テレビ番組の表現」の可能性は大きいはずです。で、今日も明日も「決して、他の人が作ったことがないテレビ番組」の可能性を追求していきたいと思っています。 |
<略 歴>
|
|
藤井
稔 (中部日本放送 報道部 プロデューサー) |
1989年中部日本放送に入社。制作部を経て05年から報道部勤務。『えんがわ』、『鉄くずキラリ』等を制作、『山小屋カレー』(04年)では、放送文化基金賞優秀賞、日本民間放送連盟優秀賞、日本放送文化大賞準グランプリ、ABU(アジア太平洋放送連合)賞を受賞。 |
|