公益財団法人 放送文化基金 トップページ 地図 リンク お問い合わせ
English Site
放送文化基金概要 助成 表彰 制作者フォーラム 放送文化基金報
トップページ助成研究報告会>22年度 研究報告会 
リニューアルサイトへ
助成メニュー
申込方法
助成対象一覧
研究報告会
  ◇バックナンバー一覧

助成Webシステム
(別ウィンドウで開きます)
助成の申請、各種書類の提出はこちらから。

助成データベース
昭和49年(1974年)度から現在まで当基金が実施した助成の対象全てを検索できます。

検索はこちら
助成・援助

贈呈式・研究報告会
⇒最新の研究報告会情報へ
 放送文化基金の平成23年度の助成対象が決まり3月2日、東京・平河町の海運クラブで助成贈呈式が開催されました。
 贈呈式は前年度と同様、第1部研究報告会、第2部助成目録贈呈、そして懇親会の3部構成で行なわれました。

第1部 研究報告会「東日本大震災とメディア」

 第1部の研究報告会では、昨年3月11日に発生した東日本大震災を受けて、基金が委託研究として助成した災害放送に関する2件のプロジェクトから報告がありました。
 まず、日本災害情報学会デジタル放送研究会の代表 藤吉洋一郎さんが「検証“東日本大震災”命を救う情報をどう伝えたか〜地震発生から1時間〜」を報告。東日本大震災が発生して1時間の初動期において、人々の命を救うために避難を促す情報はどのように流れたのか、放送その他のメディアは、それをどのように伝えたのか、その情報がいかに機能したのかなどの調査結果が報告されました。
 次に、「東日本大震災とメディア」研究会の代表 丹羽美之さんと市村元さんが、震災後に次々と立ち上がった地域・期間限定のラジオ局「臨時災害放送局」を調査し、地域の生活情報、防災情報などをどのように伝えたのか、現状と課題を報告しました。
 地震直後の生死を分ける情報、そしてその後に必要となる地域限定の生活情報や支援情報というそれぞれに重要な二つの情報を通して、大災害とメディアの役割について考える機会になった研究報告でした。
委託研究@

検証"東日本大震災"命を救う情報をどう伝えたか 〜地震発生から1時間〜

日本災害情報学会 デジタル放送研究会
代表
 藤吉洋一郎 氏


委託研究A

メディアは東日本大震災をどう伝えたか〜臨時災害放送局の調査から〜

東日本大震災メディア研究会
代表
 丹羽美之 氏

丹羽美之 氏

市村 氏

研究報告会に参加して

●人命と暮らしを守るために

 鈴木嘉一(放送評論家)

 新聞は事件や事故、災害の結果を報道し、テレビは「今、何が起きているのか」と出来事をリアルタイムで伝える。これに対し、ラジオは災害などに遭遇した当事者に向けて、「今すぐ、どんな行動を取ればいいか」と生死を分ける重要な情報を届け、1人でも多くの命を救うことができる。前読売新聞編集委員として藤吉洋一郎・大妻女子大教授の報告を聞き、こうしたメディアの特性と役割の違いを改めて実感した。「一刻も早くラジオの単独放送に戻るべきだった」という検証結果や、「避難の呼びかけはもっと切迫した表現が必要」といった提言は十分うなずける。「人の命と暮らしを守るのは、報道に携わる者の使命」という原点を再確認させられた。

●防災報道の重要性を再確認

 村木正顕(ニッポン放送報道部)

 被災地が数百キロに及ぶ“広域災害”となった東日本大震災では、被害の全容把握にも長時間を要したが、地震発生直後の1時間は、まさに津波による大被害が拡大する最中であり、人が生死に直面する最も重要な時間であった。今回の報告会は、その1時間の中での救命放送という非常に大きなテーマであり、個人的にも、放送人として改めて自らを問い直す機会となった。被害状況、避難の呼びかけ、津波警報・余震情報…、伝えるべき内容があまりにも多く、大きい中、報告された事例に“力の限界”を思うとともに、一方では、放送がリアルタイムで動きを伝え得る極めて重要なメディアであることも再確認し、引き続き行われた「臨時災害放送局」の被災者向けの各自治体の放送事例と併せて、防災放送の重要性を改めて認識した次第である。




第2部 贈呈

 第2部の助成目録の贈呈では、はじめに塩野理事長が、「今、放送と通信の融合、ソーシャルメディアの普及で放送を取り巻く環境が急激に変化、発展している。こうした中だからこそ、放送に関連した技術分野の研究開発ならびに人文社会・文化分野の調査研究、事業への期待は益々高まっています。助成を受ける皆さんが立派な成果をあげることを願っています」と挨拶。引き続き、「技術開発」の羽鳥光俊審査委員長と「人文社会・文化」の白石さや審査委員から今回の審査概況について夫々報告がありました。
 平成23年度は、技術開発38件、人文社会・文化82件の合わせて120件の申請があり、審査の結果、技術開発15件、人文社会・文化36件の合わせて51件、総額5,500万円が採択され、助成対象に選ばれた1人1人に塩野理事長から目録が贈呈されました。そして、「技術開発」 部門から愛媛大学大学院理工学研究科教授の藤田欣裕さん、「人文社会・文化」部門から災害と情報研究会代表の廣井悠さんのお二人から代表してご挨拶がありました。
 今回の助成贈呈式の出席者は、第1部、第2部通して120人にのぼりました。

▼今年度採択された研究・事業の特徴

技術開発

 申請件数38件の中から助成対象15件、2200万円を採択しました。採択率は、39%。 デジタル化、テレビ画面の高精細や3D時代に伴う伝送・受信方式の開発、インターネットと放送に関連した研究が多く採択されました。
 デバイス・材料開発の基礎的分野はこれまでと同様に申請そのものが少なくなってきています。
 また将来の放送の姿に深くかかわるネット映像やツィッターなどソーシャルメディアを対象とした研究・開発がチャレンジングな試みとして採択されました。
 このほか、「放送受信機と情報端末の連携に関する研究」など、高齢者や情報弱者への“人にやさしい放送”の技術開発3件も採択されました。

人文社会・文化

 申請件数82件の中から助成対象36件、3300万円を採択しました。採択率は、44%。
 昨年の東日本大震災に関連した申請が15件あり、その中から「メディアは東日本大震災をどう伝えたか」、「帰宅困難者対策における情報提供・報道のあり方に関する研究」などの調査研究7件、「復興に向けて 遠野の里から子ども夢宣言〜昔話と子守唄〜」など事業2件が採択されました。
 このほか、日本の放送界に大きな足跡を残して亡くなった村木良彦さん(番組制作プロダクション・テレビマンユニオンの創立メンバー)と木村栄文さん(元RKB毎日放送ディレクター)、それぞれに関する資料をアーカイブ化して公開する2つの事業も採択されました。
 さらに、アジアの放送文化の向上につながるプロジェクトとして、「バングラデシュでの女性のためのコミュニティメディア研修」や福岡市で今年7月に開催される「アジアドラマカンファレンス」など7件も採択されました。