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「こだわり」を持たないという「こだわり」 |
毎日放送制作局 専任部長 藪内 広之 |
私は関西のJNN系列である毎日放送で主にドラマの制作を担当してきました。
今回、放送文化基金のセミナーに出席し、「若手」制作者の方にメッセージをというお話だったのですが、正直なところ困りました。
今までこれといったこだわりもなく、その時の事情に汲々と番組を作ってきただけで、自信をもってこれが私のポリシーです、みたいなものは実はないのです。
あえて言えば、「頑固なこだわりはなるべく持ってないふりをしよう」というのがひそかなこだわりかもしれません。
私たちの仕事は、番組それぞれ目的が違っても、それに向かって予算や人員、時間などの限られた条件の中でどうやって近づけるかだと思います。理想的な環境なんてお目にかかったことがないので、いつもない知恵を絞ることになります。なので、凝り固まった「常識」や「こだわり」はかえって邪魔だと思うのです。
ただでさえ現場に入ったばかりの時は先輩に「この仕事は『こだわり』を持てよ」なんて言われがちです。私はそうでした。でも、ちゃんとした仕事もしないうちにこだわりを持つなんて、危ないかもと思いました。この先もずっとそうだと思います。
番組内容はバリエーションがあるように見えるけど、作り方のディテールはわりとワンパターンです。いちいち考えなくていいから、たしかに楽です。でも、よく考えたら、法律で決まってるわけでもないし、だれが決めたかというと自分たちでしかない。
だから一つだけお伝えするとすれば、みんなでいろんなつくり方を考えて、楽しんでいきましょう。ということです。いいのを思いついたら、またぜひ教えてください。
よろしくお願いします。 |
<略 歴>
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藪内 広之 (毎日放送制作局 専任部長) |
1986年毎日放送入社。東京支社ラジオ営業部、テレビ制作部を経て現職。作品に『海に帰る日』(99年/放送文化基金賞優秀賞、民放連賞優秀賞)、『ごきげんいかが?テディベア』(01年/放送文化基金賞本賞、民放連賞最優秀賞、芸術祭優秀賞ほか国内外の賞を多数受賞)、『悲しみを勇気にかえて』(05年/民放連賞優秀賞)、『メッセージ』(06年/民放連賞優秀賞)、『パンダが町にやってくる』(08年)など。 |
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